IRCA-マネジメントシステム審査員/監査員の国際登録機関 > 情報メディア > ソートリーダーシップ > 隠された次元を探る - パート4 - 品質文化の触媒

隠された次元を探る - パート4 - 品質文化の触媒

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
隠された次元を探る - パート4 - 品質文化の触媒

quality.org の英語原文記事はこちら

パート1パート2及びパート3から引き続き、IRCA登録 Associate Auditor で国際プロジェクト品質リーダーのラスール・アイヴァジ (Rasoul Aivazi) と引退した監査員のリチャード・ブレット (Richard Brett) が、品質には日本の哲学がいかに内在しているかを探ります。

日本在住のアイヴァジ氏はCQI Audit SIGのメンバ-であり、ブレット氏は以前GSKで Japan Quality SMEと監査マネージャーを務め、現在はAudit SIGの副委員長として活躍しています。

このシリーズのパート3では、日本の品質の評判に大きく貢献している10の概念のうち、5つの概念を紹介しました。このパートでは、残る5つの概念、「Gaman 我慢」、「Dai-ichi-inshou 第一印象」、「Dandori-hachi-bu 段取り八分」、「Omotenashi おもてなし」、「Hōsō 包装」をさらに掘り下げていきます。

日本の品質を形作る10の概念 (続き)

6. 忍耐力と持続力を養う

日本語の Gaman (我慢) という言葉は、忍耐力と持続力を養うという考え方に関連する重要な概念です。また、日本の文化的価値観である「我慢」は、resilience (回復力) やtolerance (寛容さ) も表しています。

この価値観は、挫折に直面しても立ち直る力を養うものであり、日本の職業環境を生き抜くために不可欠なものです。クオリティプロフェッショナルが我慢を身に付ければ、特に困難な状況下でも持続的な成功につながる可能性があります。

我慢は苦難に耐え、自制し、耐え忍び、不平を言わずに取り組むという考えを体現しています。これは、ストイックさ、自制心、そして長期的な視野を重視する日本文化の本質的な部分です。

もう一つの関連する言葉はNintai (忍耐) であり、これはendurance (持久力) の概念と強く結びついています。これは我慢と似た意味合いを持っていますが、困難に耐え、長期にわたって努力し続ける能力を表します。

3つ目の言葉はNebari Zuyoi (粘り強い) です。これは tenacious (粘り強い、強固な) や persistent (しつこい、持続する) と翻訳できます。簡単にはあきらめない、強い忍耐力や根気強さを持つ人やものを表す言葉です。

製造業の文脈では、粘り強いは長期間にわたる応力、ひずみ、または摩耗に耐える素材や製品の品質を指す場合があります。これは、その素材や製品が高い耐久性を持ち、厳しい条件下でもその性能や完全性を維持できることを意味します。この特性は、最終製品の寿命と信頼性を保証するため、製造業では望ましいとされることが多いです。

忍耐と粘り強さという価値観は日本文化に深く根付いており、個人の行動、職業上の慣行、社会規範に影響を与えています。

7. 第一印象を活かす

日本では、Dai-ichi-inshou (第一印象) が大切だと言われています。

生まれ持った資質を十分に考慮する必要はありますが、外見に気を配ることの重要性も無視すべきではありません。従業員、職場環境、製品の最高の姿を見せることで、新たなビジネスチャンスの扉が開かれ、信頼関係を築き、長期的なビジネスパートナーシップにつながる理想的なイメージを作り上げることができます。外側のパッケージの品質を保証することで、中身の製品の品質について顧客に安心させることができます。

8. 準備/ 事前計画の重要性に気づく

Dandori hachi-bu, shigoto ni-bu (段取り八分、仕事二分) という日本のことわざは、仕事を始める前に綿密な計画を立て、整理整頓することの重要性を強調しており、準備と実際の作業は 80:20 の比率で行う必要があるとされています。

十分な時間をかけて入念に準備することで、実行段階はより合理化され、効率的になります。仕事の進捗状況を心配するだけでなく、十分な準備を整え、準備段階に十分なリソースを割り当てることの重要性を考えることは有益です。

9. 顧客価値の向上

Omotenashi (おもてなし) とは基本的に、hospitaliby (もてなし) と service (サービス) として定義されています。この表現は、日本的なサービスはお客様を喜ばせることに重点を置き、サービスは心のこもったものでなければならないということを表しています。

「おもてなし」の概念は、上質で心のこもったサービスで顧客満足度を高めることに重点を置いています。思いやりと真の配慮をもって顧客に接することで、顧客はおもてなしの真心を実感できるだけでなく、相手が自分の義務を喜んで果たしていることが示されることにより、ビジネス協力に不可欠な健全で長続きする共生関係を築くことができます。

10. 包装とラッピング

パッケージ、つまり Hōsō (包装) は、製品のマーケティングや販売促進において、常に重要な役割を果たしてきました。しかし、日本のクオリティでは日本的な観点からパッケージが重要視されています。なぜなら、日本においてパッケージとはその機能的な目的を超え、細部へのこだわりと卓越性へのコミットメントの哲学を体現しているからです。

日本では、パッケージは国の豊かな文化遺産を反映する一種の芸術です。伝統的な模様やシンボル、色彩がパッケージデザインに取り入れられることも多く、日本の歴史や伝統を視覚的に表現しています。この伝統との結びつきは、製品に本物らしさと価値を植え付けるのに役立ちます。

日本のパッケージは、顧客体験を念頭に置いてデザインされています。製品を開けるときの期待感、興奮、喜びを生み出すことを目指しているのです。複雑な折りの技術、エレガントな素材、思慮深い見せ方は、顧客体験全体に付加価値を与え、より記憶に残る楽しいものにします。

日本における包装は、美観だけでなく、製品の完全性と安全性を確保することも目的としています。クオリティに重点を置いた日本のパッケージは、破損、汚染、改ざんから製品を守るように設計されています。このような製品安全への取り組みが、日本製品の信頼性と信用性を高めてきました。

日本のパッケージは、製品情報を明確かつ簡潔に伝えることを優先しています。日本のパッケージは、原材料や栄養成分表示から使用方法、賞味期限に至るまで、消費者に必要な情報をすべて視覚に訴える形で提供することを目指しています。このような細部への配慮は、ブランドと消費者の間に信頼と透明性を築くのに役立ちます。

近年、日本では持続可能なパッケージへの注目が高まっています。環境問題への意識が高まる中、日本企業は包装廃棄物を減らし、環境に優しい代替品を推進する方法に積極的に取り組んでいます。この持続可能性へのコミットメントは、より環境に配慮した慣行へという世界的なシフトと一致しています。

まとめ

日本は多くの分野でその優れたクオリティにより世界的に名を馳せてきました。しかし、表面的な成功や卓越した職人技の裏には、上で説明したような文化的規範や価値観が複雑に織り込まれています。

ことわざにある諸刃の剣が保護する力と害する力の両方を持つように、こうした文化的側面には、それぞれの利点と潜在的な欠点があります。

一方では顧客、製品のクオリティ、継続的改善を優先し、他方では事業と従業員の福利厚生を優先するベストプラクティスを取り入れることで、組織は持続可能な成功を収めることができます。

この10種類の独特な文化的影響を理解することで、日本にいるクオリティプロフェッショナル、あるいは日本企業と交流をする人たちは、この独特な職場環境の中をうまく進んでいくことができます。

こうした文化的要素は、職業環境を豊かにするだけでなく、日本が誇る質の高いサービスや製品を生み出し、提供する上で重要な役割を果たしています。

この調査の核心は、日本における品質への無意識的な文化的影響が、単に基準を満たすことやベンチマークを超えることではなく、生活のあらゆる側面に浸透している精神 (エートス) にあるということを明らかにすることです。

このように、日本でクオリティプロフェッショナルとして成功するということは、単にその分野での熟練度だけでは足りません。それは、これらの文化的影響を深く理解し、自分の職業生活に統合するクオリティの文化を受け入れるということです。

クオリティ、調和、伝統の尊重、粘り強さを重視する環境を育むことで、クオリティプロフェッショナルや組織は、成功の原動力となる日本文化の隠れた側面を活用することができるようになります。このプロセスは、個人の専門的な成長を促進するだけでなく、日本で活動する組織の持続的な成功にも貢献します。

豊かな文化的影響と、絶え間ないクオリティの追求が相まって、日本ではクオリティプロフェッショナルとしての成果の達成のためのユニークな枠組みが提供されています。このような文化的影響を理解し受け入れることで、クオリティプロフェッショナルや組織は真に成長し、日本の代名詞である品質 (クオリティ) の連綿と続く物語に貢献することができるのです。

この議論は、2024年7月に掲載予定のこのシリーズのパート5に引き継がれ、文化的なクオリティと諸刃の剣という、国民的側面の隠された次元について探求していきます。

謝辞: 本シリーズのこのパートは、日本に在住しているか、日本について深く研究しているか、または日本国籍を持っている、リチャード・ブレット (Richard Brett) 氏、岩本博之氏、菅野亮氏、渡邉慎也氏、古賀稔広氏といった著名な国際的専門家のチームによるレビューとコメントを受けています。著者は、ご提供いただいた多大な貢献と専門知識に感謝し、心から敬意を表します。

関連キーワード

CQI レポート The Future of Work 未来の働き方
IRCAテクニカルレポート:ISO22000:2018