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新シリーズ パート6: 客観的評価

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新シリーズ パート6: 客観的評価

新シリーズ パート6: 客観的評価

本シリーズの最終回では、組織が客観的評価の文化を持っているかどうか、監査員/審査員はどのように判断したらよいかについてRichard Greenが説明します。

最初に、今回のシリーズを振り返ってみましょう。まず、CQI の力量のフレームワークにおける問い、「マネジメントの意図は明確化されているか?」、「マネジメントの意図は目的に合致しているか?」に答える際にマネジメントシステム監査員/審査員が果たす役割について考えてきました。また、マネジメントシステムが有効に運用され、意図する成果を提供しているという保証を組織のステークホルダーに対して与えることにおいて監査員/審査員が果たす貢献についても検討してきました。

直近の回では、改善に焦点を当て、組織が継続的改善にコミットし、マネジメントの意図を再定義しているかを監査員/審査員はどのように判断したらよいかを見てきました。今回、シリーズの最終回では、CQI の力量のフレームワークを支える最後の質問「客観的評価の文化はあるか?」を監査員/審査員の皆さんに提示します。

客観的評価

まず、客観的評価の文化をもつ組織が示すであろう特徴について考えていきましょう。組織がステークホルダーのニーズを理解するために適切な方法を用いていること、また、市場、顧客要求事項や組織に影響を与えるその他の要素の変化を含む組織の状況に対するすべての変化を特定するために適切な方法を用いていることを実証することが当然のこととして期待されるでしょう。

上記で特定されたステークホルダーのニーズに関する洞察は、組織全体での業務パフォーマンスや製品/サービスの品質に対する適切な尺度 (例えばKPI) を開発するために使われます。これらの取組みの結果の分析と評価は事実に基づく意思決定を伝え、変更の優先順位、必要な変更の性質と大きさを確定するのに役立つとともに、組織の人々、プロセス、ツール、あるいは技術及び/又はインフラの開発を通じ、どのようにして必要な変更を達成するのが最もよいかを決めるのに利用することができます。

附属書SL に基づくマネジメントシステムの箇条9.1、9.2及び9.3はすべてデミングのPDCA サイクルのCheck の要素にあたる所見の収集と関連しているということを、私たちは監査員として認識しています。この蓄積されたCheckの所見は、PDCAサイクルのAct の部分である箇条10「改善」へのインプットとなります。

箇条9.1は、組織がマネジメントシステムの意図する成果が確実に達成され、マネジメントシステム全体としてのパフォーマンスと有効性を確実に特定できるようにするために何を監視し、測定しなければならないかを決定することを要求しています。さらに組織は監視、測定、分析及び評価の方法と時期を決める必要があります。

箇条9.2では、組織に対し、計画された監査を実施することによってマネジメントシステムの運用に関する所見を集めることを要求しています。監査結果は経営層に報告しなければならず、必要な修正と是正処置はすべて間を置かず実施されねばなりません。

箇条9.3はシステム全体にわたり集められたパフォーマンス情報に基づき、組織のトップマネジメントがマネジメントシステムの全体像を考慮するよう求めています。

客観的評価に関するこれら3つの箇条全部について、組織は文書化した情報を保持するよう求められていますから、監査員にとって客観的評価がおこなわれているかどうかを判断するのは比較的簡単でしょう。判断が難しいのは、このような「文化」があるかという部分です。

文化の共通の定義が単に「ここで物事が進められるやり方」ということである限り、組織が箇条9の要求事項を満たしている証拠を提示することができれば、「文化があるか」という問いへの答えも「はい」ということになります。しかし、客観的評価の文化があるかを本当に評価するためには、組織が自ら選択してその行動をとっているのかどうかを知る必要があります。箇条9に従うのは、そうしなければならないからですか、あるいはそうしたいからですかという問いを投げかけたとき、答えが後者の場合のみ、客観的評価の文化は存在しているのだと私は思います。

監査: 適合性だけが問題なのではありません

組織がステークホルダーの要求事項を満たしていることを保証することはこれからもずっと監査の中心的な役割であり続けますが、この連載では監査員は属する組織に対して単に適合性を確認するだけ以上の寄与ができる (するべき) ということをお伝えしようとしてきました。

第一者監査員、二者監査員、あるいは第三者審査員のいずれであったとしても、健全なガバナンスを確実にし、改善を推進するために重要な役割を果たさなければなりません。

これら健全なガバナンスや改善の機能が現在どのように実施されているかを判断し、懸念事項や不具合を特定するためには、監査員/審査員は絶妙な立場にいます。私たちは、リスク、課題あるいは機会が明らかになったときには、いつでも「不屈の精神をもって行動する」 (ISO 19011:2011 箇条 7.2.2「個人の行動」) 用意がなければなりません。ただし、これはいつでも簡単に行くわけではありません。抵抗が少ない道を選ぶのではなく、何か正しいことをするには勇気と信念が必要です。しかし、「リーダーシップ」がCQI の力量のフレームワークの中心に位置しているということは、マネジメントシステム監査員/審査員を含むすべてのクオリティプロフェッショナルは、自分たちが本当に付加価値を与えるために必要な変化を与えることができなければならないという強いメッセージを表しています。

Richard Green、 CQP (Chartered Quality Professional) はISO 17021-3、ISO 19011及びISO 45001 に関する委員会にCQI を代表して参加しています。

監査員/審査員のための力量のフレームワーク

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