新シリーズ パート1: ガバナンスを理解する
新シリーズ パート1: ガバナンスを理解する
監査員/審査員のための力量のフレームワークの新シリーズ
(6回シリーズ) のパート1では、Richard Green が、
監査員/審査員はなぜトップマネジメントを監査/審査しなければ
ならないのか、そして「マネジメントの意図」の問題にどのように
取り組むかについて解説します。
クオリティプロフェッショナルは、いつも、自分たちの役割は何かを説明するのに苦労しています。エンジニアは「エンジニアリングをし」、教師は「教え」、そしてプロジェクトマネジャーは「プロジェクトを管理します」が、私たちは「品質します」は意味をなし
ません。
10年ほど前に、大企業の品質問題が相次ぎました。ステークホルダーはクオリティプロフェッショナルの役割を理解しようとするようになりました。世間は、再三再四、品質を確かなものにする役目を負っている人々が、惨事を防ぐことに失敗するのを見てきました。クオリティプロフェッショナルへの信頼を回復するためには、何か抜本的なことをしなければならないのは明白です。
CQI は2014年に力量のフレームワークを開発しました。このフレームワークの核心は、優れたクオリティプロフェッショナルになるには、自分の品質関連の役割は何かに関係なく、5つの主要な領域の力量が要求されるという信念です。フレームワークでは、それぞれのクオリティプロフェッショナルは組織のガバナンス (Governance)、保証 (Assurance)、改善 (Improvement)、リーダーシップ (Leadership) 及び状況 (Context) に関する知識と技能をもつことが要求されています。そして、マネジメントシステム監査員/審査員もクオリティプロフェッショナルの一員です。
力量のフレームワークは5つの領域から成り立つとともに、6つの質問を投げかけています:
ガバナンスに関わる2つの質問
- マネジメントの意図は明確化されているか?
- マネジメントの意図は目的に合致しているか?
保証に関わる2つの質問
- マネジメントの意図は効果的に実行されているか?
- それは望まれる結果を生み出しているか?
改善に関わる2つの質問
- 継続的改善及びマネジメントの意図の再定義へのコミットメントはあるか?
- 有効な評価の文化はあるか?
これらの質問を現場レベル、組織レベルで問いかけることにより、監査員/審査員を含むクオリティプロフェッショナルは、ステークホルダーのニーズを満たし、組織に対する世間の評判を守りながら、リスクを特定し、報告し、対応することができるのです。
このシリーズでは、これら6つの質問をマネジメントシステム監査員/審査員の視点で検証していきます。それでは、まずガバナンスから見ていきましょう。
なぜ、マネジメントシステム監査員/審査員はガバナンスを理解する必要があるのか?
ガバナンスは、組織の核心となるものです。ガバナンスは組織のよって立つところ、すなわち、組織の目的と信念、組織の文化の基盤を形作るものです。
力量のフレームワークでは、クオリティプロフェッショナルは「マネジメントの意図は明確化されているか?」という問いに答えることを要求しています。この問いは簡単な言葉に言い直すと、「組織のマネジメントは、自分たちの組織が何を達成したいのかを明確にしているか?」ということになります。
一者監査、二者監査、あるいは第三者審査のいずれかにかかわらず、監査員/審査員として、私たちはこの問いに答えるためにいるのです。
私たちは、方針宣言、戦略、計画、目標や個人目標の形で客観的証拠を探すことができます。この証拠は、組織の上級管理層レベルの意図を現場レベルまで跡付け、私たちに「確信」を与えてくれます。
私たちは、組織のステークホルダーの期待を確実に理解し、その期待にどのように応えるかが明確であるかどうかを確認するため、トップマネジメントに質問しなければなりません。
また、組織のさまざまな部署の従業員と同じような会話をすることによって、ステークホルダーの期待が単に上級管理層から伝えられているというだけでなく、従業員自身がステークホルダーをきちんと理解しているかどうかを確認します。
組織のステークホルダーのグループの多くは、組織のビジネスに直接アクセスすることは、もしアクセスしたことがあったとしても、極めて稀であるとすれば、私たち監査員/審査員を自分たちの代弁者として信頼することができるということが重要です。
私たちは、CQI|IRCA の行動規範とISO 19011 (マネジメントシステム監査の指針) に、道徳上も、専門家としても従い、自分の仕事を専門家に相応しい態度で遂行します。ISO 19011によって、私たちは、自分が見たことを正直に事実に基づき報告し、結論については公平で客観的であることを求められていることを常に心に留めています。しかし、これはいつも簡単にいくわけではありません。
トップマネジメントにガバナンスの問題を問いかけるのはついつい躊躇してしまいますし、文化によってはこのような考え方はまったく馴染まないものでさえあります。しかしながら、私たちが専門家として信頼を得たいと思うなら、トップマネジメントを監査/審査することは絶対に必要なことです。
実際的な点からは、トップマネジメントを監査/審査することは私たちのソフトスキル、技術的な知識、あるいはその両方を向上させることとなります。私たちは、自分が監査/審査をしているビジネスがどのように運用されているかについて理解を深めるために、もっと自信に満ちた態度で、如才なく振る舞い、分析的で抜け目ない姿勢である必要があります。
監査/審査の専門家として、私たちは常に主導権を握らなければなりません。私たちに何が求められているのか、どのように振る舞うよう求められているかは時とともに変わってくるのです。
このことから、CQI は監査/審査に関連する新しい技能と知識の習得をサポートする学習と技能開発のポートフォリオを導入しました。このCQI とIRCA 認定トレーニングのポートフォリオは、ガバナンス、保証、改善、リーダーシップ及び状況という5つの核となる力量をターゲットとしています。
パート 2では
マネジメントの意図が明確化されているかを確認することについては以上です。続くパート2では、明確化されたマネジメントの意図が組織の目的に本当に合致しているのかを確認する上でマネジメントシステム監査員/審査員が果たす役割について考えていきます。
Richard Green、 CQP (Chartered Quality Professional) はISO 17021-3、ISO 19011及びISO 45001 に関する委員会にCQI を代表して参加しています。
監査員/審査員のための力量のフレームワーク
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