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不適合をどう指摘するか

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不適合をどう指摘するか

ペリージョンソンレジストラーズのQMS技術部長及び審査員のJoseph Krolikowski氏が、なぜ不適合を記述することが審査/監査プロセスにおいて重要であるかを説明します。

quality.org に掲載の英文記事はこちら

普通、審査/監査の際に、不適合はあまり喜ばれるものであるとは言えません。しかしながら、不適合報告書が適切に書かかれていなければ、すべての関係者に数々の問題を引き起こす可能性があります。

認証機関が作成する不適合報告書の内容については『ISO 17021-1:2015 適合性評価-マネジメントシステムの審査及び認証を行う機関に対する要求事項』の箇条9.4.5.3に規定されています。そこには以下のように記載されています:

「不適合の所見は、特定の要求事項に対して記録しなければならない。また、不適合の根拠となった客観的証拠を詳細に特定する、不適合の明確な記述を含めなければならない。」

『ISO 19011:2018 – マネジメントシステム監査のための指針』には同様の記述がA.18.3で繰り返され、次のような事項を不適合報告書に含めるよう推奨しています

「監査基準の記述又は監査基準への参照、監査証拠、不適合の明示」

これらの要求事項が言っていることは根本的にどちらも同じです。つまり、不適合の記述には3つの部分を含めるようにするということです。

  1. 不適合の記述 Statement of nonconformity
  2. 不適合の証拠 Evidence of nonconformity
  3. 不適合を立証する要求事項 Requirement(s) substantiating the nonconformity

要求事項は割と簡単に理解できますが、「記述 statement」と「証拠 evidence」の区別はもっと複雑です。

'修正と是正処置はまったく違う概念です'

『ISO 9001:1987―品質システム』や『ISO 14001:1996 – 環境マネジメントシステム』などの規格認証の初期のころには、ほとんどの不適合が証拠の記述の形で書かれました。つまり、単に、審査/監査の際に、審査員/監査員が何を見つけたかということが書かれているに過ぎなかったということです。この時代に書かれた不適合の例は、例えばこんなものです。「プレスの工程で校正されていないゲージが2つ見つかった。そのゲージは DG-014 とDM-006である」。

このような記述を読んだら、それの何が悪いのだろうと思うかもしれません。審査員/監査員は、関連の情報も多少提供しています (影響を受ける部門、ゲージの番号など)。しかし、証拠で示す不適合の弱点は、実は被審査/被監査者側から返ってくる典型的な回答にあります。

ご自分が、この不適合を受け取った部門長だと想像してみてください。このような内容を受け取った場合、ごく自然な反応はどのようなものでしょう。おそらく、最初の返答は、審査員/監査員が示した2つのゲージをすぐに校正しますというものでしょう。これが完了すれば、それ以上何かしようというモチベーションが持てるでしょうか。審査員/監査員が示したのは校正されていない2つのゲージであり、あなたはもうこの2つのゲージを校正したのです。これで対応完了、そうでしょう?

マネジメントシステムを経験されている方であれば、これでは何が足りないかをすでにご存じでしょう。2つのゲージの校正に関して、被審査側/被監査側は修正 (correction) をしました。しかし、是正処置 (corrective action) はしていません。ISO 17021-1:2015の箇条 9.4.10 (ISO 19011:2018では、箇条6.7に同様の記述があります) では、修正と是正処置のどちらも要求しています。

修正と是正処置はまったく違う概念です。ISO 9000:2015では

修正を「検出された不適合を除去するための処置 action to eliminate a detected nonconformity」

是正処置を「不適合の原因を除去し、再発を防止するための処置 action to eliminate the cause of a nonconformity and to prevent recurrence」

と定義しています。上で示したシナリオであれば、2つのゲージの校正はまさに修正です。しかし、同様の状況の再発の防止にはつながりませんから、是正処置とみなすことはできません。

この問題こそ、業界が不適合の証拠 (evidence of nonconformity) だけでなく、不適合の記述 (statement of nonconformity) を要求することになったきっかけです。

行動を促す

不適合の記述は、不適合を起こしてしまったシステム上の弱点が1つ (あるいは潜在的にいくつか) あるということを示すものです。適切に記述されていれば、不適合の記述は組織にとって、不適合が示されたプロセスに関連して組織がもっているすべての関連する管理策を今一度検討するよう組織を駆り立てるものとなるはずです。組織は手順、作業指示書、トレーニング方法、標識、監視管理、監査方法、さらに、示された問題を体系的に解決するために役立つマネジメントシステムのその他の部分を検討する必要があります。

私の経験では、よく書かれた不適合の記述には、「プロセス」、「管理 (策)」、「システム」、「プロトコル」のうち、少なくともどれか1つの言葉が含まれています。おそらくほかの言葉でも言いたいことを伝えることもできるでしょう。先ほどのシナリオに戻り、もっと効果的な不適合の記述を作成してみましょう。「校正/検証された状態であることを確認するために確立されたプロセスが現在、有効ではありません。プレスの部分で見つかった2つのゲージは現時点では校正されていないことが判明しました。その2つのゲージは DG-014とDM-006です。」

この2つ目の文書を渡すという簡単な行為で、被審査側/被監査側は (修正をすることで) 応急で問題に対応するだけでなく、(是正処置により) システム上の弱点にも対応しなければならなくなります。

不適合の記述を提供するためには、不適合の証拠の部分に関連するすべての情報を入れることも重要です。見つけたことについて、だれが、何を、いつ、そしてどのようにという情報を網羅することも必須です。被審査側/ 被監査側が不適合を明確に理解して対応できるように、品目番号、部門名、シフト情報、およびその他の関連する情報を提供する必要もあります。

不適合の詳細な情報を書面で提供しなければ、審査/監査の有効性は薄れ、マネジメントシステムのシステム上の弱点が解決しないままになる可能性があります。慎重な審査員/監査員は、常に関連の詳細情報を取得し、被審査側/被監査側に伝えるようにするでしょう。

※IRCAの各詳細は下記よりご確認頂けます。

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