内部監査の独立性を確保するには?
米国のMichigan Manufacturing Technology Centerのプログラム・マネージャー、アンディ・ニコルズ (Andy Nichols CQP MCQI) 氏が、内部監査員がISO9001の独立性の要求事項を達成する方法について説明します。
内部監査の独立性とは?
ISO9001:2015の内部監査に関する要求事項 (9.2.2) で最も頻繁に誤解され議論されているのが、監査員は監査対象業務から「独立」しているという考え方です。内部監査員が監査対象の業務から独立しているためには、監査対象とは異なる機能・部門で雇用されている必要があるとよく言われます。以前のバージョンのISO9001では、この点が幾分明確になっていました。
ISO9001:2008の箇条8.2.2では「監査員は自らの仕事を監査してはならない」とし、ISO9001:1987の4.1.2.2では「品質システム、プロセス及び/又は製品のデザイン・レビュー及び審査は、実施中の業務に直接責任を持たない担当者によって実施されること」と説明されています。
一方、『ISO TS/9002:2018 ISO 9001:2015 の適用に関する指針』の箇条 9.2.2では、次のように記載されています。「組織は,監査を実施する人員を割り当てるときに,監査プロセスの客観性及び公平性を確実にすることが望ましい。ときには,特に小規模な組織,又は特別な職務知識が必要な組織の領域においては,監査員が自分の業務を監査する必要が生じることがあり得る。このような場合,組織は,結果の公平性を確実にするため,内部監査員に同僚と組んで業務を行わせるか,又は結果を同僚若しくは上司にレビューさせてもよいかもしれない。」
ISOや審査に関するあらゆることのデフォルトとして使われることの多いマネジメントシステム審査のモデルは、認証機関のものです。つまり、認証機関の審査員は組織の顧客でもなければ、組織のスタッフでもないため、独立した存在とみなされます (ただし、組織から報酬は支払われています)。この独立性に倣い、内部監査員候補は組織の別の部分、別の部門から採用されなければならないと、おそらく間違った結論を出しがちです。実際、認証審査員は、企業が内部監査員として独立した人間を利用することを期待する場合もあります。新鮮な目で見ることは良いことだと思わない人はいないでしょう。
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客観性を保つとは
内部監査プログラムの責任者を悩ませているのは、機能、プロセス、活動に関する知識を持っている内部監査員が独立性を保っているとどのように示すか (例えば、他部門からの参加) 、ということでしょう。明らかに、監査員の客観性・公平性を確保するための方法はあり、それを採用することも可能です。これは以下の方法で実施することができます。
- 監査範囲と基準に基づき計画策定とチェックリストの作成をレビューする - これは有用です。
- ピアレビュー - その内部監査員が (監査) プロセスに従い、客観的な証拠を求めていることを確認するために、内部監査員 に「同行」する。
- 報告書のレビュー - 報告されている内容は事実に基づいているか、客観的かをレビューする。
内部品質システム監査員として独立している状態は、無理なく監査を計画し、実施し、報告する自由があることから生まれます。例えば、特定の担当者が正しく業務を遂行していないことを証明するために監査員が配置されれば、魔女狩りのような監査になる可能性があります。このような場合は、独立性が失われます。
もっとも望ましいのは、客観的で公平、かつ担当するプロセスや工程に精通した内部監査員を配置することです。
その結果、監査はより効果的、効率的になり、(文書化された) 手順への単純な準拠に焦点を当てることは少なくなるはずです。その代わり、内部監査員は、被監査プロセスの有効性について、十分な情報に基づいた見解を持つ必要があります。そうすれば、経営陣の注意を喚起するための問題提起は、より理解されやすく、改善の裏付けとなるでしょう。