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気候変動を審査する

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気候変動を審査する

quality.org の英語原文記事はこちら

Kingsford Consultancy Services社の創業者兼オーナーであるリチャード・グリーンが、気候変動に関するISO マネジメントシステム規格の修正が審査員/監査員に及ぼす影響について考察します。

修正の背景

2021年9月のロンドン宣言は、気候変動の影響に対するネットゼロアジェンダを支援するために、国際標準化機構 (ISO) や他の同様の関係組織が協調して出したものです。この宣言に基づき、2024年2月に30以上のマネジメントシステム規格に修正が導入されました。この修正により、組織は、組織の状況を決定するプロセスにおいて、気候への配慮を具体的に考慮することが求められるようになりました。

影響を受ける規格には、CQI and IRCAトレーニングコースの大部分を支える規格、つまりISO 9001、ISO 14001、ISO 45001、ISO/IEC 27001、ISO 22000 などが含まれており、各規格の更新版は、発行後直ちに各規格の最新版に取って代わります。

したがって、CQI and IRCA の承認されたトレーニングパートナー機関 (ATP) とその受講者は、変更の性質とその影響を認識することが重要です。

この2024年の修正には2つの要素があります。1つ目は、箇条 4.1にさらなる要求事項が組み込まれたということです。2つ目は、箇条4.2「利害関係者のニーズ及び期待の理解」に、明確化のため、新しい注記が付されたということです。

箇条 4.1

今や、組織が「その目的に関連し、XXXマネジメントシステムの意図した結果を達成する能力に影響を与える外部及び内部の課題を明確にする」場合、気候変動がこれらの関連する課題の1つであるかどうかを具体的に判断することが明示的に求められています。

これは要求事項であるため、認証を取得している組織は、この決定が下されたという客観的な証拠を審査員が要求することを想定する必要があり、組織は客観的証拠を提供しなければなりません。

箇条 4.2

「利害関係者のニーズ及び期待の理解」という点でここでのアプローチは少し異なります。組織に対する要求事項は、依然として、密接に関連する利害関係者の関連する要求事項を明確にし、これらの関連する要求事項のどれをXXXマネジメントシステムを通じて対処するかを決定するということで変更はありません。しかし、今は、関連する利害関係者の一部が「気候変動に関連する要求事項を持つ可能性がある」ということを注記として付され、組織と審査プロセスに従事する人々双方に対して注意喚起しています。

認証取得組織への影響

2024年の修正では、箇条4.1または4.2の全体的な意図は変更されていません。この修正は、組織が自らが活動する環境をより広く捉え、これがXXXマネジメントシステムにどのように影響するか、そしてシステムが何を達成しようとしているのかについて組織に考えさせることに重点を置いています。

政治、経済、社会、技術、法律、環境 (PESTLE) 分析または同様の手法をすでに採用している組織は、すでに必要な決定に着手している可能性が高く、意図した結果を達成する上で気候変動が関連する課題としてこの方法や他の方法によって特定されている場合を除き、気候変動の取組みを導入する必要はありません。

現実的な観点からは、組織は必要な決定を実行し、XXXマネジメントシステムとその意図した結果に影響を与える気候変動の課題がないと結論付けることは難しいと感じるかもしれません。XXXマネジメントシステムを更新する必要があると決定した組織については、箇条6.1の要求事項に対処するために現在適用されているものと同じプロセスを使用して、新しい要求事項から生じるリスクと機会に対処するために必要な処置や、これらの処置を実施しレビューする手段を特定することができます。

2024年の修正の影響は、以前に決定を行ったものの、その後、課題があるという結果に基づいて行動しないことを選択した認証取得組織、または関連する利害関係者をなだめるために形ばかりの処置を導入した組織にとって最も大きくなるでしょう。以前は、審査員は、組織の状況に関する議論に気候への配慮を持ち込むことを覚えておく必要がありました。

現在、これが新しい明示的な要求事項となった結果、このような考慮事項が「前面に出て、中心に置かれる」可能性がはるかに高くなっています。これらの組織がこの要求事項に準拠するために必要な作業量は、以下に限定するわけではありませんが、その規模、複雑さ、製品及び/またはサービスの範囲、生産方法、産業部門など、多くの要因によって異なります。作業負荷が大きくなる組織もあるでしょう。

審査に際して

審査中、組織は、新しい要求事項が満たされているかどうかの判断において、審査員が客観的かつ公平であり続けるよう期待しましょう。審査員は、気候変動の専門家や警察官になることを期待されているわけではありませんが、組織は、当然ながら、審査員が有能であるという期待を持ち続けるはずです。

これは、審査員は、審査対象の組織が導入している気候関連の取組みの程度と複雑さに応じて、知識または理解を改善する必要があるということを意味します。

同様に、組織が気候変動は関連する課題であると判断し、その結果、XXXマネジメントシステムを変更した場合、審査プログラムをマネジメントする人は、審査チームの構成に配慮する必要があります。もちろん、これには、組織の第一者 (内部) 監査のプログラムのマネジメントを担当する組織内の人も含まれます。

これは新しい要求事項ではなく、審査チームが審査を実施するために必要な力量を全体として持っている必要があるということを単に再述しています。

ISO とIAFの有志が構成する ISO 9001 Auditing Practices Groupは、ISO 9001の気候変動問題の審査に役立つガイダンスを作成しました。これは、審査の実施責任者と審査サービスを受ける人に関連したものです。また、ISO9001以外のISOマネジメントシステムの認証を取得している組織にとっても役立ちます。

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