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2018年8月開催CPD月次会レポート(サプライヤー監査の実施法)

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2018年8月開催CPD月次会レポート(サプライヤー監査の実施法)

8月度の月次会は、サプライヤー監査の現状課題に関わる考察と、効果的な実践方法について検討するセッションを開催し、ウェブ参加を含め35名のメンバーにご参加をいただきました。

IRCA認定研修機関 株式会社LMJジャパンでQMS研修講師を務める青木明彦氏をリード役に迎え、大手電機メーカーでのサプライヤー監査、及びその指導経験等に基づき、QMSの全体パフォーマンスにおける効果的なサプライヤー監査の実施法について多くの情報提供と問題提起をいただきました。

イントロダクション

まずセッションの冒頭、IRCA事務局から、監査を包括するサプライヤー・マネジメントの視点から組織体制の中でサプライヤー品質保証(SQA)の専門家が担う役割の事例が示された。

限られた監査リソースで、他部門との連携が求められる非常に広範な役割が期待されていることを確認し、サプライヤー監査に期待される役割や位置づけについて共通認識を示した上で、サプライヤー監査の実態や課題に関わる学習と考察のセッションが開始した。

青木講師によるセッション

QMS規格要求事項の再確認

ISO9001:2015の規格は、企業が組織の課題を改善し、顧客の期待とニーズに応えることで、製品/サービス・プロセス・外部提供者に関わるパフォーマンスを向上させ、QMSの実効性を高めることを要求していることを再確認した。

ISO規格の全体構造については、経営トップが主導するクオリティマネジメントと、現場で実践するクオリティアシュアランスのプロセスに分割し、以下にある2軸のフローで非常に分かり易く関係性が示された。

  1. クオリティマネジメント
    内外のコンテキストに基づく戦略の策定(4.1)から、マネジメントレビュー(10.2)に至るまで、経営トップが主導するマネジメントのプロセス(縦軸)
  2. クオリティアシュアランス
    箇条8に規定されている通り、顧客の製品要求から調達購買、検査・納品、及び不適正の是正に関わる現場で実践すべき品質保証のプロセス(横軸)

>>QM&QA2軸による規格概念図(月次会資料から)

組織に競争力をもたらすために、以下4つのパフォーマンスを向上させることが大切であると続け、組織の課題とパフォーマンスの関係(月次会資料から)が説明された。

  1. QMSのパフォーマンス
  2. プロセスのパフォーマンス
  3. 外部提供者(サプライヤー)のパフォーマンス
  4. 製品・サービスのパフォーマンス

更に要求箇条について、利益創出を目的とした事業活動上のリスク及び機会(月次会資料から)と対比させながら、本質的意義、及びQMSパフォーマンスとの相関性を確認した。

最後にQMS全体のパフォーマンスに購買・調達(8.4)が直接的に関係していることに触れ、サプライヤーに関する戦略に基づいて、サプライヤー監査の目的や実践法が決定される必要があると話し、サプライヤーを含み、事業活動のパフォーマンス改善指導ができる監査員の関与によって、サプライヤーとの戦略的な関係づくりが計画的に実施されるべきであることが提言された。

内部監査とサプライヤー監査の違い

サプライヤー監査の進め方を検討する前に、規格の要求事項及び内部監査とサプライヤー監査の違いを整理した。

サプライヤー監査は、パフォーマンスが求められるため、内部監査と比較して難度が非常に高く、さらにパフォーマンスを上げるためには、内部監査とサプライヤー監査の連携が必要であることが強調された。

内部監査とサプライヤー監査の違いに関する主なポイントとして以下2点が提示された。

  1. 不適合/改善課題の判断基準
    サプライヤー監査に関わる主な監査基準として、以下の4つが提示されました。
    (1) 契約事項(品質要求事項、指示書、依頼書など)
    (2) 約束事項(議事録の決定事項、是正処置の対策内容など)
    (3) 法的規制
    (4) 外部提供者が決めた顧客要求を満たす品質ルール
    ・製品、サービスの要求事項を満たす品質保証体制
    ・パフォーマンス指標を達成する改善計画
  2. 自部門の問題(責任)も指摘する
    実際にサプライヤー製品、サービスの品質問題は、製品、サービスを外部提供者に 委託している組織側に原因があって発生する場合が多いことを認識し、サプライヤー側の問題のみならず、委託元である自社に起因する問題について、客観的に特定し、指摘をする監査が求められる。
サプライヤー監査の効果的な実施方法

サプライヤー監査を効果的に実施するポイントとして、以下の4つの着眼点が提示され、個別に具体的な課題や効果的手法について具体的に説明。

  1. 経営トップの関与・・・サプライヤー戦略方針、監査員の育成、承認ゲートの設定
  2. 外部提供者の協力・・・品質問題の発生を未然防止
  3. 監査方法(手順)・・・監査テーマ、仮説、ストーリー
  4. 監査員の力量・・・人選、資質、知識、訓練、資格

経営トップが期待する監査のパフォーマンスについて基準を定め、目的・目標を達成し、実績として報告することが肝要。実績を通じて監査の投資価値を理解し、人材育成に必要なコストを予算化することが重要と言う。

また経営トップが監査活動に複数の承認ゲートを設け、直接チェックを行う仕組みを構築することで、監査の有効性向上に寄与している具体的な事例が提示された。

>>経営トップの関与する承認ゲート(月次会資料から)

実施法について、内部監査とサプライヤー監査は、製品の品質保証を一気通貫で監視するために連携が重要であり、またISO第三者審査とは目的や方法が異なることも強調された。

監査計画においては、品質実績データを分析して弱点を顕在化させるために監査員の『仮説力』が重要と話す。

外部提供者をビジネスパートナーとみなし、ベクトル合わせや相互の意図をすり合わせていく互恵的な関係作りに寄与するコミュニケーションを実現するためには、監査員がコーチングスタンスを持ち、客観性や公平性を保ちながら情熱や責任感を醸成していくことが有効であることなど、監査員の力量についても多くの提言があった。

教育、訓練された知識・経験に基づき、監査テーマに合致した結論を導き出して付加価値の高い監査報告書が書ける能力を発揮することが力量。 監査実績についてトップの信頼が得られるように『行動すること』が最も重要であると締めくくった。

>>監査員の力量について(月次会資料から抜粋)

ワークショップでのディスカッション(Output)

サプライヤー監査における課題テーマとして、青木講師から実際のサプライヤー監査で生じる課題として以下3つのテーマを提示頂き、5つのチームがそれぞれ関心あるテーマを選択し、約25分間、対策法についてディスカッションし、セッションの最後に全てのチームから結論の要点が発表されました。

  1. サプライヤー-監査員による指摘事項のバラツキを少なくする方法は?
  2. 自組織の問題点を指摘事項として顕在化させて持ち帰ることができるかどうか?
  3. サプライヤー監査員の役割を果たす為に必要な力量は?

>>5チームの対策案に関するまとめ(Link to Conclusions by each team)

参加メンバーのフィードバック

サプライヤー監査について、ISOでの直接的な要求事項が少なく、他社事例を取得する機会が少ないため、講義やワークショップを通じて、サプライヤー監査の実践に関わる参考事例や情報を求めて参加されたメンバーが多い会となりました。

サプライヤー監査の位置づけや、内部監査との関係性、又はその違いについて、具体的な回答を見つける好機となったとの声も複数有りました。

今回のセッションを通じて効果的なサプライヤー監査を実施するための気付きとして、主に以下のような内容が挙げられました。

  • トップマネジメントが関与し、サプライヤー取引に関わる方針や戦略を基に、組織の利益に関連するリスクと機会の着眼点からサプライヤー監査実践法を策定する考え方
  • リスク評価に基づく監査のアプローチは、基本的にサプライヤーごとに優先度やアプローチ法、監査ポイントが異なる点
  • 競争力のあるサプライヤーの評価方法として、正確性、スピード、コスト、継続性の評価など、品質に関わる指標のみならず、サプライヤーのオペレーショナル・エクセレンスに関わる総合的なパフォーマンス指標を用いることが有効となること
  • サプライヤー・マネジメントについて、現場監査は全体の一部分であり、受発注に始まり、日常管理や担当者間のコミュニケーション等、競争力のあるサプライヤーとの連携の実現に向けて総合的な視点で捉える必要があること
  • サプライヤー監査を通じて、自社の課題を捉えて自社の改善に繋げるために、内部監査を含めた組織としての協働、効果的な連携が不可欠であること
  • サプライヤー監査で要求される技量は、各ステークホルダーとのコミュニケーション能力や、リスクに基づく、パフォーマンス評価方法、効果的な監査方法の企画力、分析能力など内部監査と比較して範囲が広くなること
  • SCMに関わる管理資源の計画的な割り当てについて、サプライヤーのパフォーマンス評価に基づいて戦略的に実践すべきこと
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