IRCA-マネジメントシステム審査員/監査員の国際登録機関 > 情報メディア > ソートリーダーシップ > 価値を付加するプロジェクト監査とは

価値を付加するプロジェクト監査とは

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
価値を付加するプロジェクト監査とは

>quality.org の英文記事はこちら

本記事の著者でプロジェクトコンサルタントであるLesley Elder-Aznar氏が、プロジェクト監査で最も犯しがちな間違いを概説し、落とし穴にはまるのを回避する方法をアドバイスします。

変化する監査員像

監査員に対して従来ありがちだったイメージは、クリップボードと長いチェックリストを持ち、数値は合っているか、そして規則や規制を遵守しているか(またはしてないか)を確認することに重点を置いているというものでした。

しかし、クオリティの部門で働く人々に求められる仕事の内容は変化しており、監査や保証のプロセスを通じて価値を高める必要性がますます高まってきています。顧客はより深い洞察を求め、場合によっては監査員に解決策や提言を求めるようになっています。

プロジェクトマネジメントの世界では、まさにそうなってきています。技術革新のスピード、新型コロナウイルス感染症の大流行、グローバルな政治経済の変化、さらに英国においてはBrexitなどにより、組織はこれまで以上に迅速に変化を進めることを余儀なくされています。

プロジェクト監査のベストプラクティスとは

大規模で複雑なプロジェクトや変革のプログラムは、ビジネスのあらゆる領域に影響を及ぼします。よくあるのは、コミュニケーションの失敗により、組織の同じ部分に同時に変化が起きたり、互いに矛盾が発生したりすることです。そうなっては必然的に、従業員や顧客が混乱し、新しいプロセスが採用されず、効率が低下し、何百万ポンドもの投資が無駄になってしまいます。

このように大規模な変革プログラムやプロジェクトの増加に伴い、それを監査する人材も必要になってきています。プロジェクトやプロジェクトのポートフォリオを監査するためには、その分野での経験が必要であり、少なくともプロジェクトマネジメントのベストプラクティスを理解している必要があります。このような知識を持ち、かつ監査のスキルを持つ人は、本当に希少な存在です。

そのため、監査及び保証の業務に携わる者には、より高度な対応が必要になる可能性があります。プロジェクト監査によって価値を付加するには、単にプロジェクトが予算内に収まっているか、計画があるかを確認するだけでは足りません。本当に価値を高めるためには、監査員は、組織の文脈でプロジェクトを見、プロジェクトが意図した成果を実現するかどうかを見なければなりません。

関連記事
> 石油・ガス産業におけるプロジェクトマネジメントのケーススタディ
> ISO21500 におけるプロジェクトマネジメントとは
> IRCA登録審査員 榎本徹さんの ISO21500プロジェクトマネジメント関連書籍の紹介

プロジェクトでありがちな5つの失敗

ここでは、プロジェクト監査を行う場合に気をつけるべき、よくある5つのプロジェクトミスを紹介します。

  1. プロジェクトが事業全体の戦略と整合していない

    正式なプロジェクト選択プロセスや選択基準がない可能性がある。ペットプロジェクト (ある人が固執しているプロジェクト) は、全体的な戦略との整合性を十分に考慮することなく、上級管理者によって開始される。
    処置:プロジェクトガバナンスのフレームワークとプロジェクトの選択基準を確認するよう求める。

  2. ITプロジェクトが効果を上げられない

    ユーザーや顧客のニーズを考慮せずにシステムが計画され、実施されている。ユーザーを巻き込んだり、ソリューションの開発に参加させるための変更管理の計画がない。ユーザーの採用率が低く、ビジネスケースのメリットが実現されていない。
    処置:実施計画書または変更管理計画書の写しを要求する。

  3. 組織内に変革をサポートする余裕がない

    人事やリスクなどの専門チームはすでに手一杯で、プロジェクトに取り組むためのリソースを確保できない。運用チームは多くの場合、ほとんどのチームよりも大きな影響を受けており、また現行のプロセスやシステムに関する専門知識を提供し、ユーザーテストやトレーニングをサポートするよう求められている。プロジェクトのビジネスケースに追加リソースが計上されない限り、複数のプロジェクトをサポートするのに十分なキャパシティがあるとは思えない。
    処置:プロジェクトのリソースプランと、計画されているすべてのプロジェクト実施を示す組織変更ロードマップを求める。

  4. 変革疲れ

    パンデミックに対応して複数の変革を同時に行っている多くの組織にとって、これはより差し迫った問題になっている。リモートワークやオンラインビジネスの必要性、そしてテクノロジーの変化のスピードがますます速くなっていることから、変化に対する疲労感が増している。社員が変化を吸収し、処理し、適用するためには時間が必要となる。不適切に計画され実施された変化の結果、職場のストレス、燃え尽き症候群、消耗する従業員が増加している。
    処置:従業員のエンゲージメントやモチベーションに関する調査の結果を確認し、影響を受けた従業員と話し合う。

  5. 一貫性のないプロジェクト文書

    プロジェクト文書は一貫したストーリーを伝えるべきものである。ビジネスケースからプロジェクト開始文書、要求事項文書、プロジェクト計画、予算計画に至るまで、財務、日程、スコープ、リソース要件は一貫している必要がある。これらのいずれかに著しい変更がある場合は、承認された変更要求書でサポートする必要がある。
    処置:書類を確認し、矛盾があれば説明を求める。

以上は、今日のプロジェクトマネジメントにおける最も一般的な問題について、俯瞰的に考察したものです。組織の変化のスピードは衰えることを知らず、プロジェクトやプロジェクトポートフォリオをより深く検証できる監査員の必要性は、ますます価値が高まり、求められるスキルとなっていくことでしょう。

CQI レポート The Future of Work 未来の働き方
IRCAテクニカルレポート:ISO22000:2018