チャットGPTを使ってみましたー実践編 1
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UnsplashのSanket Mishraが撮影した写真
本稿の「まえがき」では、チャットGPTを使ってみて考察した全般的な所感を述べた。以下「実践編 1」では、実際にチャットGPTを使ってISOのマネジメントシステム標準について相和した結果の一部を紹介する。このチャット内容は一見するとチャットGPTがどう考えているかを調べた結果に見えるが、チャットGPTはあくまで公知文献を検索してアルゴリズムに基づき一定の文章にしたものである。前に述べたようにその判断は保証されているものでない。
4.ISOのマネジメントシステムについてのチャット
4.1 基本的な事項についてのAIの認識確認
ISOのマネジメントシステムについて知るためには、まずISOという機関について理解しておくことが大切である。そこで最初にチャットGPTが機関としてのISOをどの程度理解をしているか知ることを目的に対話を行った。
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「いつできたのですか」という質問は時代背景を知るための質問であったが、創立年月日を答えるだけでなく、質問の意図を察して概要まで答えてくれている。ただし、なぜ必要だったのかまでは言及していない。
4.2 追確認の反応状況
工業標準化法がJISによって鉱工業品の標準化を進めると共に「鉱工業品の品質の改善、生産能率の増進その他生産の合理化」を目的としていたことを念頭に、ISOの設立目的の情報を確認するために質問を続けた。
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そのため、ISOは、世界中の国々が共通の基準や要件を使用することにより、製品、サービス、システムなどを評価し、交換可能にすることを目的として設立されました。このように、ISOは国際貿易の促進に役立ち、製品やサービスの品質を改善し、消費者保護を促進することができました。
一般的な国際標準の解説としては分かるが、1947年という第二次大戦からの戦後復興の時期の説明としては国際的な貿易の増加を挙げている。違和感があるので更に追加質問を行った。
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ただし、ISOの設立には、第二次世界大戦後の国際的な取引が増加に対し、異なる国々が使用するさまざまな標準や要件によって貿易が妨げられていたという背景があります。したがって、ISOが設立された目的は、各国が共通の基準や要件に基づいて製品、サービス、システムなどを設計、開発、評価することを支援することであり、このような国際的な貿易の障壁を取り除くことが含まれています。
つまり、ISOは、国際貿易が増加する前から、国際的な取引における標準化の必要性を認識していたということになります。再度、おっしゃっていただいたことに感謝いたします。
回答に見られるように、チャットGPTは意見を修正することには積極的で、人間であれば自分の言い出したことに拘ったりメンツを保とうとして言い訳を挟んで来たりすることがないことが分かった。そこでもう一段、明確化を試みる質問を行ってみた。
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国際標準によって、各国が製品やサービスの品質を統一的に評価することができるようになり、それによって国際貿易が円滑に行われることが期待されること、製品やサービスに対する技術的な規格の国際標準化によって競争が促進され、技術的な進歩が期待されることなど、ISO設立当初の狙いを説明すると共に、国際的な貿易の増加によって国際標準の重要性がますます高まってきて、現在では、国際標準の重要性はますます高まり、多くの企業や産業界にとって、欠かせないものとなっていることなど国際標準の進展の説明があった。ISO創立の背景として国際的な標準化の必要性を説明しており、工業標準化法のような産業奨励の影はないことが確認された。
しつこい質問にも相手がコンピュータアルゴリズムであるからいやな気配を見せてこない。当初の回答に違和感があればしつこくても遠慮なく質問を繰り返してチャットをすることがAI相手だからこそ容易にできると感じられた。
4.3 「品質保証」に関する日英の言語文化の違いについてのチャット
次に、ISO9000:2015の3.3.6が定義する「品質要求事項が満たされるという確信を与えることに焦点を合わせた品質マネジメントの一部」という品質保証の定義を分かりやすくするために、「満たされる」という英語の現在形に着目をして質問を行った。
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上のチャットからはチャットGPTは日本で言う品質保証は品質管理の結果としての事柄と考えているようで、敢えて確認はしなかったが、日本の「品質保証」の質問に対して「品質管理」に置き直して回答をしているようである。
言語にはそれぞれの言語が抱えている言語文化の違いがあるが、英語で書かれているISO標準を理解するためには英語の言語文化で考えることが必要である。このため、ISO9001を翻訳したJIS Q9001の冒頭に「この規格は,2015 年に第5 版として発行されたISO 9001 を基に,技術的内容及び構成を変更することなく作成した日本工業規格である」という注釈を載せている。このことを念頭に、チャットを続けた。
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戦後生まれた工業標準化法によって生まれたJIS規格が産業奨励の性格も持っていたために、一部にはISO標準も同様に考えている向きもあるようであるが、チャットGPTはそのようなバイアスを受けない回答をしてきた。
4.4 2015年版で「品質マニュアル」の言及がなくなったことの説明に見られる曖昧性
ISO9001:2015ではそれまで要求に含まれていた「品質マニュアル」の言及がなくなったが、これをどう説明するか質問をした。
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また、品質マニュアルが必須であった過去においても、品質マニュアルを作成すること自体がくびきであるわけではありませんでした。品質マニュアルは、品質マネジメントシステムの構築において、重要な役割を果たす一つのツールに過ぎません。そのため、品質マニュアルが不要となった今日においても、組織は、適切な文書を作成し、適切に維持することが求められます。
したがって、組織は、自己の要件や目的に応じて、必要な文書を作成し、適切に維持することが重要であり、品質マニュアルが不要となったことが、品質マネジメントシステムの文書化において完全に自由を与えるものではないと言えます。
「2015年版では、品質マニュアルそのものが必須ではなくなった」と言いながら、「品質マネジメントシステムに関する情報を適切に文書化することが引き続き求められる」と言うことが回答を曖昧にしていると感じられる。「品質マニュアルが不要となった今日においても、組織は、適切な文書を作成し、適切に維持することが求められます」と言うことをさらに明瞭にしたいと考えてチャットを継続した。
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あくまで品質マネジメントシステムの文書の一つとして位置づけられます。品質マニュアルは、品質マネジメントシステム全体の概要を提供するものであり、顧客や関係者に品質マネジメントシステムの概要を示す際に使用されることがあります。
ただし、品質マニュアルが必要であるというわけではなく、組織は、品質マネジメントシステムの概要を示すために、品質マニュアルを使用する必要はありません。組織は、その他の文書やツールを使用して、品質マネジメントシステムの概要を示すこともできます。
「品質マニュアル」という呼び名を用いることを止めただけで、要求していることは変わりがないのですよね」という意味の意見を使ってイエス/ノーを迫る質問をした結果、イエスを確認できた。こちらの意見を用いた質問を使うことも有効だと確認した。ただ、チャットGPTは「品質マニュアル」を定型的な文書と考えている節があり、ISOの標準文書だけでなく一部の解説書の影響を受けて回答しているのではないかと考えた。ISO9001:2015で品質マニュアルという言葉を使うことを止めた原因でもあるのかも知れない。ただ、イエスの回答が得られたのでこのチャットはこれ以上続けなかった。