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適合性、パフォーマンスそしてクオリティの複雑さを乗り越える

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適合性、パフォーマンスそしてクオリティの複雑さを乗り越える

quality.org の英文記事はこちら

今日の高度に規制された市場では、コンプライアンス/適合性だけでは競合他社との差別化を図ることはできません。パフォーマンスを達成するためには、組織はコンプライアンス/適合性を超えなければなりません。ウィリー・ヴァンデンブランデ (Willy Vandenbrande) 氏は最初は品質マネジャーとして、のちにはコンサルタントとして、35年以上にわたって品質マネジメントの分野で成功を収めてきました。コンプライアンス/適合性とクオリティの間の歴史的に複雑な関係について、同氏の考えや洞察を紹介します。

友人と夕食を共にしているとき、自分の仕事について話す中で、品質マネジャーとしての自分の仕事を説明しようとしていると想像してみてください。あなたが誇らしげに、すべてが最高基準を満たしていることを保証する仕事をしていると言ったとしても、何のことかまったくわからないという反応にしか会わないでしょう。

品質マネジャーの役割と責任を説明するのは難しく、徒手空拳、負け戦に挑んでいるように感じることもあるでしょう。品質マネジャーが行うことの本質を明確にし、説明するために、信頼できる根拠として ISO9001規格に頼ったりすれば、さらなる混乱を招きかねません。

規格類の影響と課題を検証する

私とISO9001、そして適合性全般とは、常に複雑な関係を築いてきました。その理由のひとつとして、規格があまりにも複雑な言語で書かれていることがあります。これは明らかに皆が経験している課題であり、その証拠に、ISO9001:2015を「平易な英語」で説明することを約束する本が出版されています。標準化組織はこのような規格で大儲けしているのですから、せめてアクセスしやすくすることくらいはできるはずです。

2つ目の理由は、より根本的なものです。今にして思えば、ISO9000シリーズの規格は品質にとってよいものだったのだろうかと疑問に思います。1980年代、品質マネジメントは非常に注目され、コンファレンスには多くの人が集まり、デミングやジュランといった第一人者は非常に人気がありました。

これは日本の産業界の業績と大きく関係しています。品質がコストではなく、低品質を排除するために多大な努力を払うことは、市場シェアと収益性の向上という高いリターンをもたらす投資であることが明らかになりました。品質マネジャーは重要であり、組織の戦略的レベルに存在していました。そして、そこにISO9000が登場しました。

パフォーマンスによる総合的品質管理 (TQM) の推進

品質に関しては、まずパフォーマンスに重点を置き、後から適合性が追加されたとも言えるでしょう。その結果、適合することがパフォーマンスの究極の証明とみなされるようになったわけですが、それは明らかに間違っています。

これは当たり前のことのように思えますが、多くのクオリティプロフェッショナルは、適合性を超えてパフォーマンスに踏み込む必要があることを組織に納得させるという難題に直面しています。多くの場合、品質部門の最も重要な、そしておそらく唯一の責任は、システムをマネジメントし、認証審査に合格することです。その結果、クオリティプロフェッショナルの影響力が低下し、場合によっては、総合的品質管理 (Total Quality Management = TQM) の達成を妨げる要因となります。

今日、私の仕事の大半は、品質と持続可能性の関係を促進することにあります。最近、EUの企業サステナビリティ報告指令 (EU Corporate Sustainability Reporting Directive = CSRD) と、それに付随する欧州サステナビリティ報告基準 (European Sustainability Reporting Standard = ESRS) が法的要求事項として承認されました。ほとんどの人が拍手喝采を送る一方で、それに従って報告することだけが唯一の行動になりかねないという懸念があります。

私たちは、コンプライアンス/適合性を徹底することで、私たちクオリティプロフェッショナル独自の生物圏を破壊しようとしているのかもしれません。それを防ぐには、クオリティプロフェッショナルが、クオリティと持続可能性の両面において、卓越したパフォーマンスに向けて組織を動機付け、支援し続けることが重要です。

「コンプライアンスからパフォーマンスへ」をテーマに11月に行われるワールド・クオリティ・ウィークに参加し、コンプライアンス/適合性、パフォーマンス及びクオリティに関するCQI の会話に加わりましょう。

CQI レポート The Future of Work 未来の働き方
IRCAテクニカルレポート:ISO22000:2018