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コンプライアンスを損なわないイノベーション

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コンプライアンスを損なわないイノベーション

quality.org の英文元記事はこちら

Smartway Pharmaceuticals 社の規制業務責任者であるニコール・ライオンズ (Nicole Lyons) 氏は、型にはまらない発想で組織をイノベーションへ導くよう、クオリティプロフェッショナルたちに呼びかけます。

今年のワールド・クオリティ・ウィークのテーマ「クオリティ: 異なる角度から考える」は、私たちクオリティプロフェッショナルにそれぞれの業界におけるやり方を見直し、変革へと踏み出すことを促すものであり、これはおそらく長い間待ち望まれていたことでもあります。

しかし、組織内の品質を向上させることが優先事項である場合、斬新なアイデアがコンプライアンスを損なうのではなく、むしろコンプライアンスを向上させる可能性が高いことをどのように判断すればよいのでしょうか。

イノベーションには勇気と謙虚さが必要です

品質の世界では、現状維持は安全だと感じられるため、往々にして長期間、現状が維持されてしまいがちです。安全性を追求することは、すべてのクオリティプロフェッショナルに共通する最優先事項ですから、このことは、多くの企業、特に製薬業界のような規制の厳しい業界で展開している企業が、何十年もの間、よく似たプロセスをよく似た方法で実施してきたことにつながります。つまり、多くの場合、品質は専任の部署に任されており、問題発生時には品質専任の部署の責任者は数多くの難しい質問に直面するということです。

しかし、これは時代遅れな働き方です。21世紀において一歩先を行くためにはアイデアの創出が重要であり、他部署や経営陣との協力こそが、持続可能なコンプライアンスを確保する最も安全な方法です。

斬新なアイデアは斬新な理解の上に成り立っている

政府の検査官やクライアントの監査員に自分が答えなければならない立場にいる場合、新しいやり方を最初に提案するのは勇気がいるものです。「画一的な」プロセスから脱却し、よりカスタマイズされた方法に移行するには、規制やガイドラインを超えた理解、すなわち品質部門以外の広いビジネス全体の仕組みを理解することが求められます。これは、他部署のリーダーとコミュニケーションをとることによってのみ実現できますが、アイデアを十分に評価し同僚と議論しても、そのアイデアが最初に思ったほど実用的でない場合もあることも受け入れます。

だからこそ、イノベーションはそれが起こることを許容する文化の中でしか発展しないのです。もし上級経営陣が「これまで通り」を崩すことに消極的であったり、品質チームが自分たちのオフィスの範囲から出ようとしなかったり、コンプライアンスの重責が一人にだけかかっている場合、変革を成功裏に実施できる可能性はほとんどありません。

視点を変えるのは私たち自身から

自分たちのプロセスが「自分たちにとって」良いものであるという事実を省みるのは難しい場合があります。結局のところ、良いプロセスはタスクが規則に従って完了することを確実にします。しかし、プロセスが本当に優れたものであるためには、それが自分たちにとって良いだけでなく、同僚にとっても可能な限り効率的であり、お客様には最高品質のサービスを提供するものである必要があります。そのときこそ、品質チームが企業に本当の価値をもたらしていると認められ、苦労して席を勝ち取る必要もなく、自動的に意思決定の場に迎え入れられるようになるのです。

長年にわたり、品質の職務は最も魅力的なキャリア選択肢とは見なされてこなかったし、他の部門の同僚から最も感謝される存在でもありませんでした。私は同僚たちがよくある「営業を妨害している」というジョークを許したり、現在維持を受け入れて、すでに負担の大きい仕事で新たな戦いを増やさなくて済むようにしているのを耳にします。しかし、誰もがより意図的な品質文化を創造することにより、実際の変革を推進する機会として自分の立場を認識する必要があります。たとえ他の上層管理職がまだ気づいていないとしても。

小さくてシンプルなステップから始めよう

いまだに「ネガティブなやり取りのみ」で業務を行っている企業は数多くあります。つまり、品質部門から連絡を受けるのは、何か問題が起こったときだけなのです。物事がうまくいっているとき (できればそれが大半であってほしいのですが)、ほとんどまたはまったく認められることはありません。たとえそれが当然のことだとしても、不遵守が罰せられるのと同じように、品質目標とコンプライアンスも称賛すべきだと私は信じています。

他の部署を巻き込んだり、経営幹部のチームの協力を得てビジネス全体に品質を統合することが難しいと感じた場合は、好奇心を持って取り組んでみてください。社内のさまざまな従業員との非公式な会議は、品質が彼らの役割にどのような影響を与えているのか、また、部門に対する彼らの印象を著しく損なう何かがあるのかどうかを理解するのに役立ちます。

多くの場合、プロセスには、比較的恣意的でありながら、別の部署の同僚に多くの遅延や追加のプレッシャーを引き起こす部分が少なくとも1つは存在します。これを解決できれば、人々の視点が変わり、信頼が築かれ、コラボレーションとイノベーションが促進されるでしょう。

革新的なアイデアを思い付いたら、それをできるだけ明確に説明する必要があります。あなたは、何か月もの間、毎日毎分その過程について考えていたかもしれません。しかし、なぜ違うやり方をしたいのかと誰かに尋ねられた場合には、あなたの変革マネジメントプロセスが十分に詳細で、疑問が残らないよう確実にしておく必要があります。

最も成功するアイデアとは、一見シンプルに見えても、実は事前の綿密なリスク評価や適切な変革マネジメントプロセスに基づいています。現行プロセスの課題や改善すべき点、そしてリスクをプロセスチェーンの他のプロセスに転嫁することなくどのように改善できるのかを、しっかりと示さなければなりません。

新しいアイデアがうまくいかない可能性は常にあるため、適切な間隔でその有効性を見直す必要があります。リスクが十分に軽減できない場合や、新しいプロセスが組織全体で機能しない場合は、それを受け入れて次へ進む覚悟が必要です。

基本的なフレームワークを活用する

異なる角度から考えることは、私たちが教えられてきたすべてに反するように見えることがあります。例えば、「実績のある確立された手順ほど安全なものはない」などです。しかし、企業内で生まれたアイデアを適切に探究できるよう、リスクをマネジメントし効果を評価できるフレームワークを整えることで、コラボレーションや継続的な改善のための発想がより自然に感じられるようになり、私たちは皆もっと良くなっていくでしょう。

私たちの中で異なる考え方をする人が増えれば増えるほど、それはより一般的になるでしょう。

CQI レポート The Future of Work 未来の働き方
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