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2018年10月開催 CPD月次会レポート (ISO 19011による監査員の力量に関する考察)

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2018年10月開催 CPD月次会レポート (ISO 19011による監査員の力量に関する考察)

10月度の月次会は、今年7月に発行されたISO19011:2018を参照し、マネジメントシステム監査員が監査目的を達成するために必要な力量の認識を深め、力量開発の機会と効果的な実践方法を探索することを目的として10/26に開催されました。

今回のセッションは2部構成となり、前半の部では今月初旬にCQI|IRCAから発行された、ISO19011:2018テクニカルノート(英語版)にある情報を元に、マネジメントシステム監査に関わる要員の責務と役割及び必要な力量について図解資料を用いて規格に即した要点説明が行われた後、参加者同士で重要性と習得難度を考慮しながら力量の洗い出しを行うワークが実施されました。 更に後半の部では、昨今導入事例も増えつつある“タレントマネジメントシステム”の概念と、体系的な監査員育成の仕組みに関するアイデアを参加者全員で共有し、中長期的な視点から本質的且つ計画的な力量開発の実践方法についてチームディスカッションが行われました。

ISO 19011:2018解説~押さえるべき要点~

講義冒頭、ISO19011:2018が導く監査員の理想の姿について、「Business Focused Auditor|ビジネスを重視する監査員」の概念が語られた。

CQI|IRCAが標榜するクオリティプロフェッショナルと同様に、監査要員はクオリティの主要な活動の一つとなる監査活動を通じて事業に貢献することをミッションとしていることを確認した後、組織の状況(Context)を適切に把握分析し、リスクに基づく視点を用いて重要な課題を特定し、組織の整合性を保ちながら有益な改善機会を特定し伝達していく一連の役割とそれを実現させる力量のフレームワークが追求すべき監査員の姿として共有された。

また各監査要員の役割と責任について、一般のプロジェクト組織と対比をさせながら、それぞれの立場と関係性を整理し、特に個別監査を包括する監査プログラムの管理者の役割の定義と事業貢献に関連したプログラム目的の達成に向けたその役割の重要性を確認。

監査要員PJ組織比較図.jpg

更に、監査原則関して新たに加えられた7つ目の原則“リスクに基づくアプローチ”について言及し、リスクを考慮することがマネジメントシステムの世界で当たり前となり、組織及びプロセスのリスク・機会と同様に”監査活動自体によって生じるリスク”を考慮する必要があること、またリスクが大きなプロセスに監査を集中させる考え方があることが共有された。

監査プログラムのマネジメントに関わる要点

2018版よりPDCAを適用して見直され拡充された監査プログラムのプロセスの全体フローを捉えた上で、監査依頼者によって確立される監査プログラムの目的(5.2)について具体例を挙げて思考を実施。
目的達成に責任を有する監査プログラムマネージャーにとって、監査プログラムの目的は個々の監査目的に確実に展開し、目的の達成を常に監視するために重要な情報であり、監査依頼者の組織状況や戦略との整合性を踏まえて根本的な理解をする必要があると話す。

また監査プログラムにおけるリスクと機会についても思考し、多くの着眼点からリスクと機会が生じ得ることに気づきを得た。

また箇条5.4を解釈しながら、監査プログラムマネージャーにおける役割を網羅的に洗い出し、必要とされる力量を整理し、リスクマネジメント、プロセスマネジメント、プロジェクトマネジメントなど新たな管理スキルや、監査依頼者、監査チームリーダーを始めとした監査に関連するステークホルダーとのコミュニケーション能力、監査メンバーの力量を把握し適切なアサインを行うためのタレントマネジメントに関わる力量の重要性を確認した。
監査プログラム内の整合性を保ち、状況(Context)と影響の波及を考慮し、適切な監査範囲を決定(5.4.3)し、監査基準、監査方法、監査要員を決定し目的達成に向けた進捗を監視し記録していくためには非常に広範な視野と知識、管理・判断・交渉能力など総合的な力量が求められる役割となることが明示された。

監査の計画と実行に関わる要点

監査の実行については、特に監査計画策定の活動(6.3.2)に関わる内容が拡充され、特に計画策定のプロセスを対象として、リスクに基づくアプローチ(6.3.2.1)を採用する必要があることを強調。 監査チームの存在が被監査組織にリスクを発生させる可能性があることを認識し、組織の安全衛生、要員あるいはインフラに悪影響を与える要素を特定し、更に柔軟に計画変更に対応できることが望ましく、事前に行う文書化した情報のレビュー(6.3.1)の目的について、被監査組織の業務の理解と監査作業文書の準備のために情報を収集し、更に被監査組織における潜在的な懸念分野を抽出することが明示されていることを確認。

監査計画の策定活動.jpg

更に監査活動の実施(6.4)における変更点を確認した上で、6.4.7(図2)に図示された情報の収集及び検証の典型的プロセスに即して、付属書と関連付けながら「情報源の種類」「統計的手法を含むサンプリングの方法(A6)」「監査証拠の検証(A5)」に関わる技術的な情報の確認と監査所見に含まれるべき事項として「根拠となる証拠」「改善の機会」「ベストプラクティス」があることを示し、監査結論で扱うべき事項や最終会議で従来以上に多くの参加者を集めることが推奨されていることなどを説明。

●監査の実践に必要なスキルの例示

  1. 情報検証能力 (客観的証拠の実証十分性の評価判断)
  2. コミュニケーション能力 (意図した情報収集の実現能力)
  3. 統計知識 (統計的サンプリング手法の特性に対する知識)
  4. ロジカルシンキング (サンプリング方法選定までの思考プロセス)

 

監査員の力量及び評価に関わる要点

箇条7については、今回のワークショップの説明と連動して以下の工程が説明された。
監査プログラムの信頼性は監査プロセスに関与する人々の力量に大きく依存しており、2018年版では特に「定期的な」評価の仕組み創りが要求されている。

力量評価の仕組みづくりにおける最初のステップは、「監査員の力量の決定」であり、監査目的の達成に向けて重要度及び難易度を考慮しながら、できるだけ幅広く要求される力量を洗い出することが望ましいことが伝えられた。
規格ではまず最初に、力量の要素カテゴリについて、個人の行動(7.2.2)と知識及び技能分解(7.2.3)に大きく分類しており、箇条4の監査の原則に従い監査員に相応しい特性を示すことを前提としており、更に知識及び技能については、全ての監査員に共通して要求される知識及び技能(7.2.3.2)とマネジメントシステムの分野及び業種に固有の能力(7.2.3.3)に分類されています。

また監査チームリーダーには監査員の力量に加え、主にマネジメント及びコミュニケーションに関わるより高度な能力(7.2.3.4)が求められており、監査プログラムマネージャーの力量(5.4.2)も加え、キャリアパスに基づくに長期的な段階的力量開発モデルを検討することが望ましいと話す。

●監査チームリーダーに必要な能力の一例

  1. 監査チームへのリーダーシップ
  2. ファシリテーション能力
  3. 監査計画能力
  4. 組織戦略の理解力
  5. コミュニケーション能力(対トップマネジメント、監査依頼人、被監査者)
  6. チームマネジメント
  7. チームビルディング(協力的業務関係構築)
  8. 問題解決能力
  9. 意思決定能力(監査結論の導出)

タレントマネジメントの概念について

初回のワークショップを終えた後、タレントマネジメントの概念が事務局より共有された。
組織戦略に即した人材育成計画(Plan)の下、人材を育成・配置(Do)し、定期的な力量評価(Check)を通じて、現状課題を特定し計画の修正(Action)を行うPDCAモデルがマネジメントシステム同様に適用されており、組織戦略目標の達成を確実にさせることが目的となっていると話し、多くの参加者が特に監査プログラムマネージャーの責任を果たすために有用なシステムになる可能性を確認。
TMS概念.jpg

またタレントマネジメント(TM)の導入成功に不可欠な以下のような要素が監査を主導する組織に備わっている可能性が高いことも話された。 

  1. TMを遂行する組織は、経営陣との間に戦略を実行するパートナー関係が構築されていること。
  2. TMの目的を果たすために、遂行部門が果たすべき役割が明確になっていること。
  3. 「やりがい」「社会的意義」「成長意欲」など、内面的なモチベーションが重要視される「働き方」への意識の存在。

 更にOEA組織で導入されている監査要員を対象としたキャリア形成の促進モデルの事例が紹介され、効果的な力量開発の仕組み創りに対する取り組みの有用性を強調した。

チーム別ワークショップ

ワークショップは講義資料、及びISO19011規格書を参照し、主に監査プログラムマネージャーを対象として、力量が求められる役割、それに必要な力量の細目、及び必要となる知識・技能の洗い出しを前後半2回のグループワークが実施された。

限られた時間の中で、各チームとも監査プログラムマネージャーを対象として、主にISO19011:2018 規格5条に記載される役割を参照し、参加者ごとに監査の実情を踏まえながら、監査の有効性に対するインパクトや実施の難易度を念頭に重要性の高い役割について議論を実施。
更にチームごとに選出した主要な役割の達成に向けて必要な力量及び、技能と知識の洗い出しを行い、監査要員の力量開発についてのディスカッションが展開された。 

>>各チームのワークショップにおけるアウトプット(まとめ) 

  

【監査プログラムマネージャーにとって重要な役割に関する考察】

各チームから選出された監査プログラムマネージャーにおける重要な役割は以下のような結果となった。
監査目的の設定(確立)や監査領域の決定など、監査プログラムの基盤となる要素を決定又は設定する役割に焦点が当てられ、また被監査者を含む監査の利害関係者とのコミュニケーションの確立や監査プログラムのリスク・機会の決定、メンバーの選定など策定から実行に関わる領域の役割を完遂することが上げられた。

10月ワークショップ成果物(役割).jpg 

【力量に必要な技能と知識に関する考察】

監査プログラムマネージャーに求められる重要な役割を達成させるために必要な技能・知識については、いずれのチームからも多様なマネジメントスキルコミュニケーションスキルリーダーシップ経営レベルの認識と視座被監査組織の理解監査の知識とスキルに関わる技能や知識が挙げられた。

特に「トップマネジメントを始めとする利害関係者とのコミュニケーション(多様な視点・調整・合意形成)の能力」については全チームが挙げており、プログラムの目的達成において多様な利害関係者の支援と理解を得ることの重要性を強く認識していることが窺える。

更に「経営方針や事業戦略、又組織の状況に関する把握力」「監査要員の力量を把握する能力」などが多く挙げられ、経営の視座でプログラムを運営する立場にある事や、力量ある監査チームメンバーの選択の責任にも焦点が当てられた。

10月ワークショップ成果物(スキル).jpg

*・・・は全チーム。・・・ha3チーム以上が挙げた事項、・・・は2チームが挙げた箇条を表す。


(あとがき)
事後のアンケートにおいて、ISO19011:2018は、組織の状況に応じて監査要員のキャリアパスや能力等級、又はそれに必要な力量の細目を定義する上で役に立つ規格であるという認識が大半をしめました。
今回の月次会通じて、監査プログラムマネージャーには、「要員の力量管理」「計画的な監査員の力量開発」「戦略的な要員配置」を実現し、監査の有効性を向上させるためのリードが期待されていることを多くの参加者が再認識する機会となりました。

 

CQI レポート The Future of Work 未来の働き方
IRCAテクニカルレポート:ISO22000:2018