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「内部監査の緊急課題」 –(シリーズ1)文化が内部監査の実施に与える影響とは?(その2)

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「内部監査の緊急課題」 –(シリーズ1)文化が内部監査の実施に与える影響とは?(その2)

IRCA ジャパンのテクニカルエグゼクティブであるRichard Green がISO 専門誌、月刊アイソスに連載中の「内部監査の緊急課題」のシリーズ1は文化に関する緊急課題です。シリーズ1の(その2) では、文化の与える課題の中でも、国民文化が提起する「文化に関する緊急課題」を詳しく見ていきます。

文化に関する緊急課題

さまざまな場所に旅したことがある人なら、世界の異なる場所の住人は異なる基準、行動様式、考え方や習慣をもつことを理解しているでしょう。この違いは「国民性」あるいは「国民文化」と呼ばれます。

国民文化が職場の価値にどのように影響を与えるかについて研究したヘルト・ホフステッド教授は、国民文化の6つの特質を示しました。

  • 上下関係の強さ (PDI): 権力の配分が公平でないことを、権力を持たない層が当然のこととして受け入れる度合い
  • 個人主義傾向の強さ (IDV): 個人は自分の面倒だけみればよいと考える人の割合
  • 男らしさを求める強さ (MAS): 協調、中庸、弱いものへの配慮やクオリティオブライフ (QOL) よりも、業績、ヒロイズム、自己主張や成功に価値を置く度合い
  • 不確実性回避の指標 (UAI): 不確実性や曖昧さを嫌う度合い
  • 長期主義的 対 短期主義的 (LTO): 長く続いている伝統や基準を尊重する度合い
  • 快楽的か禁欲的か (IND): 人生を謳歌したり、楽しんだりする基本的で自然な人間の性向を享受することに鷹揚な度合い


70か国に及ぶIBM の従業員から得られたデータをもとに、教授は国民文化のプロフィールをつくり上げました。上掲の棒グラフは、日本、英国、韓国、シンガポールと中国の人々を比較分析した結果です。

これは限られたサンプルからの結果ですが、直感的に「妥当」だと思われ、私が個人的に接したそれぞれの文化への印象と重なります。

中国ではだれもが守らなければならない序列があり、受け入れられています。この傾向はシンガポール、韓国も同様であり、割合は少し低くなりますが、日本にも同様の傾向があります。ひるがえって、英国では、下層階級、中流階級、上流階級という社会階層がいまだにありますが、もはやかつてのような優位性はありません。

また、中国、韓国及びシンガポールでは、個人の幸福より、集団の福利に比重が置かれています。日本人にとっては、集団と個人、どちらも等しく重要であり、英国では自分自身が重要なようです。

しかし、私には次の3つの特質こそが日本人の性格をよりよく表しているように思います。業績、ヒロイズムと成功に価値を置く度合い、不確実性より確実性に価値を置く度合い、昔からの伝統や基準を守り続けたいと望む度合いが非常に高い数値を獲得しています。

監査/審査にとって国民文化が意味すること

文化の側面は大切です。監査される側が許容できる文化を尊重して、監査/審査のスタイルを変える必要性が示唆されています。

文化への配慮の必要性は、監査に関連するもっとも重要なISO 規格、「ISO 19011 マネジメントシステム監査の指針(図表2)」上でも認識されています。マネジメントシステム監査員に望まれる個人的特質を規定する箇条7.2.2 には、倫理的である、外交的である、観察力があるといった特質に加え、融通がきき文化に敏感であること、つまり、「被監査者の文化を観察し、尊重する」とあります。

被監査者の文化を尊重することは、附属書SL に準拠するマネジメントシステム規格ではよりハードルが高くなったかもしれません。葛藤の範囲が広がったことは確かでしょう。

マネジメントシステム規格策定のガイドラインである附属書SL では、上位構造 (HLS)、同一の核となる文章と共通の用語と定義の使用が要求されています。附属書SL はトップマネジメントを、「最高位で組織を指揮し、管理する個人又は人々の集まり」と定義していますが、他に委譲できない活動がトップマネジメントに与えられ、それはトップマネジメントが管理するマネジメントシステムの管理責任に関するものです。

外部監査員も内部監査員も、トップマネジメントが要求される活動を適切に実施しているかを確認するためにトップマネジメントを監査/審査しなければなりません。

英国では、役員会のメンバーやCEO の監査について内部監査員が神経質になったとしても、文化的にはトップマネジメントの監査が憚られることはありません。しかし、日本では、責務を果たしているかといった点からCEO や役員会を監査するのは文化的にまったく異質なことでしょう。附属書SL に基づく規格はこのような挑戦的な課題を要求しており、ISO の認証保持のためにはこれを避けることはできません。また、内部監査員は、トップマネジメントを適切に監査していることを実証するために当該監査結果を記録することが求められており、これは文化的に監査を実施すること以上に気を使うことかもしれません。

日本の組織においてトップマネジメントと内部監査員の関係は今後変わっていくのか。挑戦的な課題を進んで受け入れる日本人は、ゆくゆくは英国と同様の方向に進むのではないかと思っていますが、昔からの伝統を守ろうとする長期主義の傾向という国民文化の特質の分析結果が正しければ、すぐには実現しないかもしれません。

監査スタイルは日々監査を実施する環境に影響されます。監査活動がひとつの地域に限られている場合、監査員はその地域の文化を唯一よいものとして受け入れがちですが、国境を越えて広がるグループの中で活動する内部監査員には危険が待ち受けています。ある地域で当然の行動が、他の地域ではまったく受け入れられないことがあります。1例として、監査員が贈り物を受け取ることが当然だとされる国民文化があります。実際、贈り物を断ったら、送り主を侮辱することになったりするのです。しかし、異なる国民文化のもとでは、贈り物のやりとりは顰蹙を買います。また、政治的、宗教的な配慮を無視すれば、深刻なトラブルに見舞われることもあります。

したがって、内部及び外部監査員を評価登録するすべての主要な機関 (例えばIRCA) は、登録監査員/審査員が順守しなければならない行動規範を擁しています。これらの行動規範は、監査員/審査員が慎重に取り扱うべき状況に直面したとき、世界のどこであろうと、いかに振る舞うべきかを明確にしています。

なじみのない国で監査/審査をする機会を与えられた監査員/審査員には、まずその地域の国民文化について必要なリサーチをおこなうことを強くお勧めします。その地域の習慣などになじんでおけば、よりよい印象を与えることができるでしょう。多様性を受け入れましょう

次回は

異なる国や地域だけでなく、ある組織と他の組織を比較すると、同じ国内でも著しく異なる文化があることに気付かれると思います。

次回は、組織の文化がマネジメントシステム及び監査にどのような影響を与えるかについて考察していきます。

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