パンデミックがもたらしたもの~混乱から信頼と持続可能性へ~
CQI|IRCAのクオリティ専門誌 Quality WorldのSpring 2021号からCQI|IRCA のCEO Vincent Desmond のコラム My Agenda の日本語訳をお届けします。
2020年という困難な年を乗り越えるにあたり、CQI は、ビジネスにおける最近の地殻変動と、それがクオリティプロフェッショナルにとって何を意味するのかを考えてきました。
テクノロジーとクオリティ 4.0
パンデミックにより、デジタル技術の利用が加速され、クオリティの定義、マネジメント及び評価の方法が問われています。問題は、「次は何か?」ということです。CQIの新しいクオリティ4.0の研究プロジェクトはこの問いに答えるものですが、他の取り組みも進行しています。例えば、UKAS と英国認証機関協会 (Association of British Certification Bodies) は、パンデミックで得た経験をもとに、リモート審査及び (リモートと現地の) 混合審査のガイダンスを作成するプロジェクトを進めています。
ワクチンの開発と承認の過程において、迅速なイノベーションと効率的な規制には価値があることがわかりました。今月、私はCQI を代表して英国政府のイベントに出席し、自主的な規格と認定された認証が、第4次産業革命に関連する革新的な製品やサービスの迅速かつ安全な商業化を支援するために、どのような役割を果たすことができるかについて幅広い議論を行う予定です。
リスクとレジリエンス (復元力)
国際協調からナショナリズムへのシフトは間違いなくこの1年で加速しており、グローバルなサプライチェーンと市場において、効率性 (just in time ジャストインタイム) とレジリエンス (just in case 万が一に備えて) のバランスを取るという課題が出てきています。
短期的には、CQI|IRCAの多くのメンバーがUK-EU間の貿易協定に伴う当面の課題に対応しています。CQI|IRCA はUKAS と共同でコーポレート・パートナー懇話会 (Corporate Partner Roundtable) を開催しました。そこでは、多くのセクターがデータ保護から原産地規則 (rules of origin) に至るまで、商品の移動やさまざまな猶予期間の終了をマネジメントするために、新たな管理上の取り決めを行わなければならないことが示されました。これは、中小企業に対してより大きな影響があります。
信頼と持続可能性
意外なことに、環境から倫理的なサプライチェーン (ethical supply chains) まで、持続可能性という課題への関心はパンデミックの最中も維持され、さらに高まってさえいるようです。
こういったトピックは、2021年1月のダボス会議の議題として再度取り上げられ、ISO とEFQM (European Foundation for Quality Management) 双方が国連の持続可能な開発目標 (SDGs) に言及するなど、世界の品質インフラに受け入れられています。資産運用会社や消費者圧力団体は、取引先企業が責任ある持続可能な活動を行っていることを示す証拠を求める要求を強めており、持続可能性はますます重要な課題となっています。
CQI のメンバーのおひとりが、テスコ (Tesco 英国のスーパーマーケット) が規制や消費者の要求に応えて英国の事業から10億個のプラスチックをいかに除去したかを品質責任者が説明しているニュース記事を12月に教えてくださいました。組織は欠陥ゼロに情熱を傾けることができると同時に、品質の原則と方法を炭素や廃棄物などの問題をゼロにするために利用できるはずです。
いずれにせよ、持続可能性は製品とプロセスのクオリティにとってますます重要になってきており、それゆえ品質マネジメントは持続可能性にとって不可欠です。
仕事と人々
パンデミックの影響から抜け出すにあたっては、多くの人にとって雇用の確保と給与が当然、最優先事項です。しかし、従業員の期待は変わりつつあるようです。ある調査によると、従業員の40%が2021年に求職活動を計画しています。おそらく単にパンデミックが終わろうとしていることで潜在的な願望が爆発しているのかもしれませんが、柔軟な働き方やリモートワークが求職活動の基準として重きを置かれるようになっています。多くのセクターで質の高い専門的なスキルが不足していることが報告されています。したがって、従業員のこの新しい期待に応えることが、質の高い人材を維持し、惹きつけるために必要なことであり、特にパンデミック後に採用が急増するようであれば、なおさらです。
これらすべてのことで皆様が元気付けられるか、悲観されるかはわかりませんが、多くの点で取り組むべきことがあり、切迫感が増していることにはご同意いただけるのではないかと思います。