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航空宇宙及び防衛の認証プロセスにおける大きな変化

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航空宇宙及び防衛の認証プロセスにおける大きな変化

quality.org の英文記事はこちら

TEC Transnationalの代表取締役であるデイヴィッド・スクリムシャ博士 (Dr. David Scrimshire) が、最近提案された航空宇宙及び防衛組織向けの認証プロセスの変更について詳しく説明します。

パフォーマンスに基づくアプローチ

国際航空宇宙品質グループ (IAQG) の航空宇宙及び防衛関係組織向けの AS9100シリーズの認証プロセスは、ここ数か月で大きな変更が加えられました。

認証機関は、初回審査、サーベイランス審査、再認証審査において、国際認定機関フォーラム (IAF) の基準に基づく審査工数を引き続き使用しますが、AS9100シリーズの変更に伴い、パフォーマンスに基づくアプローチを採用することになります。

これにより、組織の航空宇宙品質マネジメントシステム (AQMS) がもたらすリスクに応じて、審査工数が増減する可能性があります。

OCAPとPBS/RPとは?

認証機関は、現地審査の期間とその費用を決定する前に、組織のAQMSのリスクとパフォーマンスの分析を行います。組織認証分析プロセス (organisation certification analysis process = OCAP) として知られるこの分析は、組織のリスクプロファイルに基づいて審査工数に影響が及ぶ評価です。審査工数には、計画立案、報告書作成、審査そのものなど、現地及びオフサイトの活動が含まれます。

さらに、パフォーマンスに基づくサーベイランス/再認証プロセス (performance-based surveillance/recertification = PBS/RP) と呼ばれる新しいオプションのプロセスもあります。PBS/RPにより、AQMSが一貫して高いパフォーマンスを示していることを証明できる組織に対し、サーベイランスと再認証審査の工数を短縮することが可能になります。逆に、パフォーマンスの低いAQMSは、審査工数が増加することでペナルティを受けることになります。

認証機関のプロセスは、組織から提供されるデータや情報とともに、有効なAQMSの継続的な維持の実証に基づいています。

OCAPの主な要素

OCAPでは、いくつかのリスクとパフォーマンスの要素を採点し、スコアが低いほどパフォーマンスが高いことを示します。以下がその要素です。

1.組織の複雑さ:

  • 単一サイトか複数サイトか?
  • プロセスの数と一意性
  • 範囲の広さ
  • スコア: 低 (1)、中 (3)、高 (6)


2.
内部監査プログラムのパフォーマンス:

  • 内部監査の有効性
  • スコア: 低 (1)、中 (3)、高 (6)


3.
納期厳守度

  • 顧客への納品目標の達成
  • スコア: 上回ってる(1)、満たしている(3)、下回っている(6)


4.
納入された製品/サービスの適合性:

  • 製品及び/またはサービスの品質
  • スコア: 上回っている (1)、満たしている (3)、下回っている(6)


5.
顧客からの苦情とフィードバック:

  • 苦情対応及びフィードバック
  • スコア: 上回わっている (1)、満たしている (3)、下回っている(6)


6.
業務プロセスの有効性:

  • パフォーマンス評価の評価記録過去の審査からの点数 (PEAR)
  • スコア: PEAR=5 低 (1)、PEAR=3 ~ 4 中 (3)、PEAR=1 ~ 2 高 (6)


これらのスコアが組み合わさって総合リスクスコアとなり、リスクは高 (25 ~ 36)、中 (12 ~ 24)、低 (6 ~ 11)に分類されます。このリスク評価は審査工数に影響を与えます。

  • 高リスク: 10%追加
  • 中リスク: 変化なし
  • 低リスク: 10%削減

審査工数の調整

認証機関は、特定のプロセスが存在しない場合、審査工数を調整することもできます。例えば、以下です。

  • QMSのマネジメント: 10%減
  • 製品及びサービスの設計及び開発: 20%減
  • 外部から提供されるプロセス、製品、サービスの管理: 15%減
  • 生産とサービス提供の管理: 20%減


審査工数は、是正処置を検証するため、あるいは契約上義務付けられている基準のために長くなることがあります。さらに、現地審査工数の追加の20%が、分析、計画、報告書作成に割り当てられます。

計算例

上記の例として、165人の従業員を擁する 「受託製造」の機械工組織が、再認証を申請している場合を考えてみましょう。

IAFのガイドラインによれば、審査工数は7日間です。上記で説明したリスクとパフォーマンスの要素を用いると、組織のリスク要因は以下のようになります。

  • 複雑さ: 低い (1点)
  • 内部監査: 高い (6点)
  • 納期厳守: 下回っている (6点)
  • 製品の適合性: (3点)
  • 顧客からの苦情: 下回っている (6点)
  • PEARのスコア: (6点)

総合リスクスコア: 28 (高リスク)

これにより、審査工数が以下のように調整されます。

  • リスクによる追加: 10% (0.7日) 増
  • 設計プロセスがないための削減: 20% (1.4日) 減
  • 正味調整分: 0.7日減

これにより、最終的な審査工数は次のようになります。

  • 初回: 7
  • 調整後: 6.3日(6に四捨五入)
  • さらに、OCAP活動: 20% (1.2日)

最終的な工数 7

パフォーマンスが高い組織のためのPBS/RP

PBS/RPは、組織が高いパフォーマンスを持続的に実証すれば、1サイトあたり審査工数を最大33%短縮することを可能にします。このプロセスのためには次の条件が必要です。

  • AQMS認証サイクルを1回終了していること
  • OCAPリスクスコアが低または中
  • 「ISO 19011: 2018 マネジメントシステム監査のための指針」に準拠した有効な内部監査プログラム
  • 承認された ASD 主任監査員トレーニングを受けた有能な監査員
  • 倫理方針とコミュニケーションプロセス
  • 近年、重大な不適合や認証の一時停止がない
  • 顧客満足の指標を満たす

PBS/RPの資格を取得し、その資格を維持する組織は、審査工数とコストを大幅に削減できる可能性がありますが、削減総額は基準工数の50%を超えることはできません。

まとめ

IAQGの新しい認証プロセスは、リスク/パフォーマンスに基づく審査への大きな転換を意味します。これらの変更は、エンドユーザーに対するサプライヤーのパフォーマンスを向上させ、世界の航空宇宙及び防衛産業の顧客にさらなる信頼を提供することを目的としています。

高い基準を維持し、AQMSを継続的に改善することで、組織はこれらの要求事項を成長と効率化の機会に変えることができます。

同様のスキームが、第三者による「ISO 9001:2015品質マネジメントシステム- 要求事項」の認証にも採用されるかどうかは、まだわかりません。

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