食品安全認証がもたらす幅広いビジネスメリットを証明する
ロンドン大学バークベック校の調査では、 メーカーが認証を取得した結果、その売上高と収益性が伸びたという証拠が提示されています。
認証取得はビジネス上メリットがあるのか
品質マネジメント及び監査の専門家は、品質および安全規格の正式な認証を取得することで得られる、財務面、経済面、運用面での幅広いメリットについてよく話しています。
しかし、こうした幅広いビジネス上のメリットを具体的なデータで示すことは、時に「言うは易く行うは難し」です。
ですから、ロンドン大学バークベック校経営学部の研究者が、食品事業者(FBO = food business operator)が食品安全の認証によってどのような利益を得ているかを示す研究を行ったことは興味深いことです。
この調査は、食品及び非食品分野の第三者認証を行うBRCGS (BRCグローバルスタンダード) の食品安全認証を取得した、ヨーロッパ、北米、南米、アジア太平洋、中東、アフリカの食品企業451社を対象に実施されました。
予想通り、認証取得の第一の動機は食品の安全性確保であり、認証取得により安全な食品の生産と流通が向上したとする回答が8割、食品リコールが減少したとする回答が4割に達していることが分かりました。
確かな証拠
しかしながら、認証取得後に売上が増加したとの回答が55%、収益性が向上したとの回答が28%と、ビジネス上の付加価値も大きいという報告もなされています。
バークベック校の独立コンサルタント兼準研究員であるレイ・ランバート博士 (Dr Ray Lambert) と、バークベック校の経営学リーダーであるマリオン・フレンツ博士 (Dr Marion Frenz) は、報告の概要の中で次のように書いています。「認証を受けたFBOにメリットがあるだけでなく、サプライチェーン内でFBOを指定するブランドや小売業者にもメリットがあるというのが、共通の見解である。このような利点はよく知られているが、この調査が行われる前は、認証を受けたFBO やより広範なサプライチェーンにおける経済上及び業務上の利点に関する確かな証拠は不足していた。
「この研究は、内部及び外部のデータセットを使用して、認証されたFBO、より広いサプライチェーン、及び消費者にとってより安全な食品に対する認証の価値を明らかにし、この証拠を補おうとするものである。」
ランバート博士とフレンツ博士によると、調査から得られた経験的証拠から、BRCGS規格の認証は「これまでの調査に照らして予想されるよりも大きな規模で、サプライヤーに広範かつプラスのビジネスインパクトを生み出す」ことが示されています。
さらに、「このことは、規格が主に安全な食品の生産と流通を確保するために開発されたものであり、事業の成長、収益性、業務効率、イノベーションを目的としたものではないため、より顕著である。」と付け加えています。
回答者の70%が、認証取得に必要な生産方法の変更が、効率と生産性の向上につながったと回答しています。一方、認証された企業は、平均で7.5%の売上増加と6%の収益性向上を報告しました。
拡大する食品認証市場
この調査では、主要な食品安全規格のいくつかは、英国のBRCGS、フランス、イタリア、ドイツのIFS、米国のSQFといった大手小売業者のコンソーシアムのリーダーシップの下で開発されていることを指摘しています。さらに、民間規格の運用基準のベンチマークを行うために、Global Food Safety Initiative (GFSI) が設立されました。ISOはまた、食品ブランドによるサプライヤーへの複数回の監査に代わるものとして、食品安全規格ISO 22000を発行しています。
ランバート博士とフレンツ博士は、世界の食品認証の市場は、幅広い食品への適用可能性、健康や倫理に対する消費者の意識の高まり、サプライチェーンの複雑化などにより、拡大すると予測されると指摘しています。その結果、食品メーカーやサプライヤーは、ISO 22000、BRCGS、CQF、IFS、「fee-from (無添加、無〇〇)」認証の取得を積極的に求めています。
BRCGSによると、BRCGSの食品安全規格は130カ国、3万ヶ所のFBOで使用されており、食品小売業の売上高に8000億米ドル以上の影響を与えているとのことです。