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持続可能性の目標達成にクオリティを役立てる方法

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持続可能性の目標達成にクオリティを役立てる方法

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 Vince Desmond
 CEO, CQI|IRCA
 Wednsday, 27 October, 2021
 英語原文はこちら

リーダーにとって、戦略的意図を結果へと導くことはやさしいことではありません。例えば、英国政府のネットゼロの目標を例にとると、政治的な意図とは裏腹に、重要な目標を具体的に実現するための体制がほとんど整っていないように見えます。だからこそ、成果を出すためにシステム思考などのマネジメントツールが果たす重要な役割を、リーダーが認識することが重要なのです。

システム思考*とは、「システムを構成する部分がどのように相互に関係しているか、また、システムが時間の経過とともに、より大きなシステムの文脈の中でどのように機能しているかに焦点を当てる」(Ben Lutkevich)ホリスティックな分析手法と定義できます。つまり、システム思考では、問題を個々のパーツとして見て、それぞれのパーツを理解しようとするのではなく、問題や戦略を全体として捉えてアプローチするのです。

* システム思考: 英語の systemという言葉の定義は、"a set of things working together as parts of a mechanism or an interconnecting network; a complex whole" (Oxford English Dictionary = OED) です。また、"a set of principles or procedures according to which something is done; an organized scheme or method" (OED) という意味もあります。ひとつひとつのプロセスは独立したものではなく、相互に関係しあうものとして考えるという、ISO マネジメントシステムのシステムアプローチはまさにシステム思考の考え方と言えるでしょう。(訳注)

システム思考と戦略展開

システム思考の実践例としては、「英国水素戦略 UK Hydrogen Strategy」があります。この戦略では「英国の水素経済を発展させるためのシステム全体のアプローチ」が掲げられています。しかし、政治的な思惑がシステム思考の妨げになることも少なくありません。これは、例えば英国政府の交通に関する戦略にも言えることです。英国は、電気自動車の利用を低排出ガスのプラグイン補助金によって奨励していますが、充電インフラを供給する手段が不足しているように思えます。

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システム思考と戦略展開の価値を過小評価してはなりません。英国政府は、システム思考が欠如している場合に何が起こるかを示す指標を、最近の公的な調査で数多く得ています。

  • グレンフェル・タワー (ロンドンの高層住宅) 火災の査問委員会では、エンジニアのDame Judith Hackett 氏がシステム思考のアプローチをとり、ライフサイクルを通して建物を管理するシステムが不十分であったことを指摘しました。Dame Judith は、この問題を解決するための新しいシステムを提案しています。
  • Charles Haddon-Cave QCが主導した英国空軍のニムロド墜落事故のレビューでは、老朽化した航空機のシステムにおける安全リスクの管理が不十分であることが指摘され、軍用機の全範囲で新しいシステムを導入することが推奨されました。


英国政府は、政策展開を精査するための「レッドチーム」と呼ばれる組織を複数持っています。例えば、気候変動委員会(CCC = Climate Change Committee)などです。2021年の排出量削減の進捗状況に関する報告書の中で、CCCは次のように述べています。

  • 「大きな政策ギャップがある。現在のところ、実現が確実な政策では、第6次カーボンバジェットを達成するために必要な排出削減量の約20%しかカバーしていない。」
  • 「野心との大きなギャップ:委員会が公表した道筋に沿った現在の政府のコミットメントでは、2035年までの排出削減量の半分以下しかカバーできない。」
  • 「政府内では、野心的な目標を掲げ、効果的な政策を導入するために、速度変更可能なマルチスピードのアプローチを取る兆候が見られる。」


別の言い方をすると、システム思考や優れた戦略展開ができていなければ、目標は達成できないということです。

もちろん、政府に対してより科学的なアプローチを提唱している人は他にもたくさんいます。Dominic Cummings は、システム思考と戦略展開に関する長年の研究を経て進言しています。学会はこの分野の研究を倦むことなく行い、この分野に関する専門知識のある専門機関は律儀に相談に応じています。CQIフェローのJohn Seddon は、科学的なアプローチで公共サービスを提供できるよう政府や公共部門を手助けすることを自身の使命としています。

科学的アプローチ

また、政府の政策を実現するために役立つと思われる、私自身の提案も提示しましょう。まず、これらの提案は、下院と貴族院の議員に向けて「初任者 on-boarding」教育の形で行われ、投票プロセスの前にすべての議員が完了することができるようにします。

    • 根本原因分析と問題解決 - 選出された議員は、さまざまなレベルの複雑な問題に対処しなければなりません。問題を構造的に考える方法を身に付けることで、より良い結果を得ることができます。
    • システム思考 - システム思考を理解することは、下院と貴族院の両方が現在の問題について考える際に役立ちます。さらに、新たな政策の意図の意味をデザインして考えることができ、リスクに後から対処するのではなく、リスクを予防することにもつながります。
    • 戦略の展開 - 意図を実現することは困難ですが、政府省庁、地方自治体、産業界、規制当局の複雑なエコシステムの中で、戦略をどのように展開できるかを理解することは、下院議員や貴族院議員が内閣の最初のブリーフィングを受ける際に役立ちます。


私の最後の提案は、政府が公務員に必要とされる職務リストに品質マネジメントを加えるということです。 すでに多くのCQIメンバーが政府内で素晴らしい仕事をしており、政策展開やパフォーマンスの改善を促進したり、部門の同僚にシステム思考のスキルを伝授したりしています。このような人々が評価され、リーダーシップを発揮することができれば、クオリティは重要な役割を果たすことができます。

システム思考と戦略展開なくして、英国のネットゼロの目標やその他の持続可能な未来に不可欠な政策について、政府が目標を達成できないことは明らかです。 このことは、品質マネジメントが持続可能性において重要な役割を果たし、製品、人々、地球の改善に影響を与えることを示しています。これは、11月8日から12日まで開催されるCQIの「ワールド・クオリティ・ウィーク」の今年のテーマでもあります。

※IRCAの各詳細は下記よりご確認頂けます。

CQI レポート The Future of Work 未来の働き方
IRCAテクニカルレポート:ISO22000:2018