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CPDイベント報告『内部監査能力の育成』 第4回 – 監査に台本はない!

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CPDイベント報告『内部監査能力の育成』 第4回 – 監査に台本はない!

2019年10月29日 (火)、CPD 推進イベント『内部監査能力の育成』の4回目のセッションが行われました。今回のCPD 推進イベントではIRCAのQMSプリンシパル審査員であり、IRCA認定研修機関 株式会社エル・エム・ジェイ・ジャパンの講師である青木明彦氏がコーディネーター/講師となり、月に1回ずつ、7月から12月まで6回連続で内部監査能力とは何か、どのように内部監査を実践するかを追求していきます。

第1回目のレポートはこちら

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第3回目のレポートはこちら

今回のセッションにおける青木講師の重要ステートメント:
● 監査に台本はない。本番でしくじったらやり直しのきかない舞台俳優と同じ。だから事前準備が大切。
● プロセスの重要性とは、どこがパフォーマンスの向上を妨げるボトルネックですかということ。
● ドッジボールではなく、キャッチボールをしよう。

前回までの3回はグループや全体での討議を交えながら、座学で考え方を学んできましたが、今回第4回目からの後半3回のセッションでは:

4回目: パフォーマンスをよくする監査はどうやって準備するのか
5回目: どうやってインタビューをするのか
6回目: その結果をどうやって最後にビジネス文書にまとめるのか

を、ロールプレイングも交え、実際に体験していきます。

今回は、4回目以降、何をするのか、それは何のためかという説明のあと、前回のセッションの補足が行われ、さらに、前回のグループディスカッションで判明した、すでにトップダウンのシステムがうまく回っているという参加者からのプレゼンテーション、その質疑応答及び関連のディスカッションを午前中に行いました。午後は、次回のインタビューのロールプレイングの下準備となる、パフォーマンスをよくする監査のための監査準備を、架空の品質データを用いてグループで実際にやってみました。

上記、参加者のプレゼンと他の参加者との質疑応答の後、青木講師から、受注産業におけるプロジェクトごとの小さなPDCAと全体のマネジメントの大きなPDCAの両方を回すという方法を市場型の産業で応用するための方法についてのヒント、情報の共有化による行動の促進 (どういう計画かを開示することにより、計画に対して説明責任を果たさざるを得なくなる)、経営判断ができるような提案の必要性などについての示唆がありました。

直接他社の事例を聞くことができるのは、社外には話すことはできない、本当に泥臭いところまでは開示されないとしても、参加者にとって有益なことであり、月次会ならではです。

1) パフォーマンスをよくする監査の事前準備

今回のセッションの目的は、パフォーマンスをよくする監査の事前準備には、どんなことが必要か、それを実際にやってみることです。パフォーマンス向上に役立たない内部監査は意味がありません。

なぜパフォーマンスが悪いのか、なぜ不良が出るのか、なぜクレームが来るのかという部分を直していくためには、着眼点を鍛える必要があります。受注、設計、調達、製造、出荷のどこかに弱点、ボトルネックがあるはずなので、それを一気通貫、システムで見ていく監査です。

1問1答のチェックリストをつかった適合性の監査では、4.4項のプロセスアプローチ、つまりプロセスの順序と相互関係、プロセスがどのようにつながっているか、連携しているかを見ることができません。プロセスアプローチには、上流から見ていく方法と、下流から見ていく方法があり、今回は下流から見ていくための監査準備を試みようということでした。

つまり、流出した不良、受けたクレームといった下流から、上流へと原因をさかのぼる方法です。

  • 決めたことを守っていますかという適合性監査はいちばん簡単。1問1答のチェックリストを使って、素人でもできる。
  • 上流から下流へとたどるプロセス監査は、決めたことを守っていますか、結果はどうですか、改善されていますかと聞くことで素人でも比較的対応できる。
  • 下流から、上流に攻めて、原因を探るパフォーマンス監査は素人にはできない。とても難しい。


下流から上流に遡るためにまずやるべきことは、監査テーマを決定することです。今度の監査では何を目的として監査をするのかという監査テーマを決め、そのテーマに沿って、どこに弱点があるのか仮説を立て、どのように監査を進めるか監査ストーリーを想定するというやり方があります。もちろん当てずっぽうの仮説や監査ストーリーでは百害あって一利なしであり、根拠が必要です。また、仮説が外れた場合は固執せず、広い心で相手の説明を聞き、意地にならずに、仮説が外れた理由を探らなければなりません。

  • 監査テーマ
  • 仮説
  • 監査ストーリー



監査の依頼主である経営トップの期待と不満が監査テーマとなります。トップが監査テーマを示さない場合は、ボトムアップで上げていって承認をもらう必要があります。

しかし、単にマネジメントシステムの効果的な運用を見ます、品質保証体制を見ますという漠然とした監査テーマでは、漠然とした結論しか出せず、経営者の興味を惹くことはできません。自分の会社のパフォーマンスがいちばん弱いところをテーマにして監査し、弱いところを明確にする結論が出れば、対応することができますし、経営者も興味を示すのではないかということでした。

ISO 9001の9.2.2の a) 項では、監査プログラム、つまり監査の年間計画を立てることを要求していますが、その際に考慮に入れなければならない項目として:

  • 関連するプロセスの重要性
  • 組織に影響を及ぼす変更
  • 前回までの監査の結果

を挙げています。プロセスの重要性とは何でしょうか。どの職場が重要ですかということではありません。どの職場がいちばん出来が悪いですか、パフォーマンスの向上を妨げるボトルネックですかということ。いつも公平に同じ時間を全部の部署に振り分けるのではなく、監査のプログラムではいちばん弱点であるところに重点を置きなさいということです。

では、どこがパフォーマンスの向上を阻害する弱点なのかというのが仮説となります。仮説はデータを分析して組み立てます。だれに、何を聞けば、この仮説を検証できるのか、それが監査ストーリーです。

2) 監査テーマと仮説を組み立てる演習の実施

演習は、架空の会社の品質データを分析し、監査テーマを決め、仮説を立てるところまでが実施されました。各グループは、机の上に記録を並べて、上から眺めてみる、あるいはポストイットを使うなど、思い思いの方法を用いて演習を実施しました。

この月次会で勉強しあったことは、これをそのままやりなさいということではなく、会社に帰って、自分の会社の中で新人内部監査員を育てていくときの1つのヒント、切り口として使ってもらえたらいいということです。したがって、今回はフルで演習を行うというより、その方法論を体験してみる、会社に帰って、新人の内部監査員を育てるときに参考にしてみてくださいということでした。

一定時間経過後、監査テーマの決定と仮説の決定を実際にやってみた結果と感想を各グループが発表し、関連の質疑が行われました。

● 複数いると見る視点がそれぞれで、それぞれが深堀するため、見つけ、まとめること自体が難しいところもある。
青木講師: ワンチームになれたかどうか。ベテランも新人も混ざった1つのチームとして監査にいくことが、いちばんのOJTとなる。

● データには日付が入っていたり、入っていなかったり、時系列がわからないのは難しかった。第三者的に見ていくと、記録の完全性は確かに必要だと思った。

● 製造業のデータだったが、自分のところはサービス業なので、部署の繋がり等、理解するのが難しかったが、考え方自体は一緒だということはわかった。
青木講師: ISO 9001は受注契約型の製造業からスタートしているので、研究開発、商品企画/設計などに当てはめることは難しい部分もある。そういった部門は手順書で縛るのではなく、計画書で見ていくという考え方もある。

● データがふんだんにあり驚いた、自分のところではデータをお願いしても被監査部門から出てこないから、監査テーマや仮説を立てるのは無理。皆はどうしているのか。⇒ 他の参加者: 自分のところは根回しをして、キャッチボールをしながら集め、大体集まっている。 セキュリティの問題も大事。
青木講師: これは研修用だから、現実はこうはいかないかもしれない。特にサプライヤー監査の場合などは出してくれない。その場合はまさにぶっつけ本番となるので、新人には無理、訓練を積んだ監査員でなければ対応できない。

● 見る視点がそれぞれ違い、それぞれの意見があると思った。
青木講師: いろいろな人とチームを組むと、効率的になり、視点が変わり、いい問題点が見つかるのではないか。そのためには人を育てないとだめ。新人に黙ってついて来いというのではだめ、育たない。チームに入れて、一員として監査をさせてみる。皆さんがやってるディスカッションは皆さんだからできる。若葉マークの人にはついてこられない。

3) 次回は

次回、11月22日に行われる第5回目のセッションでは、今回、話し合った監査テーマ、仮説、監査ストーリーに基づき、青木講師演じる、課長を相手にインタビューを実施してみます。

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※IRCAの各詳細は下記よりご確認頂けます。

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