品質についての考察: 4つの名言と3つの都市ーロンドン、香港、東京
Vince Desmond
CEO, CQI IRCA
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CQI のCEO、ヴィンス・デズモンド (Vince Desmond) が、東京のIRCAジャパンと香港ブランチをこの4月に訪問したときのことを振り返ります。重要なポイントとして挙げられているのは、能力開発と学習をボランティアで献身的に主導するクオリティプロフェッショナルと会ったこと、異文化間のクオリティの捉え方、そしてデジタルのクオリティや持続可能なクオリティのアプローチがもたらすポジティブな影響などです。
2024年4月、私は新型コロナウイルス感染症のパンデミック以来初めて香港と東京を訪れました。ロンドンに戻ったいま、この旅を振り返ってみます。
クオリティプロフェッショナルについて
私がいつも驚かされるのは、他の人を成長させ、発展を助けようとするCQI IRCA メンバーの献身と情熱です。イアン・ストリーター (Ian Streeter) 氏はCQI IRCA香港ブランチ*を率いており、ブランチの委員会とともに、地元のメンバーがネットワークを構築し、学び、成長するためのハブを展開しています。2018年にCQIの国際クオリティ賞の新人賞 (Emerging Talent Award) を受賞したカルメン・チン (Carmen Chin) 氏を香港が輩出したことは驚くことではありません。
* CQIのブランチは、CQIやIRCAのメンバーたちが集まり、ボランティアで運営する各地の学習グループです。
東京では、CQI IRCAジャパンの登録者数が4,000人近くまで増え続けています。品質コミュニティ内で提供され、共有されているイベントやコンテンツの規模は目を見張るものがあります。 詳細については、IRCAジャパンのウェブサイトをご覧ください。
私はキング牧師のこの言葉を、彼らに、そしてCQI というグローバルな専門家組織で中核を担うボランティアとして活動する350人のメンバーに捧げます。
ヴィンス・デズモンド、CQI CEO
CQI の献身的なボランティアは、評議員会からブランチまで、またBSIやISOとの規格開発業務から研究やコンテンツの諮問委員会まで、あらゆることに携わっています。
新しい世界について
1932年にハクスリーが『すばらしい新世界 (Brave New World)』で描いた消費主義、テクノクラシー、全体主義、個人主義がもたらす影響に、100年近く経って私たちが直面していることを知ったら、自分がいかに先見の明があったか、ハクスリーはショックを受けるのではないでしょうか。
このような状況において、CQIは、組織や社会がリスクを軽減しながらデジタル技術から価値を引き出せるよう、品質コミュニティの役割を推進してきました。ですから、4月の訪問でデジタルのクオリティと持続可能なクオリティがトピックの上位に挙がったことは喜ばしいことでした。私は香港ブランチの皆さんと一緒に建設イノベーションセンターを訪問して、スマートヘルメットからデジタルツインまで、あらゆるもののクオリティへの影響を検討することができました。
日本では「Society 5.0」というコンセプトのもと、デジタルと持続可能性を融合させてきました。私は以前、このコンセプトを実践するトヨタの戦略について書いたことがあります。
今回の訪問で、私は香港と日本のCQIとIRCAのメンバーやパートナーに会いましたが、彼らはAIがどのようにマネジメントシステム監査をサポートし、実行できるかの調査から、国のAI規制の策定まで、さまざまなプロジェクトに取り組んでいます。これらすべてが知識体系に追加されて、その結果を見るのが楽しみです。
文化とクオリティについて
ソーシャルメディアやプロパガンダの猛攻撃によって私たちの世界観が縮小していくなか、この言葉はこれまで以上に私の心に響きます。日本と英国の2人のメンバーが、品質マネジメントへの取り組み方における国の文化の影響について、興味深い研究を進めています。これはこれ自体で興味深いことですが、私の考えでは、これは異文化間のクオリティについての有益な探求につながります。
これはまた、100カ国に広がる19,500人のメンバーで構成され、世界中にまたがるサプライチェーンで働く私たちのグローバルな存在感を反映しています。
ヴィンス・デズモンド、CQI CEO
各国民の態度や行動が、どのようにクオリティの管理や改善に影響するかを理解することは、役立つに違いありません。特に台湾、香港、日本のメンバー間のコミュニケーションが活発になってきているのを見られたのはうれしいことでした。
連携について
一方、私たちは品質コミュニティにとってのグローバルな課題を共有してきました。デジタルと持続可能性のトピックに加え、品質コミュニティは、品質マネジメントとクオリティプロフェッショナルの価値について、産業界と政策立案者への教育と情報提供を強化することを切望しています。進む高齢化や他の魅力的な新しい専門分野という脅威に直面する中、クオリティという職務を存続をさせるためには、新しい人材を惹きつけることが不可欠です。
一方で、世界の品質コミュニティには多くのプレーヤーがおり、ほとんどすべての国に品質団体が存在します。そして、多くの場合、それぞれ別々にこれらのテーマに取り組んでいます。私は、品質コミュニティ内での共有と連携に熱心に取り組んでいます。ですから、欧州品質組織 (European Organisation for Quality = EOQ)、アジア品質ネットワーク (Asian Network for Quality)、米国品質協会 (American Society for Quality = ASQ) などの組織が、新型コロナウイルス感染症のパンデミックから脱却し、連携に前向きになっているのを見ると勇気づけられます。
今回の訪問では、香港品質学会 (Hong Kong Society for Quality) の人とお会いし、日本科学技術連盟 (日科技連) と協力協定を結ぶことができたのはうれしい出来事でした。このことから何が生まれるのか、それをサポートし、見るのを楽しみにしています。
最後に、イアン・ストリーター氏と香港ブランチ委員会、台湾ブランチのジェフ・モンク (Jeff Monk) ブランチ委員長、そして私の来日をサポートしてくれた日本の八井晶世とそのチームに感謝します。