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警察官的管理からパートナーシップへ

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警察官的管理からパートナーシップへ

quality.org の英語原文はこちら

主任監査員であり上級品質専門家であるアザド・グルザダ (Azad Guluzada CQP MCQI) は、石油/ガス プロジェクトに携わるすべての人が品質に責務を負う必要があると主張しています。

石油/ガスプロジェクトには、非常に大きなリスクが伴います。たった1回の品質の不備が、漏出、操業停止、環境被害、そして重大な安全事故を引き起こす可能性があります。ずっと長い間、品質は品質保証や品質管理の検査員だけの責務と見なされてきました。彼らはプロセスの最後で警察の役割を果たしていました。しかし、現在ではこの考え方はもはや時代遅れです。

現代のプロジェクトでは、全員が品質に責任を持つというこれまでとは違う姿勢が求められています。エンジニアリングから建設、経営層から現場まで、品質の共同責任は、安全で信頼性が高く、コスト効率の良い成果を達成するために不可欠となっています。

従来のモデル: 警察のような検査

古くから、検査は品質を保証する最終手段と見なされていました。検査員は溶接を点検したり、証明書を確認したり、トルク値を検証したりしていましたが、多くの場合、それは作業の最終段階で行われていました。しかし、この警察型の手法では、ミスが発生した後でしか問題を発見できず、高額な手直しが必要となりました。

この関係性を表現する簡単な方法が、次の数式です。

手直し = 検査当事者意識(オーナーシップ)

これは、すべての要員に当事者意識がなければ、検査の結果は手直しになってしまうことを示しています。当事者意識が低いほど、検査で発見される問題が多くなり、しかもその多くは手遅れになりがちです。したがって、当事者意識が高まるほど、検査後に残る問題は減少します。

そして、この公式は、次のように並べ替えることができます。

当事者意識 検査手直し

この式では当事者意識を調整力として強調しており、真の当事者意識が検査後に残る手直しを減らすことを示しています。もし当事者意識 = 検査であれば、手直しはゼロになり、理想的な状態となります。最後に、別の見方をしてみましょう。

検査 当事者意識 手直し

ここで、検査はニュートラルな機能として示されています。つまり、それは正しく行われたこと (当事者意識) と、うまくいかなかったこと (手直し) の両方を明らかにします。

その割合は文化によって異なります。当事者意識が低い場合、ほとんどの検査で手直しが発生します。当事者意識が高い場合、検査の大部分が成功を確認するものとなります。

これらの単純な方程式を合わせて考えると、検査だけでは品質を保証できない理由が説明できます。検査は当事者意識と手直しのバランスを反映するにすぎません。

警察的管理からパートナーシップへ

石油/ガス会社は、強制だけでは品質を確保できないことを学びつつあります。それは、事業者、請負業者、そしてプロジェクト実行に関わるすべての部門間のパートナーシップから生まれるのです。

次の方程式を考えてみましょう。

持続的な品質 = (警察的管理 → パートナーシップ) × 文化

この方程式は、警察的管理によってミスを見つけることはできるかもしれないが、品質を維持できるのは、文化によって支えられたパートナーシップだけだという変化を表しています。文化はコンプライアンス (遵守) をコミットメントへと変えます。これにより、誰もが自分自身を結果の責任者と考えるようになります。

品質はつながりの境界に宿る

私の経験では、品質は個々の作業自体よりも、それら作業がつながる境界 (インターフェース) にこそ現れるものです。スプール自体は許容範囲内で製作されたとしても、設置時にずれが生じれば、システムに漏れが発生します。アクチュエーターが正しく組み立てられていても、設定が運用部門に伝達されなければ、早期に故障することはほぼ確実です。

品質 = Σ (部門ᵢ × 部門ⱼ × パートナーシップ)

この式は厳しい現実を示しています。つまり、部門間の境界にパートナーシップが存在しない場合、品質は崩壊してしまうということです。インターフェースにゼロがだけあるだけで、すべての努力の総和が減少します。しかし、パートナーシップが存在すると、インターフェースはリスクではなく強さの源になります。

上記の数式で使用されている記号に馴染みのない方のために説明すると、Σは「総和」の意味であり、品質が複数部門の複合的な貢献から生まれることを示しています。部門ᵢと部門ⱼはインターフェース、つまり2つの部門が連携する接点を意味します。どちらかの部門が失敗すれば、そのインターフェースは崩壊します。

実践において「最初から正しく行う」こと

「最初から正しく行う (DIRFT)」はよくポスターなどで見かけるキャッチ―なスローガンですが、石油/ガス業界においては単なるスローガンにとどまらず、実際に規律として実践されなければなりません。DIRFTを達成するには、効果的に計画し、徹底的に検証し、全員がそのプロセスに関与する必要があります。

DIRFT=計画 × 検証 × 関与品質

これは積の関係であるため、1つでも要素が欠けると全体の成果は崩壊します。すなわち、いずれかがゼロであれば全体の結果もゼロとなります。このモデルは、品質がシステム的なものであり、3つの要素すべてがそろって初めて成立することを強調しています。

現場でのリーダーシップ

もうひとつの教訓はリーダーシップの役割です。机の前に座っていては品質はマネジメントできません。リーダーは実際に現場や製造工場、オフショアの現場に出向き、実際の状況やリスク、課題を直接理解する必要があります。この目に見える存在が、計画と現実のギャップを埋めます。

品質= (責務+インターフェース+リーダーシップ) ÷ 距離

リーダーシップと現場との距離が大きいほど、品質は低くなります。『現場主導のリーダーシップ』によってその距離を縮めることは、成果の質の向上をもたらし、真に皆に関わるものであるというメッセージを強めます。

品質は皆の責務です

石油/ガスプロジェクトはなぜ品質が皆の責務であるのかを示しています。業界は警察的な管理の考え方から、パートナーシップ、オーナーシップ、そして文化に基づく姿勢へと進化しました。品質は検査だけで保証されるものではなく、各部門がどのように連携し、リーダーがどのように関わり、そして責務をプロジェクト全体でどう分担しているかによって決まります。

私の個人的な見解はシンプルです。品質はインターフェースによって決まります。品質は、人と人、チーム、そしてプロセスのつながりの中に存在しています。パートナーシップやリーダーシップの存在を取り入れることで、リスクを強みに変え、コンプライアンスを文化に変えることができます。

この記事で私が共有した数式は、石油/ガス分野で得た教訓を自分なりに表現したものです。これらは業界標準ではなく、私自身の経験に基づいた個人的なモデルですが、品質の幅広いコミュニティ内で振り返りや対話を促すものになればと考えています。

石油/ガス業界において、そしてあらゆる産業において、この進化は選択肢ではなく、必須です。生き残るために必要なことです。

CQI レポート The Future of Work 未来の働き方
IRCAテクニカルレポート:ISO22000:2018