IRCA-マネジメントシステム審査員/監査員の国際登録機関 > 情報メディア > 技術|規格 > FSMS最新情報―2019年9月開催のTC34 SC17 の会合からの報告

FSMS最新情報―2019年9月開催のTC34 SC17 の会合からの報告

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
FSMS最新情報―2019年9月開催のTC34 SC17 の会合からの報告

ISO 22000が初めて発行された2005年の時点で目指していたのは、食品チェーンに属するすべての組織が、生産した食品が安全であることを確実にするために、食品安全ハザードを管理する能力を実証できる国際的な標準となることでした。これを実現するため、ISO 22000にはすでに広く運用され、実績のあるHACCP原則と適正製造基準 (GMP) が組み込まれ、食品安全に当てはめた品質マネジメントシステムのアプローチを採用しようとする組織に要求事項を提供します。

出だしは好調でした。国際標準化機構 (ISO) が毎年行っているサーベイでは、ISO 22000の認証件数は2007年から2015年までで4,122件から32,000件以上へとコンスタントな伸びを見せました。しかし、最近は、ISO 22000の認証に関わる雲行きが変わり、2016年と2017年の認証件数はほとんど増えず (それぞれ32,136件と32,722件)、2018年には32,120件へと減少しました。現在認証されている組織の3分の1は中国の組織ですが、世界のISO 22000の採用に特に堅調な伸びを見せている地域の1つが日本です (2017年は1,283件の認証が2018年には1,710件へと増加しています)。

認証件数は現在行き詰まりの感がありますが、ISO 22000を担当するISO の小委員会 TC34 SC17 は規格の開発作業を引き続き行っています。ISO 22000の第2版は2018年6月に発行されており、附属書SLに基づく新しい構造とリスクの理解に対してこれまでと異なるアプローチをもち、食品安全マネジメントシステムとハザード分析及び重要管理点 (HACCP) の観点からのPDCAサイクルの説明、また、重要管理点 (CCP)、オペレーションPRP (OPRP) と前提条件プログラム (PRP) の違いについての明確な説明が含まれています。

この9月にカナダのオタワで行われたTC 34 SC17の直近の会合の最初の2日間で議論の中心となったのはPRPでした。

ISO 22000以外の、例えばFSSC 22000やSQF などの食品安全マネジメントシステム認証とは異なり、ISO 22000はPRP に関して具体的な要求事項を設定しておらず、組織が自分たちで適切なPRP を特定して実装する必要があります。

そこで、特に食品の製造を行う組織がPRP の特定、実装を行う手助けとなるよう、PRPに関する6つのISO 技術仕様書 (ISO/TS) が以下のとおり、開発されています。

  • ISO/TS 22002-1: Food Manufacturing 食品製造
  • ISO/TS 22002-2: Catering  ケータリング
  • ISO/TS 22002-3: Farming  農業、畜産及び養殖
  • ISO/TS 22002-4: Food packaging manufacturing 食品包装材の製造
  • ISO/TS 22002-5: Transport and storage  輸送及び保管
  • ISO/TS 22002-6: Feed and animal food production 飼料及びペットフードの製造


現在、これらの仕様書はすべて異なる構造をもっていますが、将来的にはPRP の汎用性が増し、重複が減り、一貫性を高めるため、可能な限り、共通のテキストを含む共通の構造に移行していくことを目指しています (最近のマネジメントシステム規格に上位構造HLS が適用されているのと同じアプローチ)。

英国、米国、フランス、スイス、デンマーク、アルゼンチン、スリランカ、カナダ、そして日本の代表者からなる作業グループ 11 (WG11) は、現行の仕様書を精査し、それぞれの重複の程度を決定し、各仕様書から共通のテキストを抽出したのち、新しい草案にまとめます。この草案は2020年3月に予定されている次回のWG11 の会合の前にコメント募集のために回覧されます。各技術仕様書の共通要素が抽出されれば、プロジェクトリーダーが指名され、現在の共通ではない6つの仕様書のテキストをレビューし、改訂するタスクが与えられます。

なお、バイオセキュリティ (生物テロに対する安全措置)、フードディフェンス (食品テロに対する安全措置)、食品偽装リスク、要員、手直しとトレーニングのPRPを検討すべきかが話合われましたが、これらはすべて却下されました。しかし、「小売業」に対する仕様、TS 22002-7を策定すること、これを開発するためにWG11に専門家を招く召喚状を発行することが合意されました。また、TS 22002シリーズは、ISO 22000を参照する仕様書ではあっても、それ自体で独立した存在であり続けることが合意されました。

オタワでの会合におけるその他の重要な成果としては、『ISO/TS 22003:2013 食品安全マネジメントシステム – 食品安全マネジメントシステムの審査及び認証を行う機関に対する要求事項』が、2021年にISO/TS 22003-1 に置き換えられることが確認されたということがあります。さらに、SC17 の戦略的事業計画ではSC17 が集中すべき5つの領域が特定されました。5つの領域は、ISO 22000の簡易バージョンの開発の見込み、ステークホルダーの関与、食品安全審査におけるAIとテクノロジー、国連の持続可能な開発目標 (SDGs) への貢献、及び22002、22003及び22005 (飼料及びフードチェーンのトレーサビリティ) シリーズの簡素化です。

TC34 SC17の次回の会合の日程は未定です。

関連キーワード

CQI レポート The Future of Work 未来の働き方
IRCAテクニカルレポート:ISO22000:2018