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パフォーマンスとレジリエンス: 2026年への展望

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パフォーマンスとレジリエンス: 2026年への展望

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 Vince Desmond
 CEO, CQI IRCA
 英語原文はこちら

CQIのCEOであるヴィンス・デズモンド (Vince Desmond) が、リスクからAI、クオリティプロフェッショナルの役割まで、この1年を左右した主要なトピックについて振り返り、2026年を展望します。

はじめに

世界経済フォーラムの Global Risks Report 2025 は、世界にとって厳しい状況を描き出しています。地政学的、地経学的、気候危機の脅威がリスクランキングのトップを占めています。多くの経済圏において、成長、生産性、そして競争力はとらえどころがない状況です。

そしてAIがあります。マイクロソフトのCEOは「世界の最も複雑な問題の多くを理解し解決する鍵」と表現しています。同時に、著名なコンピュータサイエンティストのヨシュア・ベンジオ (Yoshua Bengio) 氏は、今夏のTEDトークで「AIよりも、まだしもサンドイッチの方が規制事項が多い」と発言しました。そして、『AIバブル』ということも囁かれるようになっています。

一方で、日本からドイツまで他の品質団体との関わりを通じて、品質マネジメントが (中国など一部を除き) 戦略的ビジネスツールと見做されなくなり、現代の状況に適応できていないという継続的な懸念が明らかになっています。

このような状況は、2026年のクオリティプロフェッショナルにとってどのような意味を持つでしょうか?

レジリエンスを支える

組織が品質リスクを理解し、軽減する手助けをすることは、常にクオリティプロフェッショナルの役割の一部ですが、このような運用環境においては特に重要になります。2025年にはリスクが大きな話題となりました。

外部環境は依然として不安定であり、今年すでに英国のマークス&スペンサーや協同組合などで見られたように、国際的な組織や機関は、サイバー攻撃や不安定化を狙ったグレーゾーン戦術の増加に対してますます脆弱になっています。加えて、最近発生しているCloudflareサービスの世界的障害は、AIプラットフォームへの依存やインターネットインフラのレジリエンスに伴うリスクを浮き彫りにしています。

Quality ライブワールド・クオリティ・ウィーク、そして好評を博しているウェビナーシリーズでの議論では、クオリティプロフェッショナルがリスクに対して長期的かつ広範なアプローチを採用することの価値、それが外部環境からの影響に耐えるレジリエンスの構築につながることが強調されました。

事業の業績との整合

多くの組織が、スキルからテクノロジー、研究に至るまで、パフォーマンスの向上に投資できていませんでした。これが生産性や競争力の課題を招き、さらにそれが積み重なることで経済成長の停滞につながっています。

前述の通り、作業システムを改善することは常にクオリティプロフェッショナルの役割の一部です。

優れた品質マネジメントの本来的なビジネス価値を前提とすると、品質リーダーとの会話から、品質の目的、活動、測定基準を全体のビジネスの文脈や成果と一致させることの緊急性が明らかになっています。
CQI CEO ヴィンス・デズモンド

2025年の品質マネジメントの価値に関するCQI の研究プロジェクトも、この整合性をさらに裏付けています。私たちの研究結果の詳細を2026年にさらに共有できることを楽しみにしています。

品質のために協力する

クオリティプロフェッショナルの役割も、2025年におけるもうひとつの興味深いテーマでした。クオリティプロフェッショナルは、感謝されず、規格のマネジメントに追いやられ、事後的に品質問題を解決する任務を負わされていると感じながらも、品質マネジメントが戦略的成功のためのツールとして認識される時代を夢見ています。

2025年に最も人気のあったCQIウェビナーの一つが、品質のビジネスパートナーシップに関する私たちの調査の初公開だったことは、驚くことではありません。この調査研究は、CQIプロフェッションマップにおけるリーダーシップスキルに基づいています。これは、クオリティプロフェッショナルを組織全体の品質能力向上を促進する役割として位置づける機会を強調しています。具体的には、有意義な業績やレジリエンスの成果を目指し、他の部門や専門分野と協力し、統合を支援しながら、その役割を果たすというものです。2026年にはさらに情報をお届けします。

品質のスマート化

最近、確立された品質手法に異議を唱える声をよく耳にします。例えば、「従来の品質手法はこのレベルの混沌を想定して設計されていない」といった意見は、私が冒頭で述べた通りです。

2025年、品質コミュニティはデジタル技術の可能性を模索する段階から、その可能性を理解する段階へと移行しました。
CQI CEO ヴィンス・デズモンド

早期の導入は必然的に品質をより迅速に、より早くからマネジメントするのに役立ちます。

  • エージェント型AIツールはクオリティのワークフローを高速化する
  • 生成AIツールは知見と学びを共有して民主化する
  • AI問題解決ツールは問題分析を数秒で完了する
  • 拡張現実による検査ツールが検査時間と手直しを削減する
  • データ分析は、人間の分析チームよりも早くサプライチェーンの問題を予測することができる


こうした例は、まだまだたくさんあります。

今年、人工知能品質インフラコンソーシアムに参加したことにより、今後、パートナーシップを強化し、複数の国家品質インフラにわたる AI 認証、スキル開発、能力構築を主導できるようになります。

ここで、よりスマートでデジタルな品質が役立ちます。スマート品質のユースケースが急増する中で、成功に不可欠な基盤は、能力、文化、アプローチの面でのデジタル対応です。
CQI CEO ヴィンス・デズモンド

CQIの新しいデジタルeラーニングコースは、クオリティプロフェッショナルにデジタルトランスフォーメーションとクオリティ4.0の機会と課題を理解するための包括的な基礎を提供します。

現在求められているのは、品質のためのデジタル応用の事例を共有し、学び合うことです。私たちのグローバルかつ専門性の高いボランティア主導のプロフェッショナルネットワークは、知識や経験を共有するためにメンバーが集まる絶好の場を提供しています。

規格 4.0

品質コミュニティがISO 9001改訂の進捗を注視している一方で、規格の世界ではさらに興味深い動きが起きています。デジタル標準です。

Quality ライブで基調講演を行ったマイケル・マイネリ (Michael Mainelli) 教授は、社会があらゆる種類の規格を開発し配布する方法について根本的な見直しを呼びかけました。デジタル規格アライアンスのような業界団体は、デジタルシステム、シャドウやツインに直接適用できるデジタルでコード化された規格が、設計から構成管理まであらゆるプロセスを加速できる価値があることに注目しています。

ISOが主導する標準化団体も水面下でこれに取り組んでいます。このアプローチは、標準化団体の新たなビジネスモデルへの転換を示しており、従来の出版ビジネスから、顧客、規制、サプライチェーンを統合するデジタルプラットフォームへの移行を意味します。要注目です

2026年が楽しみです

2025年が終わりに近づく中、私たちのチーム、取締役会、そして広範なステークホルダーは2026年に目を向けています。私たちは、よりダイナミックな専門職を育成し、より高い基準を設定し、増え続けるグローバルなメンバーの皆さんに比類ない価値を提供するよう引き続き専念していきます。

そして最後に、私たちは品質エコシステムとの協力を継続し、提言活動を推進し、業界リーダーや政策立案者にクオリティリーダーシップの競争優位性を理解してもらえるよう支援していきます。

2026年に私たちを待ち受ける機会をつかみ、課題に取り組んでいくことを楽しみにしています。

CQI レポート The Future of Work 未来の働き方
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