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トヨタの変化するビジネスモデル: 自動車製造から持続可能なモビリティへ

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トヨタの変化するビジネスモデル: 自動車製造から持続可能なモビリティへ

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 Vince Desmond
 CEO, CQI|IRCA
 Wednsday, 9 November, 2021
 英語原文はこちら

今日、多くの人がトヨタという企業と持続可能性を結びつけて考えていますが、その理由の一つは、同社のハイブリッド車「プリウス」が広く普及していることにあります。2021年のワールド・クオリティ・ウィークにあたり、CQIのCEOであるVince Desmond は、今年のテーマである「持続可能性:私たちの製品、人、そして地球をよりよくしていくために」とCQIの「クオリティ4.0」の原則が、品質マネジメントを顧客と社会のための価値創造に結びつける例として、トヨタのビジネスモデルの進化に注目しています。

欧州品質機構 (EOQ) は最近、世界中の他の品質関係の団体との関わりを深めるための活動の一環として、日本科学技術連盟 (日科技連 JUSE) と素晴らしいイベントを開催しましたこのブログでは、持続可能性というワールド・クオリティ・ウィークのテーマと非常にマッチするトヨタのビジネスモデルの進化と、CQIがクオリティ4.0で行っている研究との関連を探っていきたいと思います。

変化の原動力

トヨタのビジネスモデルの進化について概説する前に、日科技連がクオリティの2つの主要な推進力を考慮していることは注目に値します。1つはデジタルトランスフォーメーション、これには品質管理がデジタルに対応するために必要となる新しいスキルも含まれます。そして国連の持続可能な開発目標であり、社会と顧客の価値を高めるためには、これを組織マネジメントシステムに組み込む必要があると日科技連は考えています。

それでは、未来に向け変化を続けるトヨタのビジネスモデルを見ていきましょう。

トヨタのビジネスモデルの進化

1990年代まで–社会と顧客は別物

トヨタにとって社会的価値は常に重要でした。しかし、当初は、社会的価値と高品質の車を手頃な価格で販売することで顧客に価値を創造することとは別のものと見なされていました。この文脈において、経営者の役割は、顧客のための価値の創造と社会的価値の創造のバランスを取ることでした。

トヨタが顧客と製品の品質に注力していることはこのブログで説明するまでもありませんが、トヨタがもともと、トヨタ財団やオリンピックなどの活動への財政支援を通じて、製品/顧客とはまったく別に社会的価値を創造していたことは特筆に値します。これは当時一般的だった、通常の活動に追加して実施するCSRのアプローチです。

1990年代のシフト–社会と顧客を組み合わせる

1990年代の金融危機により、日本社会ではその価値観が再検討されました。トヨタは、金融危機の教訓を得て、自動車業界が環境への悪影響のために悪者扱いされる未来を見通し、現在の排出基準をはるかに超える性能を発揮する自動車が必要であると考えました。生き残るために、順守するだけでなく、変革していく必要があると考えたのです。これが1997年のプリウスの販売へとつながりました。トヨタは資源やエネルギーの無駄遣いに対峙するために、社会的価値と商品的価値を初めて融合させたのです。その後、トヨタは改善のノウハウを駆使して、社会に対する環境性能とお客様に対する走行性能の両方を向上させてきました。

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2010年のリコール–信頼と透明性の課題

アクセルペダルの問題に関連した米国での一連のリコールから得られた大きな教訓は、トヨタが変化する顧客の期待を把握しておらず、タイムリーな情報を提供していなかったことです。インターネットは、大規模な情報共有のためのプラットフォームに成長しましたが、情報の質には大きなばらつきも生じました。トヨタは、信頼を取り戻すためには情報提供のスピードと透明性を高める必要があると認識し、「安心・安全」と「信頼性」に重点を置いて取り組みました。

未来–自動車の製造からモビリティの提供へ

現在、世界の自動車業界では、お客様や社会からの期待が次々と変化しており、その結果、トヨタの価値創造の考え方は、お客様のためのクルマづくりから、社会のためのアクセス可能で持続可能なモビリティの提供へと変わってきています。

つまり、トヨタが「クラスで一番」から「街で一番」になるためには、カーシェアリング、脱炭素、ユーザー補助、利便性、自律性などのコンセプトに注力する必要があるということです。そのために、ソフトバンクとの自律型公共交通機関の研究など、非常に複雑なエンド・ツー・エンドのバリューチェーンの中での協力関係を重視し、トヨタ財団を活用して研究に資金を提供したり、将来のビジョンを支えるスタートアップ企業を支援しています。

テクノロジー、持続可能性、そして品質マネジメント

先日のANQ (Asian Network for Quality) の会議でクオリティ 4.0と我々が生きるVUCA(Volatility 変動性、Uncertainess 不確実性、Complex 複雑性、 Ambiguity 曖昧性)の世界との関連性について尋ねられました。私が思ったのは、トヨタの来た道とこれからの歩みは、CQI のクオリティ4.0の原則と今年のワールド・クオリティ・ウィークのテーマである「Sustainability: improving our products, people and planet 持続可能性: 私たちの製品、人々、そして地球をよりよくしていくために」が、複雑な技術環境の中でお客様と社会のために価値を創造することと品質マネジメントをいかに結びつけるかを、明確に示しているということです。

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