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生産地から食卓まで - 課題に立ち向かうために (Quality World 2019年2月号より)

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生産地から食卓まで - 課題に立ち向かうために (Quality World 2019年2月号より)

CQI の発行するクオリティ専門誌、Quality World2019年2月号より、食品産業で頻発する数々のスキャンダルの根底にあるもの、フードチェーンにおけるサプライチェーンマネジメントなどに関する記事をお届けします。

モーニングコーヒーから、昼食のブリトーまで、現代の私たちの毎日の食卓には多種多様な食品が届けられています。これを実現するためには、複雑かつ精緻な、食品のグローバル・サプライチェーンが必要となっています。食品のサプライヤーをマネジメントし、伴うリスクを最小限に抑えるためには、乗り越えるべき課題が立ちはだかっています。Quality World のAnne Bruce がベストプラクティスを追い求め、サプライチェーンで問題が発生したときには、何をしなければならないかを検証していきます。

食品のサプライチェーンがうまく機能しているとき、だれも今晩の食事がどこから来たかに関心を払うことはないでしょう。しかし、何か問題が発生すれば、突如、だれもが生産地から食卓までの経路の詳細を知りたがるようになります。

食品に関するスキャンダルが、世界中でニュースの第一面を飾っています。例えば、2018年4月、アメリカ合衆国では、ロメインレタス経由で病原性大腸菌O157: H7 の感染が拡大し、5人の方が亡くなりました。また、2013年には、EU において牛肉に馬肉が混入するというスキャンダル、ホースゲート事件が発生しました。そして、2018年2月には、フライドチキンの国際的な最大手、ケンタッキーフライドチキンがチキンを調達できないという大見出しが躍り、英国内の800の店舗が一時的に閉鎖されました。

不便だというレベルのものから、命に係わる深刻なレベルのものまで、食品サプライチェーンで問題が発生すれば、評判が損なわれ、販売が悪化するのは、台風の目にある企業だけではありません。サプライチェーン全体に対する消費者の信頼が損なわれるのです。

国内規模でも、国際規模でも、すでに多くの食品規制や保証制度が提供されています。この上、将来の危機を確実に防ぐためにできることが何かあるのでしょうか。また、ブロックチェーンなどの新しいテクノロジーは、近い将来どのような影響を及ぼすでしょうか。

問題の根っこにあるもの

最近もっとも注目された複数の食品関連の事件で繰り返し指摘されているのは、複雑なフードチェーンにおいて製品のトレーサビリティを確保することの難しさです。

アメリカにおいて2018年に大腸菌の感染が広がった問題の中心にあるのは、ロメインレタスのトレーサビリティでした。このロメインレタスは灌漑システムにおいて汚染されていました。問題の根っこを探すのを難しくしていたのは、汚染された最終製品に使われていた多くのロメインレタスの供給源が複数だったからです。さらに、それを辿るための調査の際に収集された記録のほとんどが紙ベースであったり、手書きであったりしたからです。

将来に向け、FDA (米国食品医薬品局) は葉物野菜の業界がトレーサビリティのベストプラクティスと最先端の技術を採用して、農場から食卓までの主要なデータに素早く簡単にアクセスできるようにするよう強く推奨しています。また、業界に対し、標準化された記録保管への現代的なアプローチをとること、さらに製品包装にトレーサビリティを向上させるラベルを使用することを検討するよう促しています。

英国の食品安全ソフトウェア企業であるプライモリティ (Primority) 社のチーフ・テクノロジー・オフィサーであるジェイムズ・フリン (James Flynn) は、世界中の食品会社の90%以上が中小規模であると言い、ほとんどの会社が国際規格に従っていないと示唆しています。

これらの会社の大多数は、自分たちのクオリティシステムを紙ベースで運用しています。「過度な紙ベースのシステムが実行されている傾向がありますが、これは時間が掛かるだけで有用ではありません」とフリンは言います。

事件後、専門家が指摘したもう1つの大きな問題は、フードサプライチェーンでは、利幅に対する圧力のため、サプライヤーはコストを下げようとする環境が生み出されているということです。また、フードサプライチェーンは複雑なため、食品偽装には厳格な取り締まりが必要です。

確かに、これは馬肉スキャンダルから学んだ重要な教訓でもありました。この問題が発覚したのは、アイルランドの食品安全局による所定の監視の際に、英国とアイルランドの小売り市場と食品サービス市場で販売されている牛肉製品に馬肉が入っているのが確認されたためです。

調査の結果、牛肉として売られていた馬肉はルーマニアの食肉処理場から、オランダの食品販売業者、次にキプロスの販売業者を経て、フランスの企業へ売却されたということが判明しました。複雑な供給路と言えます。

英国は、ベルファストのクイーンズ大学の食品安全の教授であるクリス・エリオット (Chris Elliott) にフードサプライネットワークの完全性 (インテグリティ integrity) と保証に関するレビューを依頼しました。エリオットのレビューでは、食品 (に関するデータ) の完全性に関する8つの柱を特定し、事件当時の監査では、食品偽装に対する警戒心が不十分であったといった問題点が指摘されました。エリオットは、業界が食品安全と (食品データの) 完全性の基準に基づくモジュールタイプの監査のアプローチを開発するよう推奨しています。このレビュー以降、業界は推奨された事項に対応するようになってきています。

規制の役割

馬肉スキャンダル以降、リスクマネジメントとサプライヤーマネジメントもまた課題として浮上してきています。例えば、ISO 9001:2015 の箇条 8.4 は外部から提供されるプロセス、製品、サービスの管理を取り扱っています。8.4では、外部提供者からの購買であれ、協力会社との取決めであれ、組織のプロセスや機能の外部委託であれ、あるいはその他の方法であれ、組織はあらゆる形態の外部からの提供に対応することを要求しています。

リスクマネジメント規格の最新版、ISO 31000:2018は、「昨日までのリスクマネジメントの実践では、もはや今日の脅威に対応するには十分ではない、進化する必要がある」という事実を重視しています。新しく整備されたこの指針はオープンシステムモデルを提示しています。

サプライチェーンに対する規制は品質マネジメントに対する民間の認証機関、規格機関及び議員の答えとして

英国の食品基準局 (FSA) は規制の存在については懸念していませんが、その規制が適切なところに届いていないこと、また、「柔軟で迅速にというより、のろのろと」していることについて懸念をもっています。

FSA は、2017年の『我らの未来を規制する』という文書の中で、地球規模の食品及び食品安全の世界に参入した新しいプレーヤー (例えば、オンライン小売業者、食品配達サービス、民間の監査員、独立した食品安全認証スキームなど) により「リスクが低減する一方、異なるリスクが生まれたり、リスクが増えたりしている。しかし、現在の規制によるアプローチでは、リスクの変化に注力することは簡単ではない」としています。

ダメージを最少に抑える – KFC チキンクライシス


食品安全、食品規格あるいはオペレーションに関わる問題のいずれであっても、サプライチェーンに関する問題が発生した場合、ダメージを最少に抑えるためには、顧客とのコミュニケーションがカギとなります。

食品業界における典型的な例は、ケンタッキーフライドチキン (KFC) のチキンクライシスです。KFC は2017年末に輸送業者を変更し、長年のパートナーであるビドヴェスト・ロジスティクス (Bidvest Logistics) からクイックサービス・ロジスティクス (Quick Service Logistics) と提携するDHLに乗り換えたところ、DHLが配送拠点をただの1か所と決めた上、緊急時対応計画もなかったため、配送の滞留が発生しました。

DHL サプライチェーンのCEO、ジョン・ギルバート (John Gilbert) は、当時、「立ち上げの際に配送業務と輸送業務が同期されていませんでした」と説明しました。

Yum! ブランド傘下のKFCは、KFC の文字が正面に書かれた空っぽのバケツ型容器というショッキングな画像を使って、ツイッターで速やかに直接謝罪することによって、ダメージを押さえることができました。

また、英国北部の350の店舗については、以前の配送業者ビドヴェストに長期契約を結び配送を委託する一方、DHL とパートナーのQSL には英国内の残りの550の店舗への配送を委託し、顧客のために供給を安定させ、秩序を回復させました。

共有すればお互い様

FSAのボードメンバーであるデイブ・ブルックス (Dave Brooks) は製パン企業、フィンズベリ・フード・グループ社 (Finsbury Food Group plc) の前CEO ですが、『我らの未来を規制する』の意図するところは、フードチェーン内の情報を共有しやすくすることであると言っています。

FSA 自身がオープンデータの方針をもっているとブルックスは言い、理想とするのは異なる規制スキームが連携し、監査スキームの裏付けとなる基本的な情報を共有する世界であると言います。

すべての食品監査の要素は、食品安全、食品規格及びブランドの完全性 (integrity) を対象としています。例えば特定の製品要求事項など、個々のブランドの完全性に関する基準はこれまで同様、競争上の問題となり、共有は難しいかもしれませんが、ブルックスは食品監査の基本事項は広く共有すべきだとしています。

「情報の共有に消極的であったり、共有ができなかったりする場合、食品安全と標準システムに根本的な弱点が生じる可能性があります」とブルックスは言います。

「理想を言えば、システム全体を見て、システムを可能な限り効率的、かつ効果的に機能させなければなりません。お互いに競合する複数の異なる認証システムは必要ありません。例えば、すべての機関がBRC (British Retail Consortium 英国小売業コンソーシアム) のアウトプットを見ることができれば、小売業者とサプライヤーの監査を共有することができ、そうすれば我々すべてがあらゆる食品システムに内在するリスクを評価することができるのでよいことづくめと言えます。

さまざまな国際的な標準化機関もシステムの合理化を支援するために、サプライヤーに対する煩雑な手続きの重荷を軽くする方法を探っています。

英国において支配的な位置を占めるスキームであるBRC 規格は、多数の保証とクオリティのマネジメント監査システムの1つであり、国際的に食品業界が利用している保証、安全及びクオリティに関するガイダンスです。他のスキームには、有機食品に対するもの、米国で一般的なSQF (Safe Quality Food) や欧州のIFS (International Featured Standard) やFSSC 22000 (Food Safety System Certification、ISO 22000に基づく規格) のような国際的なプログラムがあり、英国以外では広く採用されています。

これらのスキームすべてが、テスコやウォルマートなど、7つの国際的な大手小売業者が支援する食品安全に関する業界団体、GFSI (Global Food Safety Initiative) によって、現在ベンチマークされており、急速に成長しています。

GFSI は2000年に食品業界のリーダーたちにより組織されました。サプライチェーン全体で信頼を築き上げながら、食品安全リスクを軽減し、監査の重複を避け、コストを削減するために協力してソリューションを見つけるために設立されたのです。

GFSI は勢力を拡大していますが、国際標準化機構のISO 規格を含む多数の大きな国際食品保証スキームがGFSI に入っていないため、決して統一されたシステムであるとは言えません。

また、食品安全規格は、製品のクオリティマネジメントを1つにまとめるために、食品製造業者により変えられています。例えば、FSSC 22000は食品安全認証に加えて品質監査を希望する組織のために、ISO 9001 の要求事項を含む追加のチェックリストを開発しました。

独立した第3者による審査も、個々の顧客監査 (2者監査) の必要性をなくし、監査の負担を減らすことにより、組織が監視とシステムの継続的改善に集中することができるようにすると、アメリカの規格機関、NSF インターナショナルのサプライチェーン食品安全部門の部門長ケアリー・アレン (Carey Allen) は言います。

監査と新しいテクノロジー

過去において、監査は日常業務に対して負担になると見られてきましたが、将来の第3者審査は、より受けやすく、科学的な方法に基づくものになるだろうとプライモリティ社のジェイムズ・フリン (前出) は言います。「仕方ないことですが、第3者審査は食品企業において業務を中断させるものとして批判されてきました。しかし、これは変わりつつあります。将来は、遠隔から農畜産業や食品の品質業務を観察することができる、グーグル型の『審査カメラ』、『審査ボット』やドローンが使われるようになるでしょう」。

ロボット工学やインターネットに接続する機器におけるテクノロジーの進歩は、すでにサプライチェーンの高度化や監視の改善を促進しています。この分野におけるもっとも革新的な技術となる可能性があるのはブロックチェーンです。まだ初期段階ではありますが、ブロックチェーンがよりスケールアップし、サプライチェーンマネジメントを変革する可能性を考えるとスリリングでさえあります。

ブロックチェーンでは、電子台帳で取引を記録し、共有するために独立したコンピュータを使い、分散型台帳を通じて、複数のステークホルダーが同じ情報へのアクセスを安全に共有することができます。

先駆的な人々にとって、現在はわくわくするような時代です。ブロックチェーンのIT ソリューションプロバイダであるクリプト・フューチャー社 (Crypto Future) は、最新のプロジェクトとして、ブロックチェーンに基づく食品追跡アプリのプロジェクトを立ち上げました。ブロックチェーンのデジタル台帳では、情報の「ブロック」は公共のデータベース、つまり「チェーン」に保持されます。多くのユーザが記録に情報を追加することができ、特定のだれかがその情報をコントロールするということはありません。

クリプト・フューチャーの創設者でありCEO のトミスラフ・マティック (Tomislav Matic) は、同社はオーストリアの複数の大手高品質ワインブランドにおいてこのアプリを実装する取組みを行っていると言います。これらのワイン業者は、1980年代のワインスキャンダル後、品質保証に非常に重点を置いています。ワインスキャンダルとは、いくつかのオーストリアのワイナリーが有害物質、ジエチレングリコールを使って、ワインがフルボディでより甘くなるよう偽装したというものです。

このスキャンダルにより、10年にわたりオーストリアのワインの輸出が完全に不振に陥りました。それ以来、オーストリアのワイン産業は、高級品に焦点を当ててきました。また、より厳しいワイン法が国より制定されました。

マティックは、ブロックチェーンがこれらの高価値のワインについて、透明性があり、持続可能な管理を可能にするだろうと言います。最終消費者は、自分の携帯電話を通じて、無料でこのアプリを使うことができます。最終消費者はボトルに表示された QR コードをスキャンすれば、収穫の時期、輸送、店舗到着のデータなどのデータに直ちにアクセスすることができます。

マティックは、「ブロックチェーンベースの食品追跡アプリは、既存のシステムや品質保証スタンプに代わるものではなく、改善を助けるためのものであり、フードサプライチェーンのみならず、最終消費者が最良の製品を選択するための安心を提供するものです」と言います。

プライモリティ社のジェイムズ・フリンは、フードサプライチェーンにブロックチェーンデジタル台帳の技術を取り込むための支援することを目的とするGFBI (Global Food Blockchain Initiative) の共同設立者でもあります。

フリンは、「ブロックチェーンは、まだ使用事例開発の最初期の段階であるということ、IOTAの有向非巡回グラフ (Tangle Directional Acyclic Graph = DAG) 技術など、他のデジタルテクノロジーがフードサプライチェーンの処理するデータを共有するためにははるかに有効な手段となる可能性があるということを念頭に置いておく必要があります」と言います。

デジタル台帳技術 (DLT = ブロックチェーンやTangle テクノロジーなど) が、非常に近い将来、データの処理方法や、企業が食品安全とクオリティの情報を共有する方法を変革するでしょう。フリンは、「あと3年か5年のうちに、過去に .com ブームやソーシャルメディアが席巻するのを目撃したように、デジタル台帳ソリューションが一気に急増するでしょう」と信じています。

現在、これを牽引しているのはIBM ですが、歴史的に見て、創造的破壊者は「主流から外れたところ」から来て、みんなを驚かすに違いないとフリンは考えています。

まだ概念の段階ですが、ブロックチェーンはサプライチェーンを変革する可能性があるとNSF インターナショナルのサプライチェーン食品安全部門の部門長ケアリー・アレン (前出) は言います。

「この巨大データベースであるブロックチェーンからの利用可能な膨大な量のデータは、データがクリーンで検証可能であるという条件のもと、人工知能の管理システムへのインプットとして食品安全とクオリティに革命的な変革をもたらす可能性があります」。

法律を越えて: サンドイッチチェーン プレタマンジェの事例


昨年は、国際的なサンドイッチチェーン、プレタマンジェ Pret a Manger にとっては大変な年でした。2人の顧客の死亡に絡んで、アレルゲンの表示方法に関する査察が入ったのです。

世界10か国で700の店舗を運営するプレタマンジェは、ネガティブな報道の渦に巻き込まれたのを受け、方針を大きく変更しました。

同店の顧客の1人、セリア・マーシュ (Celia Marsh) は、プレタマンジェの「スーパーベジ・レインボウ・フラットブレッド」を食べたあと、致死的なアレルギー反応を起こしました。この製品は乳製品を使っていないとして販売されていたということです。プレタマンジェは、当時のサプライヤーコーヨー (CoYo) が乳製品を使用しないヨーグルトとして誤って納品したものだと言い、コーヨーは責任を否認しています。

これより以前にあたる2016年に、ナターシャ・エドナン – ラペラウス (Natasha Ednan-Laperouse) がパッケージにアレルゲンの表示がないプレタマンジェのバゲットを食べたあと、アレルギー反応を起こし死亡していました。

プレタマンジェは英国内の350の店舗のそれぞれの厨房で一度に最大15個のサンドイッチという小さいロットで製品を製造していますが、関連のEU 法で定められている範囲でアレルゲンの表示を行っていました。

この法律では、食品のアレルゲンに関する情報は、店舗で直接販売するためにあらかじめ包装された食品のラベルに印刷するのではなく、リクエストに応じ、口頭で伝えることができるとしています。ナターシャ・エドナン – ラペラウスの死を調査した検死官は、この法律は、多国籍企業ではなく、地域の小さなサンドイッチショップにこそ相応しい法律であると非難しました。

プレタマンジェは現在、法的要求事項を一歩推し進め、店舗の厨房で作りたてのすべての製品にすべての材料を表示するようにし、さらに店舗内にアレルゲン警告サインを表示するとともに、アレルゲンを含むすべての原材料情報をすべての製品について、オンラインでも店舗でも入手できるようにしました。

また、プレタマンジェは、英国政府、英国内の規制当局、非営利組織や同業者と協力して、アレルギーをもつ人々をもっと保護できるようにするために必要な法的な変更を求めていくと述べています。

信頼を確立する

テクノロジーにより品質管理が新しいレベルに引き上げられたとしても、うまくいっているサプライチェーンをマネジメントし、維持するためにはサプライチェーンとの関係性が大事なことは変わりありません。

クオリティとシステムの支援組織であるレルバント・ビジネス・ソリューションズ (Relevant Business Solutions) のクオリティ実務者であるデイビッド・ベイカー (David Baker) は、「あらゆるサプライチェーンにおいて、最高のクオリティパフォーマンスを達成するためにもっとも重要なのは緊密な協力関係を構築し、育て、結果として信頼を築くことです。単に価格だけを基準として選んだサプライヤーが最高の持続可能なパフォーマンスを達成することは滅多になく、単価さえ安ければ常にコストが安くなるというわけでもありません」と言います。

サプライヤーと長期的な関係を育むことが、国際的な原料サプライヤーであるユニコーン・イングレディエンツ社 (Unicorn Ingredients) のビジネス成功の根本にあります。ユニコーン・イングレディエンツ社は英国を本拠とする企業であり、35か国で事業を展開しており、2015年2月以来、グローバルBRC の代理店及び仲介業者規格 (Agents and Brokers standard) の認証を取得しています。同社は10年前に設立されて以来、非常に多数のサプライヤーと連携してきています。

同社のテクニカルリーダーのシヴァニ・スリダラン (Shivani Sridharan) は、ユニコーンはサプライヤーが多くいる、インドと中国に現地事務所を置いていると言います。これらの国々の一部のサプライヤーは国際的な基準等に疎く、より多く注意を払う必要があるからです。サプライヤーのうち、およそ 90%はGFSI のスキームに適合していますが、より小規模でニッチな、特に有機製品のサプライヤーについては、サプライヤーを格付けし、文書により監査するための特別な取り決めが必要です。

サプライヤーは常に監視、レビューの対象となっているとスリダランは言います。問題が明らかになった場合、それを正すためにサプライヤーと協力することが重視されます。「根本原因分析やサプライヤーに対する現地監査などの行動計画を実施します」とのことです。

食品業界の企業とクオリティスキームが信頼と協力関係に注力すれば、テクノロジーの進歩による、より効率的でよく監視されているサプライチェーンの明るい未来が見通せます。

短期的には、英国と世界中の食品業界はブレグジットに備え、成り行きを見守っています。

NSF のケアリー・アレンは次のように述べます。「組織は政治状況に関わらず、サプライヤーを注意深く、継続的に承認し、監視し、管理するべきです」と言います。サプライヤーを検証する活動は、規制システムの変更があれば、それに準拠するよう、レビューし、アップデートしなければなりません。

未来には、さらなる難題が待ち構えているかもしれません。例えば、サプライチェーンが重圧にさらされたり、輸入品が今までよりも高額になったり、労働人口が減少したりすれば、長期的にリスクが増すかもしれません。リスクマネジメントに厳格に取組み、進んで適用することが必要になるかもしれませんが、これらは品質保証やサプライヤーマネジメントの分野ではすでに取り組んでいることです。

フードサプライチェーンは過去、何回も厳しい環境に曝されてきました。将来も間違いなくより厳しい環境に直面するでしょう。保証とクオリティの規格のポイントは、詰まるところ、どのような状況に投げ込まれてもそれに対応できる業界をつくることです。

CQI レポート The Future of Work 未来の働き方
IRCAテクニカルレポート:ISO22000:2018