エージェント型AI はクオリティの未来をどのように変えていくのか?


Vince Desmond
CEO, CQI IRCA
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ワールド・クオリティ・ウィーク2025のブログシリーズの続きとして、CQI のCEO、ヴィンス・デズモンド (Vince Desmond) がエージェント型 (自律型、主体的) AI (agentic AI) の進化する役割を考察し、クオリティプロフェッショナルにとっての影響と機会を掘り下げます。
エージェント型AI とは
2025 年には、エージェント型人工知能 (agentic AI) に関する大きな興奮と議論が期待されます。AI との関わり方に大きな変化をもたらすこれらのシステムは、自律的に行動し、対話して意思決定を行い、目標を達成できるエージェントで構成されています。
よくある例としては、与えられた目標にもとづいて休暇の計画や予約をしてくれるAI旅行代理店が挙げられます。その作業過程を見ると、AIエージェントは以下の点で生成AIとは異なります。
- プロンプトではなく目的が与えられる
- 作業を自律的に完了する
- コンテンツを作成するのではなく、意思決定を行う
よい例として、ソフトウェア会社セールスフォースが提供するAgentforceがあります。これは、顧客の問題を迅速、正確かつ自律的に24時間365日解決できる機能を備えています。
では、これは品質のマネジメントにとってどのような意味をもつのでしょうか?
AIエージェント vs 人間のエージェント
主な課題は、組織や従業員、ステークホルダーがAIエージェントの仕事の信頼性やクオリティにどのように自信を持てるかという点です。これについて考える方法の 1 つは、トレーニングと監視に関して、人間のエージェントと同じ考え方を AI エージェントに適用することです。
ヴィンス・デズモンド、CQI CEO
航空会社の AI スケジュールエージェントがフライトの変更が必要であると判断したため、あなたの個人用 AI 旅行エージェントが旅行会社のカスタマーサービスエージェントと交渉して旅行の再予約を行っているケースを想像してみてください。このような状況では、望ましい結果を得るために多くの複雑な課題を乗り越える必要があります。
もちろん、ISO 42001 (世界標準) や、国ごとに異なるAI規制といった新たな規制も存在します。しかし、バリューチェーン全体や組織間で運用されるAIエージェントエコシステムは、新たなシステム思考の課題をもたらします。
品質エージェントの未来
AI品質エージェントの使用事例はすでに現れ始めています。ドイツのAIスタートアップ、Juna.aiは仮想工場を運営するAIエージェントを開発しました。同社は生産品質の監視と最適化を行うAI品質エージェントと、プロセスの監視、改善を行うAIプロセスエージェントを提供しています。
米国のAIスタートアップ企業Akira AIは、AI品質保証マネジャーを提供しており、主要なタスクの自動化、欠陥の予測、継続的な監視を通じ、ソフトウェアのテストプロセスをマネジメントすると主張してます。また、同社はAIによる財務監査エージェントも提供しており、これによりデータ収集、異常検知、コンプライアンスチェック、リスク評価が自動化されます。これは内部品質監査へ応用できます。
さらに興味深いのは、品質と改善の専門企業が、深い品質の知識を自社のツールに適用して開発している AI ツールとアプリケーションです。例えば、PMIによるプロセスエージェントに関する取り組みや、Oakland Groupによる組織への自律型AI導入支援が挙げられます。また、Catalyst Consulting の新しいAI搭載プロセス分析および改善ツール「CatStat」にもご注目ください。
これらのサービス提供者、つまり品質ツールを提供するデジタルスタートアップとAIを活用する品質コンサルティングとの間の競争は、組織内部でも再現される現象です。最悪の場合、これは IT、業務、品質部門間での領土争いにつながるでしょう。最良の場合、これらの分野は共通の使命のもとに連携し、価値を創出し、エア・カナダが経験したようなリスクを軽減することができます。
人間のクオリティプロフェッショナルが残す永続的な遺産
これによってクオリティプロフェッショナルの役割が不要になると主張する人もいるかもしれません。他のすべてのテクノロジーと同様、AIエージェントは現在人間が行っている作業の一部を担うようになります。上記のツールを見ると、AIは少人数の人間のチームでは数週間かかる分析作業を数秒で実行できることが分かります。これは、私たちの職務分野でスキル不足が進行している中、悪いことではありません。
ヴィンス・デズモンド、CQI CEO
この新しい世界で品質リーダーが直面する課題のひとつは、キャリアパスをどのようにマネジメントするかということです。ほとんどのクオリティプロフェッショナルは、品質の原則、手法、ツールを実際の状況に適用する経験を積んでいます。クオリティプロフェッショナルはこれらの要素を深く理解するだけでなく、経験や状況、そして何よりも重要なことに人間関係のスキルの価値も学んでます。もしAIエージェントが品質担当の新人に取って代わるとしたら、実践的な基盤なしにどのように品質のベテランを育成するのかが課題となるでしょう。
CQIのクオリティ 4.0の原則は、エージェント型AIについて考え始める際の堅実な出発点となります。信頼や透明性から人間と機械の相互作用 (やりとり) まで、組織がAIエージェントの個別機能に加えて考慮しなければならない複雑な要素は数多くあります。クオリティ 4.0やデジタル保証に関するCQIの新しいeラーニングコースも、デジタル品質の世界を探求するのに役立つ方法かもしれません。