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試験、検査及び認証の未来

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試験、検査及び認証の未来

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 Vince Desmond
 CEO, CQI|IRCA
 Monday, 9 August, 2021
 英語原文はこちら

試験、検査及び認証のセクターは2,500億米ドル規模の産業であり、最近のゴールドマン・サックスによるロイド・レジスター・クオリティー・アシュアランス(LRQA)の買収は、このセクターにおける機会拡大の一例です。


Raymond James Investment Services社
は、試験、検査及び認証の市場のうち1,000億米ドルがサービスを提供する企業に委託されていると推定しています。残りの1,500億米ドル分については、社内のカンパニー(品質保証部門)や政府が同様のサービスを提供しています。このようにアウトソーシングの割合が大きいため、試験、検査及び認証セクターにおける最近のM&Aを詳しく見て、その成長の理由を探ってみるのは意味があることだと言えます。

試験、検査及び認証セクターのM&A

過去20年間で、サービス提供企業による大きなM&Aがありました。特にヨーロッパは、試験、検査及び認証市場におけるM&Aの主な舞台となっています。過去10年間で、買収された対象の48%がヨーロッパにありました(Capitalmind)。また、34%を占め、2番目に多い地域である北米で事業を買収した買い手の多くは、ヨーロッパに本社を置いています。しかし、最近はそうでもなく、米国のゴールドマン・サックス社がLloyd's Register社の試験、検査及び認証サービス(今後は再び「LRQA」として知られるようになる)を買収し、Lloyd's Register社は海事部門に集中することになりました。

試験、検査及び認証事業の取得を推進する要因は?

試験、検査及び認証セクターにおけるM&Aは、これまでセクターでの断片的な成長を目的としたものが多かったのですが、新たに興味深い戦略的な買収要因が出てきています。

持続可能性

買収における環境、社会及びガバナンス(ESG)要素の重要性が高まっています。ゴールドマン・サックスは、このことを強調しています。「LRQAのESGにおける高い能力と、顧客の持続可能な成長経路をマネジメントする上で同社が重要な役割を果たしていることに期待している」と述べています。

今年は、持続可能なクオリティが多くの人にとっての優先事項となっており、いくつかのキャンペーンがこのテーマに焦点を当てています。

 World Standards Day 世界標準の日
 World Quality Week ワールドクオリティウィーク
 World Accreditation Day 世界認定推進の日
 World Metrology Day 世界計量記念日

実際、レイモンド・ジェームズ社は、試験、検査及び認証サービス会社は、ビジネスにおけるESGへのシフトのために行わなければならない変化に驚くほど対応していると見ています。さらに、ビューロー・ベリタス、DNVSGSなどの試験、検査及び認証サービス会社は、自社のサービスと2030アジェンダ (持続可能な開発目標) との関連性を示すことに熱心です。

デジタル化した保証

LRQAのCEOであるポール・ブッチャーは、ゴールドマン・サックスによる買収は、「当社の顧客がますます厳しい事業環境に直面している中、当社がデジタル化された保証のリーディング・プロバイダーになるという目標を加速させるために必要な、さらなる注力を提供するものです」と述べています。

2018年のBCGのレポートでは、今後10年間で、デジタル技術が現在の試験、検査及び認証市場の約40%から60%に影響を与えると推定されています。CQIの「クオリティ4.0」のリサーチから得られた最初の知見によると、バリューチェーンを横断してつながるデジタル化した保証のシステムの開発は機会でありますが、一方で困難も伴うことがわかっています。近い将来、試験、検査及び認証の大手企業が、技術力とデジタル能力を拡大していくのは間違いないでしょう。

規制

各国は、自主的な試験、検査及び認証がどのように規制と競争力の両方をサポートすることができるかに再び注目しています。その例は以下の通りです。

  • 米国食品医薬品局 (FDA) の2019年輸入食品の安全性に関する戦略では、他の規制制度の相互承認、セクタースキーム、試験、検査及び認証の提供を受け入れるとしています。
  • 英国政府が発表した「第4次産業革命のための規制に関する白書」では、イノベーションを安全かつ迅速に市場に投入するための自主的な基準の役割が認識されています。

このような動きは、私たちにとってどのような意味を持つのか?

  • 品質保証機能 – 市場のうち1,500億米ドル分は、いまだに企業内の品質保証機能や規制当局自身が行っています。試験、検査及び認証会社が導入したいと考えているデジタル保証技術と同じものが、複雑なバリューチェーンを管理するための産業及びセクターのスキームで直接利用できるようになるでしょう。CQIの専門誌Quality World 2021年春号に掲載されたENFITの Bulkvisionスキームが思い浮かびます。

  • マネジメントシステム規格作成者 – パフォーマンス評価が伝統的な内部プロセス及び製品監査から離れた場合、あらゆる種類のマネジメントシステムの枠組みである附属書SLは再考が必要かもしれません。

  • 審査員 – 認定のセクターは、規制を支える信頼と信用を提供する上で、より重要になるはずです。また、消費者がサプライチェーンや購入先の企業に対してより多くの透明性を求めるようになると、認定セクターは重要な役割を果たすようになるでしょう。しかし、認定機関が、デジタル化された「保証4.0」に対応するためには適応する必要があります。現在、第三者の審査員が行っているフィールドワークの80%が自動化される時代を考えるとき、そのような世界では新しいシステムやデータ解釈のスキルが必要になるでしょう。


自動化されたデジタル保証の実現にはまだ時間がかかりますが、投資家が示唆しているのは、それが今後の方向性だということです。BCGのレポートでは、「従来のTIC(test, inspection and certification = 試験、検査及び認証)企業では、デジタルに焦点を当てた新興企業や既存のTIC企業との競争が激化している」と指摘しています。

そろそろ私もTIC技術を使った起業をする時期なのかもしれません...。

CQI レポート The Future of Work 未来の働き方
IRCAテクニカルレポート:ISO22000:2018