ISO規格と新たな世界の新たな試み
Alexander Woods
Policy Manager, CQI
Thursday, 15 April, 2021
英語原文はこちら
ISO規格と認証制度の来し方行く末
ISO規格はクオリティプロフェッショナルに人気がありますが、それには理由があります。ISO 規格は、世界中の組織に共通の構造、言語及びシステムを提供しています。これにより、国内及び国際的な取引の発展をサポートし、技術的及びコミュニケーション上の障壁や生産コストを削減しています。また、規格は働く人や消費者を保護します。しかし、現行の規格には限界があります。どのように使われるのかという傾向をつかむのは簡単ではありません。また、新しいテクノロジー、価値観、そして働き方は、標準化、認定、認証の確立されたモデルに疑問を突き付けています。
昨今、ISO 規格の認証への意欲が低下しているように思われるかもしれません。しかし、2020年9月に発表された ISO Survey によると、全世界では12種類のタイプ A (要求事項) のマネジメントシステム規格に対する有効な認証が1,357,241件あると報告されています。これは2018年の数値と比較するとわずかながら増加 (3.8%) しています。対して、2017年にはISOにより、1%の減少が報告されていました。
この情報は、認定された認証の状態の一瞬を切り取ったスナップ写真ではあるかもしれませんが、ISO 規格の認証に対する意欲の全体的な傾向に関して結論を出すことは難しいでしょう (マネジメントシステム規格の認証に関するISO Survey についてのCQI のコメントはこちらから)。
2020年のISO Survey では、すべてのISO規格で認証数の増加がみられましたが、有意な数を示したのは1つ (ISO 45001) だけでした。認証機関は、発行した認証書の数に関する情報を認定機関に報告しなければならないわけではありません。通常、認証数を多く報告する国である韓国、日本、トルコ、英国及び米国の大手の認証機関のいくつかは、報告しないことを選びました。そのため、これらの数字はISO マネジメントシステム規格に対する有効な認証の総数を反映していないと考えてよいかもしれません。
また、ISOが収集するデータを変更したため、認証の経年変化を理解するのがますます難しくなっています。ISO は2017年の調査から、有効な認証でカバーされるサイトの数 (これだと多少、鯖を読んだ数になるでしょう) ではなく、有効な認証自体の数を数えるようになりました。これにより、当然のことながら、報告された認証の数は大幅に減りました。この新しい指標は、ISO 規格の認証の利用状況を示す、より有効な指標ではありますが、長期的な傾向の分析については信頼性に欠けるものとなってしまいました。
変わりゆく世界とISO規格のこれから
しかしながら、規格策定者が直面している課題はもっと難問です。認定された認証のシステムを含む、ガバナンス、保証、改善のための現在のアプローチ自体が試されているのです。
- 将来のISO 9001を検討している規格策定者は 8つの「将来の品質のコンセプト (日本語記事)」を提示しています。
- ISO9004 (日本語記事)は早急に変更される可能性があり、ISO 9001の優位性が脅かされ、長年にわたって確立されてきた認定認証業界のモデルを破壊するかもしれません。
- 組織は、環境、社会、ガバナンス (ESG) (日本語記事) の要素により注力しています。
- デジタルトランスフォーメーションと私たちの働き方 (日本語版) の劇的な変化が急速に進んでいます。Quality 4.0 (この言葉はよく使われていますが、原則、概念、実践はまだ十分に、また皆に受け入れられる形で定義されていません) はさらなる混乱を招くことになるでしょう。
CQIは現在、Quality 4.0 (日本語記事)に対する独自の実際的な定義を定めようとしています。これを使って、クオリティプロフェッショナルの皆さんが未来の世界で成功するために必要となる実践とツールをさらに検討していきます。
このことが規格の将来に対してどのような意味をもつかはまだわかりません。しかし、CQI は以下を実施することで、これらの課題に焦点を当て、取り組み続けます。
- Quality 4.0 の定義を定める
- デジタル化された世界において、価値と持続可能性を推進する規格に貢献する
- アジャイルな対応が求められる現代のクオリティプロフェッショナルに必要な知識、スキル、価値を定義する
CQIは、ISOのみならずBSIなどの国家標準化団体と強いつながりを持っており、品質やマネジメントシステム監査の専門家にとって重要な規格の技術委員会にリエゾンの立場で参加しています。これにより、ISO規格の開発や改訂において、CQI は、メンバーの皆さんの意見を伝えることができるのです。