ISO 45001 – 労働安全衛生の世界標準を確立する
ISO 45001 の導入は、全世界の労働安全衛生基準を向上させるという目標にとって重要な一歩です。
作業開始から4年を掛けて策定された、この労働安全衛生 (OHS) マネジメントシステムの新しい国際規格は、労働安全を組織運営の中心部に据えること、取締役室から現場に至るまで、世界中の企業の文化に労働安全衛生を組み込むことを目的としています。労働安全衛生マネジメントシステムを導入しようという場合も、すでに運用中の労働安全衛生マネジメントシステムを改善しようとする場合もあるでしょう。どちらの場合も、ISO 45001 を達成することでご自身の組織のリスクマネジメントのアプローチを世界に認知させることができます。さらに、働く人をはじめとする利害関係者に、ご自身の組織が安全で健康的な職場環境を提供するための義務に真剣に取り組んでいることを示すことができます。
ISO 45001 は、1999年に策定された労働安全衛生の枠組みであるBS OHSAS 18001 に置き換わるものです。ISO 45001 とOHSAS 18001 の主たる相違点として、ISO 45001では以下が示されています:
- 労働安全衛生とビジネス慣行の統合 (特定のだれか、あるいは部署の責任ではなく)
- 経営層が労働安全衛生にリーダーシップとコミットメントを示す必要がある
- 予防処置という考え方から、リスクと機会の特定へ
- 請負業者とと外部委託の活動を組織のOHS システムに組み込む
「Plan-Do-Check-Act」のアプローチはISO 14001 やISO 9001 に取り組んでいる方にはおなじみのものであり、組織にとっては3つのシステムの統合がしやすくなりました。これは、職務上の責任が多部門にわたる、例えばクオリティプロフェッショナルの方々にとっては特にありがたいことです。
NEBOSH は、労働安全衛生規格を策定した専門家委員会の一員として当初から関与してきており、箇条7に「力量: 組織は、組織の労働安全衛生パフォーマンスに影響を与える、又は与え得る働く人 (実質的に、働く人すべて*) に必要な力量を決定する」として、力量の重要性が認められているのをうれしく思っています (*括弧内は著者追加)。
2007年に行われたグラスゴー・カレドニアン大学の調査で、安全衛生実務者への投資と安全衛生パフォーマンスには相関関係があることが判明しています。現場のマネジャーがより高いレベルの安全衛生トレーニングを受け、資格をもっている組織では、事故率がもっとも低いことがわかっています。
ISO45001 に関して、多くの関心が寄せられ、多くの活動が行われており、私はその与える影響を興奮をもって見ています。NEBOSH 同窓会 (NEBOSH のディプロマをもっている人々のコミュニティ) での最近の調査では、回答者の圧倒的多数が自分たちの組織でこの規格、ISO 45001 を実施したいと願っていることを表明しています。
もし認証取得を申請しようとお考えでしたら、まずギャップ分析を始めることをお勧めします。ギャップ分析は、現在運用してらっしゃるOHS システムのどの部分がすでに新しい要求事項に適合しており、どの部分が新しい規格要求に適合するために新しいアプローチや活動を実施しなければならないかを理解する助けとなります。
著者のバリー・ウィルクス (Barry Wilkes) は、NEBOSH (National Examination Board in Occupational Safety and Health) のストラテジー担当役員です。