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ISO 45001/ ISO 9004 の将来へ向けての議論が始まっています

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ISO 45001/ ISO 9004 の将来へ向けての議論が始まっています

ISO 45001:2018 - 労働安全衛生マネジメントシステム – 要求事項及び利用の手引き

2021年3月10日、TC 283の労働安全衛生タスクグループ 4 (TG4) のメンバー25名が初めて集まり、「労働安全衛生の新たなテーマ」について話し合いました。この作業の目的は、ISO 45000シリーズの規格が将来を見据えた適切なものであるよう、ISO 45000シリーズ規格の内容に情報を提供することです。

TG4は、新しい規格の作成そのものには関与せず、既存のOH&S 規格の開発に情報を提供するための「ホワイトペーパー」を作成します。また、包括的なものとなることを目指し、将来のOH&S 規格に何を取り入れるべきかについて意見を求めるために、将来を見据えた組織や学術界との連携を積極的に行っていく予定です。

さらなる調査のために提案された当面のテーマは以下の通りです。

  • 仕事と職場の境界があいまいであること
  • 外的要因が仕事の内外で労働者の健康と安全にどのように影響するか
  • リスクマネジメント
  • 心理社会的リスク
  • 職場での薬物 (麻薬、覚せい剤など) 使用/障害
  • 気候変動がOH&Sに与える影響、化石燃料からの移行を含む
  • 医療の進歩を含む新しい技術
  • グローバルネットワークとサプライチェーン
  • 現代の奴隷制、輸送問題、アウトソーシング、請負業者
  • 効果的な実施、適合性評価、リーダーシップ
  • 働く人の代表及び協議
  • 水の入手可能性、水質及び配水
  • 敏捷性 (アジリティ) 及び変更のマネジメント
  • 人口動態の変化
  • OH&Sの専門家の能力と可用性

TG 4のサブグループは、上記の各項目を検討し、4月16日に開催される次回のグループ会議に報告をします。この会議では、今後のOH&S 規格の改訂に向け、上記のうちのどの項目を優先的に検討するかが決定されます。

ISO 9004:2018 – 品質マネジメント – 組織の品質 – 持続的成功を達成するための指針

この規格の目的

1987年に発行されたISO 9004は、ISO 9001の適合を達成した組織が、その品質パフォーマンスをさらに向上させるための指針を提供することを目的としていました。2009年版では、焦点は「持続的成功」の達成へと切り替わりました。これは、持続的成功は、組織が戦略、リーダーシップ、資源及びプロセスに関して、強みと弱み及び改善の機会を特定して対処するという、品質マネジメントのアプローチを採用することにより達成されるとするものでした。

現行の2018年版は、2009年版をベースにしています。「組織の品質 (クオリティ)」と「組織のアイデンティティ」という2つの新しい概念を導入しています。組織のクオリティとは、「組織固有の特性がその利害関係者のニーズ及び期待を満たす程度」と定義されています。組織が持続的な成功を収めるためには、単に製品やサービスの品質を向上させる以上のことに注力する必要があります。「組織のアイデンティティ」は、組織の使命、ビジョン、価値観及び文化の4つの要素が相互に影響し合った結果です。したがって、持続的な成功を収めるためには、これらの要素が同じ方向を向いていなければならず、これを確実にするのはトップマネジメントの責務です。

ISO 9004の肝の部分は、組織が持続的な成功のパフォーマンスを判断するために組織が適用できる自己評価ツールです。成熟度がもっとも低いレベル (レベル1) にある組織では、単に特定の活動を実施すべきであると認識しているだけです。これは「基本レベル」と呼ばれます。最高レベル (レベル5) にある組織では、これらの活動を日常的に実施しているだけでなく、その分野で積極的に学習し、改善し、革新しています。これは「ベストプラクティスレベル」と呼ばれます。

現在、ISO 9004はガイダンス規格であり、組織はISO 9004の外部認証を取得することはできませんが、この状況は変わりつつあるのでしょうか。

ISO TC 176/SC2/AHG4

ISO は、ISO 9004の将来のステータスを検討するための臨時ワーキンググループ (AHG4) の設立を承認しました。このグループは、3月11日に初会合を開き、日本を含む14の国家標準化機関と5つのリエゾン組織から代表者が参加しました。4つの選択肢を検討することが、このグループの目的です。

  1. ISO 9004はガイダンス規格から要求事項規格に変更すべきか?

  2. ISO 9004はガイダンス規格として残り、別個の「パートナー」規格として、新しい要求事項規格ISO 9004/1 を作成すべきか?

  3. 第1セクションは要求事項を含み、第2セクションにはガイダンスを含むというハイブリッドISO 9004を作成すべきか?

  4. ISO 9004は「現状のまま」、すなわちガイダンス規格のみとすべきか?


決断するまでにはさまざまな検討事項があります。その中には以下のようなものがあります。

  • 評価可能な第2のQMS 要求事項規格を作成することによるISO 9001ブランドへの潜在的な影響

  • ISO 9004に基づくマネジメントシステム規格への附属書SLの上位構造の適用

  • ISO 9004をベースとした要求事項規格に関連する審査/認証プロセスの改訂の必要性

  • ISO 9004を要求事項規格に変換できるか、あるいはまったく新しい9004を作成しなければならないか?

  • ISO 9001の改訂が今年中に開始される可能性があるとしたら、このようなプロジェクトを進めるためのリソースはあるのか?

AHG 4のメンバーは、それぞれ上記の1つ以上の項目について初期評価を行うことになっており、そのフィードバックは4月の次回グループ会議で検討されることになっています。

現在のプロジェクトのスケジュールでは、2021年の第4四半期にISO 9004をどのように開発すべきか、ISO に勧告を提出することになっています。

CQI レポート The Future of Work 未来の働き方
IRCAテクニカルレポート:ISO22000:2018