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マネジメントシステムアプローチで推進するSDGs: 「持続可能性、SR/SDGsアンケート」から見えて来るもの

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マネジメントシステムアプローチで推進するSDGs: 「持続可能性、SR/SDGsアンケート」から見えて来るもの

IRCAジャパンがメンバーの皆さんにご協力いただき、2021年3月に実施した「持続可能性、SR/SDGsアンケート」の結果から見えてきたのは、持続可能性とマネジメントシステム及びMS規格の関連性、そして持続可能性においてクオリティプロフェッショナルが果たす役割と力量に関する課題でした。

はじめに

持続可能性、sustainability はCQI|IRCA の2021年の大きなテーマのひとつであり、さまざまな議論の中にこの言葉が出てきます。IRCA ジャパンのメンバーグループであるリモート監査勉強会においても、「今後の世の中の変化を踏まえた、より広い視点からのリモート監査のあり方について議論をするためのブレインストーミングを行う」中から、持続可能性や企業の社会的責任、及びその評価をどのように行うのかという議論が出てきました。

>>持続可能性関連の記事

>>IRCAジャパン リモート監査勉強会 フェーズ1活動報告

今回のアンケート調査は、このリモート監査勉強会での議論を踏まえ、行われました。

アンケート結果概要

アンケート回答者の実に 69.94%の方が、「所属する組織では、持続可能性/サステナビリティや社会的責任、SDGs、ESGなどについての取り組みを行っていますか」という問いに「はい」と回答されており、関心の高さ、日本における取り組みの広がりが確認できました。特に従業員数が1,000人以上の企業に所属するメンバーについては、実に85.5%がこの問いに「はい」と回答されたほか、IRCAジャパンのOEA企業のうちご回答いただいた11社においては全社から「はい」という回答をいただいています。

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「指標として、どのような規格やベンチマークなどを用いていますか?」という問いについては、国連のグローバルコンパクトの原則や GRI (Global Reporting Initiative) ガイドラインなどのほか、多くの方がISO 9001、ISO 14001、ISO 45001、ISO 27001 などをはじめとするマネジメントシステム規格を挙げられており、マネジメントシステムに関わる職務に携わっているIRCAジャパンのメンバーの皆様が自らの職務/活動と持続可能性や社会的責任、SDGs、ESG、CSR などの取り組みとの結びつきを意識されていることが確認できました。持続可能性/SR/SDGsに関するその他のお考えを伺う最後の設問において、「目標設定した後のフィードバックと改善活動が目標達成に欠かせないと思います。その点でマネジメントシステムは有効です」という見解をお示しくださった方もいました。

また、持続可能性やCSR等に関しては、主として、環境や労働安全衛生の側面に焦点が当てられがちですが、品質の側面についても複数のコメントがあり、「使用している指標には、品質に関する事項も含まれていますか?」という問いに対しては、この設問の回答者の75%が「はい」と回答されています。今回の調査ではどのような形で品質が含まれているかまでは問うていませんでしたが、持続可能性における品質の側面については今後、より情報を収集していきたいと考えます。また、最後の設問において「環境面からの着眼が多いが広義の品質として捉えていく必要がある」という示唆に富んだ見解をご提示いただいた方がありました。

コメントの中には、企業経営にCSR を含む持続可能性を組み入れていく必要性を説くご意見、あるいはすでに統合をしているというコメントも複数ありました。これは、現在、今後の改訂の方向性が検討されている、組織の持続可能な成功のためのガイドライン、組織そのもののクオリティに関する9000シリーズの規格、ISO 9004 の課題とも関連してくる視点と言えます。

>> ISO 9004:2018 – 品質マネジメント – 組織の品質 – 持続的成功達成のための指針

>>ISO 9004の将来に向けての議論が始まっています

また、このような企業経営の側面に着目し、「経営の持続可能性を考えていくためには、企業の事業計画を財務的な視点と非財務的な視点を統合的に検討しなければならない」との見解を表明するコメントもありました。

なお、冒頭で述べたように、今回のアンケートのきっかけはリモート監査勉強会であり、そこで持続可能性、SR に関わる活動の評価をウェブベースで行うEcoVadis という評価ツールが紹介されたことであり、EcoVadis、あるいはその他の評価ツールやシステム、あるいは基準はどのくらい使われているのだろうか、そもそも持続可能性やSRが日本でどの程度重要視され、どのように評価されているのだろうかというメンバーの疑問でした。

持続可能性、SRに対するEcoVadisやSedex、それ以外の評価ツールやシステムを使っているかという設問で「これら、あるいはこれ以外のツールを使用して、自社の評価を行っている (8.77%)」、「取引先にこれら、あるいはこれ以外のツールを使用させている (0.88%)」、「自社の評価、取引先の評価のどちらにも使用している (3.51%) 」と答えられた方は合計で13.16%、「知っているが使用はしていない」が29.82%という結果であり、まだまだ集積したデータを活用するこのようなオンラインツールの利用は限られているようです。

持続可能性、SR の活動をマネジメントしていくためには、パフォーマンスの評価は必須です。持続可能性のパフォーマンスを監査する場合にはどのような取り組みがあり得るか、あるいは上記を含め、監査以外にどのような評価方法があり得るかなどについて、今後議論を活発化させていく必要があるでしょう。

まとめ

今回のアンケート調査には、持続可能性の実現にはマネジメントシステムが大きな役割を果たし得る可能性が示されていました。そこでは、マネジメントシステムのプロフェッショナル、クオリティプロフェッショナルが活躍できる余地がある、いや、活躍しなければならないと考えられます。そのためにはCQI の力量のフレームワークが定義する、5つの要素、ガバナンス、保証、改善、状況 (context)、及びリーダーシップが求められます。

現在、CQI|IRCA は、先日ご報告したクオリティ 4.0 の定義づけと並びこの力量のフレームワークの見直しを行っています。

>>CQI 力量のフレームワーク

>>クオリティ 4.0を定義する: CQIの新しいリサーチプロジェクト

>>クオリティ 4.0とは何か

今回のアンケート調査はまだまだ入り口に過ぎません。ここから見えてきたことを突破口に、協力をお申し出くださっている方々と一緒に検討を重ね、CQI|IRCAのグローバルコミュニティと協力しながら、洞察を深め、メンバーの皆様にとって有益な情報をご提供していきます。

CQI レポート The Future of Work 未来の働き方
IRCAテクニカルレポート:ISO22000:2018