ISO 10015 - 品質マネジメント – 力量マネジメント及び人材育成のための指針
2019年11月にFDISが承認された記事をお伝えしたISO 10015 – Quality management – Guidelines for competence management and people development が2019年12月に発行されました。これはISO 10015:1999 – Quality management – Guideline for training の改訂版であり、改訂の経緯やどのような違いがあるかなどについてお伝えします。
組織の製造プロセスがどれほど適切に設計されていたとしても、製造に使用される原料の品質、あるいは新しい技術への投資の程度、適合した製品及びサービスを一貫して提供し、顧客満足を高める能力は、力量ある要員を雇用できるかどうかに大きく依存しています。
ISO/IEC 専門業務用指針 附属書L (旧附属書SL) の Appendix 2 には力量に関するISO の定義が掲載されています。この定義では、力量をもつ個人であるということは、「意図した結果を達成するために、知識と技能を適用する能力」をもっていなければならないと定めています。この定義は重要です。なぜなら、力量をもつということは、単に何をしなければならないかを知っているだけでは十分ではなく、要求される結果を達成するためには具体的に何をすべきかを知り、実現する能力がなければならないからです。
組織のパフォーマンスは、人々の力量を業務にどのように生かすかにかかっています。組織が成功するためには、組織、チームやグループ、そして個人のレベルにおける力量マネジメントと人材の育成が必要であるというのは周知の事実です。
これに基づき、ISO において品質マネジメントと品質保証を担当する技術委員会 ISO/TC 176で支援技術を担当する小委員会 SC 3が人材マネジメント担当のISO/TC 260と共同で、『ISO 10015:1999 – Quality management – Guidelines for training 品質マネジメント – 教育訓練の指針』を『ISO 10015 – Quality management – Guidelines for competence management and people development 品質マネジメント – 力量マネジメント及び人材育成のための指針』として改訂しました。
力量マネジメントと人材育成は明らかに関連があります。人材育成は力量マネジメントの一部であり、力量のある人材は育成を必要としています。したがって、これら2つの要素は、いろいろな意味で分かちがたく相互に関連しています。
ISO 10015は組織とその人員が力量マネジメント及び人材育成に関する問題に対応する際の手引きを提供しています。品質マネジメントシステムのISO 9000ファミリー規格、または、例えばリスクマネジメントや環境マネジメントなど、その他のマネジメントシステム規格において有能な/育成された人材が言及され、それを解釈する際に手引きが必要であれば、いつでもISO 10015を利用することができます。
ISO 10015 は、おなじみのPlan、Do、Check、ActのPDCAサイクルに基づいています。Plan の段階では、組織はまず力量のニーズを特定します。ニーズの決定は、組織の使命、ビジョン、価値観及び文化、人口動態の変化、経済的、政治的あるいは社会的な変化、新しい製品あるいはサービス導入の予定、法令規制要求事項の変化、新たに出現した知識、利害関係者の新たなあるいは変化する期待を決定あるいは予想するための市場調査、技術の進歩、利害関係者のニーズ及び期待の変化に基づき行われるべきでしょう。それから、足りない力量を評価し、力量開発の計画を策定します。
次に、Doでは、組織は育成の年プログラムを策定し、リスクに基づくアプローチを用いて育成活動を実施します。つまり、もっとも必要なところの人材育成に注力するということです。Check は、期待される成果を確実に達成するための力量のニーズに対する育成活動の監視及び評価であり、これに対し、Act のフェーズでは、組織は育成活動の改善だけでなく、さらなる育成のニーズを特定します。
これらのPDCAの活動すべてを組織、チームやグループと個人のレベルで、あらかじめ定められた間隔で実施し、力量マネジメントと人材育成を実施する役割及び責任を割り当てる必要があります。
ISO 10015の箇条5.1は、ISO 10018 – Quality management – Guidelines on people involvement and competence に直接、関連しています。5.1では、人々が力量を向上させ個人の育成目標に対処できるよう、組織が支援することができれば、人々がより積極的に関与し、より効果的なクオリティの文化に貢献できると喚起しています。
2019年9月、国際規格最終案 (FDIS) 10015が投票のために国家規格機関に配布され、2019年11月、全員一致でFDIS が承認され登録されました。そして12月に国際規格として発行されました。
この規格は大変短いもので、たったの8ページしかありませんが、次のような重要なメッセージを伝えています。力量マネジメントと人材育成に、計画され、体系だったプロセスを適用することにより、組織は組織自体の能力を向上させ、戦略的方向性に沿って、意図した結果を達成するために役立てることができます。
したがって、力量マネジメントは組織が価値を創造し、提供する能力を高めるために非常に重要であり、すべての組織が力量マネジメントを活用すべきであると言えます。