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持続可能性はなぜ品質マネジメントにおいて重要なのか

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持続可能性はなぜ品質マネジメントにおいて重要なのか
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 Vince Desmond
 CEO, CQI|IRCA
 Wednesday, 17 February, 2021
 英語原文はこちら

持続可能性 (sustainability サステナビリティ) という言葉には、さまざまな解釈があります。特にビジネスの世界ではそうです。しかし、CQI にとっての意味はシンプルです。持続可能なアプローチをとる企業は、顧客やステークホルダー、あるいは地球のニーズを損なうことなく、自らのニーズを満たしています。持続可能性はその企業文化に組み込まれています。それは、その企業の価値観の一部となっています。そして、それは強固な品質マネジメントシステムによって支えられているのです。

今は、これまで以上に、組織が持続可能性を取り入れる理由が多くなっています。その理由は成長の野望を達成するために投資家を惹きつけることから、顧客の期待に応え、満足度を高めることまで多岐にわたっています。製品やプロセスの質に関しては、持続可能性がますます重要になってきており、品質マネジメントの原則や方法も重要度を増しています。

品質 (クオリティ) マネジメントの次なるフロンティアか?

2019年、CQIはいくつかの国家品質機関にインタビューを行い、クオリティプロフェッショナルの将来の機会と脅威についての考えを伺いました。デジタルシフトが注目すべき話題として語られ、顧客価値を創造するための新しい方法を見つけることがその中心にあることに誰もが同意していました。

2020年、パンデミックと世界的な貿易体制の変化を経験したことで、私たちの焦点のバランスが変りました。

  • サプライチェーンとオペレーションは効率性からレジリエンス (復元力) へ、そして「ジャストインタイム just-in-time」から「万が一に備えて just-in-case」へとシフトしていますー少なくとも、今のところは

  • 「スピードの必要性」は、社会のリスクを低減させながら、迅速で無駄なくイノベーションを行うことの価値を明確に示しています

  • 世界経済フォーラムの2021年のダボス会議では、政策レベルだけでなく、ビジネスにおいても持続可能性の重要度が高まっていることが示されました

欧州品質機構 (EOQ = European Organisation for Quality) も2021年のワールドクオリティウィークのテーマとして「Quality: the next frontier クオリティ: 次なるフロンティア」を打ち出しています。

持続可能性-変化を起こさせるもの?

先ほど、持続可能性へと駆り立てる事項に組織が直面していることをお話ししましたが、その中には以下のようなものがあります。

顧客

持続可能性に対する顧客の姿勢や行動は複雑です。企業間のレベルでは、多くの組織が倫理的かつ持続可能な行動をするパートナーやサプライヤーと関りをもちたいと考えています。また、企業はサプライヤーに問題があったときには迅速に対応します。

例えば、英国のPR会社Bell-Pottinger の凋落の例があります。Bell-Pottinger では2017年にスキャンダルが発生したのち、急速にクライアントから見放されました。正しい選択とコストを天秤に掛けたとき、どのように行動するか、心理状態は微妙です。劇作家であり詩人でもあるベルトルド・ブレヒトが言ったように、「まずは喰うこと、モラルはそれから Erst kommt das Fressen, Dann kommt die Moral.」ということです。

法律と消費者の期待に後押しされ、英国の小売業者Tesco は2020年のクリスマスに向け、自社製品から2000万個のプラスチックを撤去しました。これを公表する声明が同社の品質責任者によって出されたという事実は、品質にとって、持続可能性がますます重要になってきているということの証左です。また、このことは、消費者が自分たちの価値観に沿って行動するのに、イノベーションが役立つということも示しています。

市民社会

英国の2020年環境法案には、材料資源の消費削減が盛り込まれています。これと並行し、英国の非営利団体 Green Alliance は、廃棄物の削減を支援するために、製品の保証期間の延長に対して税制上の優遇措置を与えることを検討するよう英国政府に働きかけています。これが法制化されれば、革新的で、信頼性のマネジメントに長けた経済、セクター及び組織が勝利を収めることになるでしょう。

企業統治 (コーポレートガバナンス)

2020年、英国のスチュワードシップ・コード (Stewardship Code コーポレートガバナンスの向上を目的とした機関投資家の行動規範) が導入され、企業の取締役が果たすべき説明責任に、社会的影響と企業行動に対する責任を加えています。

国際レベルでは、ISOが新しい企業統治の規格を開発中です。CQI がリエゾンという立場を通じて積極的に貢献しているこの新規格では、持続可能性をより重視しています。もちろん、品質マネジメントシステムによって、取締役会はステークホルダーの声を理解し、戦略や方針を働き方に組み込むことができます。事実、これはある種のオペレーショナルガバナンスの一例であり、CQIは英国の経営者協会 (Institute of Directors) と連携して取り組んできました。

>『オペレーショナルガバナンスはなぜ重要なのか (日本語版)』閲覧/ダウンロード

持続可能性への投資

投資判断が企業の成否を左右することは周知のことです。今日、そのような意思決定が持続可能性を考慮したものになりつつあります。米国の億万長者であるLarry Fink 氏が長期的なビジネスの持続可能性と社会・環境の持続可能性に焦点を当てるよう、CEO に呼びかけたことをご存じの方もたくさんいると思います。

また、Blackrock 社のサステナビリティ担当者が、バイデン大統領の緊急チームに参加していることも興味深いことです。一方、ドイツ人はいつでも概念を抽出することに長けています。「インダストリー 4.0」という言葉はドイツで生まれました。そのドイツでは長い間、「グリーン」 (環境によい行動) = 「グリーン」 (より多くの利益) と言われてきました。投資家もそれを認めており、ハーバード・ビジネス・レビューなどの出版物に、持続可能性のためのビジネスケースに関する文献が増えています。

自主基準

顧客が認識したり、要求したりする品質基準やモデルに持続可能性が入り込んでいるのをすでに目にしています。

クオリティに不可欠なもの

クオリティの高い製品やサービスとは、経済的に実現可能であること、有用であること、入手可能であること、安全であることに加えて、持続可能でなければならないという傾向が見えてきました。同様に、クオリティの高い組織とは、倫理的な供給プロセスから環境への影響まで、そのプロセスにおいて持続可能性を不可欠なものとしている組織です。

組織は、競争上、どのように自分たちを位置付けていくか、独自の戦略的選択を自由に行うことができます。しかし、環境及び社会の持続可能性は、PRのためではなく、価値観、価値提案、ビジネスの持続可能性の核に据えられるものになりつつあります。

今日の品質は明日の持続可能性である

持続可能性は大きな課題ですから、安全衛生及び環境マネジメントのコミュニティでは持続可能性に注目が集まっています。英国の環境マネジメント協会 (Institute of Environmental Management = IEMA) は、「世界を持続可能なものに変えていく Transforming the world to sustainability」というスローガンを掲げています。

しかし、今日の品質が明日の安全性であるように、今日の品質は明日の持続可能性であるとも言えるのです。最悪なのは、専門職同士が協力するのではなく、張り合うことです。私たちは他の専門職と協力して、自分たちの能力や専門性を最大限に発揮する必要があります。

これを踏まえて、日本科学技術連盟 (JUSE 日科技連) では、TQM (Total Quality Management) の見直しを行っています。TQM では、品質とはESG (環境、社会、ガバナンス) を通じて、社会や顧客のために価値を創造することであると捉えています。これは、品質マネジメントの原則と方法は組織と社会の持続可能性の課題にとっても当てはまるものであり、有用であるということを強調するものです。

また、CQIの専門誌、「Quality World」の2020年1月号において、日科技連は、「企業内においては、CQO (Chief Quality Officer) が中心となって、品質に対する企業文化を全社規模で率いる司令塔の役割を発揮する必要があり、Qを中核とする経営の本質を全社員に浸透させ、自社(生産者)と顧客(消費者)、さらには社会に対する企業倫理とは何かを体得し、人材教育に活かしていく必要があるだろう。」と述べています。

持続可能性は「ニュー」フロンティアではないかもしれません。しかし、クオリティプロフェッショナルは持続可能性を受け入れることで真の違いを生み出すことができます。

CQIは、クオリティプロフェッショナルをサポートするだけではなく、持続可能性などのトピックを前面に押し出すことでクオリティプロフェッショナルをリードしています。

CQI|IRCAの2020-2030の戦略についての詳細をご覧ください。

Vincent Desmond

CEO, Chartered Quality Institute

CQI レポート The Future of Work 未来の働き方
IRCAテクニカルレポート:ISO22000:2018