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ISO 45002 労働安全衛生マネジメントシステム ISO 45001:2018の実施に関する一般指針

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ISO 45002 労働安全衛生マネジメントシステム ISO 45001:2018の実施に関する一般指針

2019年10月、ルワンダの首都キガリで労働安全衛生規格を担当するTC 283の会合が開かれました。CQIはリエゾンAの団体としてTC283に参加しています。また、今回、TC283の作業部会内のチームのリーダーに指名されています。『ISO 45002 労働安全衛生マネジメントシステム ISO 45001:2018の実施に関する一般指針 ISO 45002 – Occupational Health and safety Management Systems - General Guidelines for the Implementation of ISO 45001:2018』の開発状況とISO 45001の実施に際して役立つその他の文書について報告します。

ISO 45002 開発状況

ISO 45001 の前身、OHSAS 18001は1999年4月に発行されましたが、OHSAS 18001の要求事項を職場でどのように実施したらよいかを知りたい組織にガイダンスを提供するための補完的な規格を常に策定することとしました。その成果物が、約10か月後の2000年2月に発行されたOHSAS 18002 です。

同様に、2018年に『ISO 45001 労働安全衛生マネジメントシステム 要求事項及び利用の手引』が発行された際に、すべての労働安全衛生規格を担当するISO の技術委員会、TC 283は同様のサポート文書が必要であることを確信していました。なぜなら、ISO 45001には読者が要求事項の意味を理解する助けとなる「解釈の手引」は含まれていますが、実際に要求事項にどう取り組むことができるかを示す「実施の手引」は含まれていないからです。

ISO 45002を作成するという決定は、2019年8月に、TC 283のPメンバー (participating members) による投票の結果なされました。新しい規格の開発作業は今年の10月に開催されたルワンダのキガリにおけるTC283の会合で始まりました。

ISO 45002の開発は、スウェーデン国家規格機関の指揮のもと、TC 283の作業グループ 3 (working group = WG3) により行われています。最初の作業草案 (working draft = WD) は、ISO 45001、OHSAS 18002、ISO 14004 (環境マネジメントシステム 実施の一般指針) 及びISO 9002 (品質マネジメントシステム ISO 9001:2015の適用に関する指針) から文章を引いて作成されました。

キガリでの会合では、個別に選出されたチームリーダーが率いる7つのチームにISO の箇条がそれぞれ割り当てられ、今後の開発はこれらのチームがそれぞれ担当して進められます。CQIは「箇条10改善」を改訂するチームのリーダーに選出され、さらに「箇条9パフォーマンス評価」の改訂をサポートする役割も与えられました。

当面の課題は、各箇条の要求事項はどのようして満たすことができるかを示す実用的な例を作成することです。すべてのWG3のメンバーに向け、作業草案 (WD)がコメント募集のために配布される前に、これらの例が2019年12月31日までに作成される予定の次のWD に組み入れられます。今のところ、ISO 45002 の委員会草案 (committee draft = CD) は2020年の秋、国際規格草案 (DIS) は2021年の春、そしてISO は2022年の秋に発行というスケジュールになっています。

興味深いことに、このタイミングだとISO 45002は、OHSAS 18001:2007からISO 45001:2018への移行期限 (2021年3月まで) が終わる前には発行されないことになります。ただし幸いなことに、移行期間中に追加の手引が必要な組織には、ISO 45002以外の選択肢が複数あります。

BS 45002-0:2018

2018年3月、英国の国家規格機関であるBSIはISO 45001 の発行に合わせてBS 45002-0:2018を発行しました。その目的は、OHSAS 18001の利用者のISO 45001への移行を助けることです。ISO 45001の各箇条が意味するところを簡単な言葉を用いて説明し、ISO 45001の各要求事項をどのように満たすかについて実用的な手引を提供しています。組織は、組織自身の安全衛生の場面を反映した、組織と釣合のとれたOH&Sマネジメントシステムを実施するために、BS 45002-0:2018を用いることができ、ISO 45001全部を適用実施しようとしている場合も、そうでない場合も、OH&Sマネジメントを体系的に改善するために、全体的にまたは部分的に利用することもできます。この規格はBSIのウェブサイトから入手できます。

関連記事 >ISO 45001の実施の手引 – BS 45002シリーズ規格

BSI - 小規模企業のための安全衛生マネジメントポケットブック

また、BSIは特に小規模から中規模の企業を対象とした実施ガイダンスも発行しています。『小規模企業のための安全衛生マネジメントポケットブック BSI - Little book of health and safety management for Small Business』という本で、BSIのウェブサイトから無料でダウンロードできます。この本は、安全衛生マネジメントシステムがもたらすメリットを中小企業のオーナーに説くきっかけとなることをそもそもの目的としているため、意図的に、詳細には踏み込んでいません。ISO 45001への言及はありますが、規格要求事項について詳細な検討を加えてはいません。したがって、この本は正式な安全衛生マネジメントシステムを初めて導入しようと検討している小規模事業者や安全衛生マネジメントシステムの導入は必要なのかどうか、中心的な要素は何かを知りたいという小規模事業者にとって興味を惹くものとなっています。

ISO 実施ハンドブック

一方、ISO自身が発行する『ISO 実施ハンドブック ISO Implementation Handbook』も小規模事業者を対象としていますが、BSIのポケットブックよりもずっと詳細なものです。ISO 45001の各要求事項を箇条ごとに検討し、要求事項の意味するところは何かを理解しやすい言葉で説き、要求事項に適合することがなぜ重要なのかを説明しています。また、箇条ごとに小規模事業者が要求事項に対応する方法を検討するセクションがあります。

キガリでは、作業部会3 (WG3) がこの文書の草案作成を完了し、2019年11月の発行前に、現在、体裁を整える作業 (図案や表の追加) が行われています。BSIのポケットブックとは違い、ISO実施ハンドブックは有料での提供となります。

ISO 45001 CQIテクニカルレポート

CQI|IRCA のメンバーは無料で入手できるこのテクニカルレポート (メンバー以外は有料で入手可能) は、まず概要部分でOHSAS 18001:2007とISO 45001:2018の主たる違いを述べています。それから、それぞれの新しい要求事項を検討し、労働安全衛生 (OHS) マネジメントシステムの運用のマネジメントを任された人々とOHS マネジメントシステムの審査/監査に携わる人々にとって各要求事項はどのような意味を持つかを検討しています。このガイドでは具体的な実施の手引は提供されていませんが、その代り、すでにOHSAS 18001に適合したシステムをもっている組織がISO 45001の認証を取得するために何をしなければならないかということと、この作業をシステムのマネジメント担当者とシステム監査担当者でどのように分担するかに重点を置いています。

以上、ISO 45002の開発状況とその他関連の規格や文書についてご紹介しました。CQI|IRCAでは、ISO 45001とその関連情報を随時お伝えしていく予定です。また、本記事中で言及されているBS 45002については >ISO 45001の実施の手引 – BS 45002シリーズ規格でより詳細にご紹介しています。

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