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「内部監査の緊急課題」 –(シリーズ1)文化が内部監査の実施に与える影響とは?(その1)

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「内部監査の緊急課題」 –(シリーズ1)文化が内部監査の実施に与える影響とは?(その1)

IRCA ジャパンのテクニカルエグゼクティブであるRichard Green が2017年10月号よりISO 専門誌、月刊アイソスに6回にわたり連載中の「内部監査の緊急課題」を14回に分けて、掲載していきます。シリーズ1 (その1) では、内部監査における6つの緊急課題とは何か。それぞれの概略を述べます。

はじめに

私が監査/審査に携わるようになって30年あまりになりますが、その間、よい監査/審査も、あるいはお粗末な監査/審査も数多く見てきました。すばらしい監査員/審査員にも、別のキャリアのほうが合っているだろうにという人々にも会いました。また、認証審査を自分たちの組織を改善へ導く手段/機会と捉えている顧客も、仕方なく受けているという顧客もいました。つまり、マネジメントシステム監査/審査に関して、最高から最低までを経験したわけです。

この連載では、私の経験とともに、監査という業務の現況に対する私自身の考えを皆様にお伝えしていきます。とりわけ監査員、特に内部監査員は組織にとって大変役立つ存在であると正しく世の中に知られ、感謝されるために、私たち監査員がすべきことを伝える機会にしたいと思います。

これから数か月にわたり、内部監査員の方々が体験している課題やフラストレーションを検討し、それらをいかに克服するかについてアドバイスしていきます。内部監査のベストプラクティスに関して、策定中のISO19011の改訂版からの新しい見解も取り込みながら、記事を書いていきます。来年の半ばごろISO19011:2018 が発行されると、一気に内部監査の「ハードルが上がります」。監査の原則は今回7つになります。7つ目の原則ではリスクに基づく考え方が核に据えられ、内部監査員の力量の見直しが図られています。

ところで、なぜ今回の連載を「内部監査の緊急課題」という題名にしたのか。 理由は簡単です。緊急課題は無視することはできず、対応しなければならないからです。下記の6つの緊急課題は、内部監査を効果的に進めるために必要だと私が考えている領域に関するものです。監査員は、監査の役割を遂行するためには適切な準備をし、これらすべての緊急課題に対応する力量を示す必要があります。

監査の6つの緊急課題

  • 文化に関する緊急課題

    監査員が業務を行う国や地域の組織文化は監査のアプローチに重大な影響を与え、効果的な内部監査に立ちふさがる壁となる可能性があります。このような場合も内部監査員は業務を遂行しますが、文化的な規範も配慮する必要があります。

  • ガバナンスに関する緊急課題

    内部監査員は、本来、組織のステークホルダーに代わって組織のガバナンスを評価する立ち位置にいるはずです。内部監査員は、「経営層の意図は明確か?」、「経営層の意図は目的に合致しているか?」という問いの答えを探します。組織のガバナンスが機能していないと判断したら、内部監査員は勇気をもってアクションをとる必要があります。

  • 保証に関する緊急課題

    ほとんどの組織は、「保証」のために内部監査員を雇用しています。ここで言う保証とは、法的要求事項に適合している、ステークホルダーのニーズと期待を満たしている、マネジメントシステムが効率的に効果的に運用されていることの「保証」です。内部監査員は、適合性と法令順守を確認できる情報の種類や情報源を理解し、証拠を入手する監査技術のベストプラクティスを採用する必要があります。

  • 改善に関する緊急課題

    内部監査員は組織内で日々業務を遂行して、改善すべき点を特定するだけでなく、改善推進の活動も担当することができるはずです。しかし、大抵の場合、内部監査員の権限は保証の提供だけに限られています。この記事では、監査基準が保証の分野を超え、改善の領域まで広がった場合、内部監査員はどのように組織に価値を付加できるかを検討します

  • 組織の状況に関する緊急課題

    組織が生き残るためには、自分たちの事業の状況の理解が重要です。内部監査員は、組織が直面する内部及び外部の課題、ステークホルダーのニーズと期待を明確にするだけでなく、状況に関する知識に基づく組織の対応を確認するという重要な役割を担っています。組織が状況に関する知識に基づいた対応をせず、事業環境に対する見解が誤って伝えられれば、結果は致命的なものとなる可能性があります。

  • リーダーシップに関する緊急課題

    内部監査員は、組織のリーダー、変更を推進する能力をもつ要員としての役割を担わねばなりません。組織がリスク、課題及び改善の機会に対応出来ていないなら、単にリスク、課題及び改善の機会を特定するだけでは不十分です。組織を前進させることをトップマネジメントが拒むなら、内部監査員は異議を申し立て、将来、物事を違うように進めるよう説得しなければなりません。

今回の連載では、それぞれの回で異なる緊急課題を取り上げていきます。最初に、文化に関する緊急課題について検討していきます。

次回は

世界の異なる場所の住人は異なる基準、行動様式、考え方や習慣を持っています。これは国民性や国民文化と呼ばれるものです。文化には、国民文化だけでなく、企業文化など、さまざまな文化がありますが、次回は、さまざまな文化の与える課題の中でも、国民文化が提起する「文化に関する緊急課題」を詳しく見ていきます。

シリーズ1 その2はこちら

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